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周回遅れの三菱が焦っている?

 航空雑誌には既に載っていたのかもしれませんけども、航空雑誌や船雑誌や戦車雑誌や銃器系雑誌などを読まなくなって久しい小生は、先日届いた『朝雲』第2740号にて、はじめて三菱重工の「心神」の実物大RCS試験模型の写真を拝見し、こんなプロジェクトがあったのだと承知した次第です。
 いや、古っ臭ーーー! 20年後にはF-22やF-35だって時代遅れになってるかもしれないというのに……わくわくさせるところが何もない。名折れでしょう。こういうことやってるから「属国」って言われちゃうんですよ。目標が低すぎる。しかも、欧米のメーカーは一目みて「これはモノにならん、宣伝だな」と見切ったのと違いますか。防衛庁や三菱が用意できる資金で最先端の完成品ができるわけないというのが常識でしょう。

 記事によると、「先進技術」という名のステルス機体や推力偏向エンジンを「実証」するものだと。で、見た目、F-22のモンキーコピー。しかも全体にF-22より小さいという。
 マズすぎるよ。モンキーコピーなら、逆にガタイを本舗よりもでかくしておくのが「後進国」の慎みというものでしょう。そうすれば、将来の改造だっていろいろ、し易いのに。
 小さい機体に、どうやって、侵攻任務に必要な燃料を詰め込むのか? また、大型になるはずの初期の国産核兵器をウェポンベイに収納する気はあるのか? 疑問だらけです。スクランブル専用機にでもする気なのでしょうか。最後の有人インターセプターとして。

 『朝雲』の記事には信じられないようなことも書いてあります。F-4の後継が「F-X」ですけども、この「心神」はF-Xのさらに次をめざして平成22年から実機開発するという。
 これ、本音でしょうかね?
 妄想させて貰いましょう。このモデルの意図は2つあるでしょう。

 ひとつは、アメリカに「F-22を三菱でライセンスさせてくれないなら、F-Xは完全国産しちゃいますよ」と言える立場を獲得しておくこと。バーゲニングの道具としてでしょう。防衛省の意向です。
 もうひとつは、三菱重工の「売り込み」ですよ。
 もちろん「心神」を輸出しようってんじゃない。三菱重工そのものを売るのです。アメリカに。合弁もしくは合併ですよ。下請け工場志願。MDと省昇格が「三原則等」に突破口をあけてくれますからね。
 それにつけても「心神」をフランスの試験場に運んだりして、アメリカに頼っていないところを見せ付けておかなければならない。これもバーゲンの手。

 げんざい、アメリカと西欧はそれぞれ、域内の航空宇宙防衛メーカーをぜんぶ再編統合して、巨大企業体をまとめあげ、そのマンモス企業体の開発体力・販売競争力を以って、世界市場を奪い尽くそうと、躍起になっています。
 1980年代にアメリカ企業がハッキリさせてくれた「戦理」なのですが、圧倒的な資本力で開発をした航空宇宙防衛分野のハイテク製品は、世界の市場において「対抗不能性」を獲得できる。競争者がいなくなるのです。外国が後からF-15をコピーしようったって、できない。30年経ってもできない。できるころには世代交代。だから予め統合すればするほど強い、となります。とにかく注入資金力勝負、企業体力勝負になってきた。

 これを欧州各国も気付いて、90年代にメーカーをどんどん一つにまとめて、アメリカに対抗し出しました。
 欧州は結集するとアメリカより巨大なので、これがかなり手ごわくて、2000年代に入ってからは、アメリカもうかうかしていられなくなってきた。米国内でますますメーカー数が整理されつつあります。いよいよ迫った石油高騰時代に生き残れる、超低燃費旅客機の開発競争もスタートしています。

 かたや、日本は「自由を戦って守ることはいたしません」と謳う、反自由主義のマック偽憲法の支配する空間であるために、自由の敵と現に戦っている諸国に対しては武器は輸出できないなどというイカレた縛りがある。それじゃ日本がシナから攻められた際、誰が武器を売って助けてくれるんですかね? まあともかくそれで、典型的な偽憲法的機関である通産省/経産省としては、武器メーカーの統合を指導しようがなかった。インセンティヴ・ゼロでしょう。将来にわたって外国からの注文が取れないんじゃ。しかも大臣がシナの手先だったりするくらいだし。
 しかし、来年からは、防衛省が指揮できるかもしれない。「三原則等」の廃止によって。
 おそらく三菱の中の人は、それでももう間に合わないと考えているのでしょう。10年後には世界のハイテク兵器開発競争の第一線から完全に脱落してしまうと。

 まあ、「アメリカからF-22が買えたらそれだけでハッピー」なんて考えていられるのは、日本の「2ちゃんバカ右翼少年」だけで、そもそも主力戦闘機を自前で開発して装備できない国は、国連安保理常任理事国には1国しかない。そんなの「列外」なのです。主力戦闘機と主力戦車は輸入をしないというのが、戦後世界の指導的「大国」たる暗黙の矜持。
 三菱は、「何が大国の恥か」が、わかっているわけです。他方、偽憲法下でずっとシノギをやってきた防衛族議員は、そんなことには一向関心がない。もちろん歴代防衛事務次官も国家公務員試験の受験勉強中から偽憲法にすっかり入信志願してきて、偽憲法の色眼鏡でしか世界を眺めることができません。とにかく国内の誰も頼りにならない。偽憲法の限界です。

 まず三菱はF-35のジョイントベンチャーにフルに加わりたいのでしょう。JVの旨みは、「販売」を外国政府に任せられる。日本の頼りない代議士や役人に頭を下げる必要がないわけです。F-35は世界のスタンダードになることがほぼ決定していますから、これは下請けでも単純に儲かる。それに後から参入するには、それなりの技術力を誇示する必要がありましょう。

 その次が、アメリカ企業体との「合併」。これは、米国企業体および米国政府の意向でもあるんじゃないですか? 三菱を自陣に加えることで、欧州勢力に圧勝したいという。単純に、資本力勝負の競争になっているのですからね。合併すればF-22の下請けにもなれるかもしれない。
 本来なら、日本国内の航空宇宙防衛メーカーの小規模乱立を20年前になんとかすべきだった。しかし偽憲法下で、通産省が束ねられなかった。
 三菱としても、もうこのままだと二流武器メーカーに落ちぶれるしかないから、そうなる前に、米国企業と一体化しちまえというわけですよ。
 なにしろ偽憲法の下では財務省の役人は国防費を不要支出と考えますから、パイの総枠が不変。そこに、偽憲法ゆえにMDを押し付けられた。MD以外の装備費は激減ですよ。ですので、放っておいたらあと数年で日本の兵器産業は政府発注減から崩壊します。だから「三原則等」は2007年中に廃止されるという流れ。大局を見れば、アメリカは日本にMDを押し付けたことで、日本の防衛産業を買い取れるようになった。
 三菱としては意地でも、試験機には手をつけておかねばならない。いちおう、欧系からでも、JVの引く手あまたという体裁でないと、米国企業体に簡単に呑み込まれてしまいますからね。

 でも、偽憲法を廃絶しないままで、そういう自由化をやると、けっきょく、三菱も含めて、日本の兵器産業がまるごと、米系企業にM&Aされて、それでお終いだと思うんですよ。
 メーカーや経済人こそ、偽憲法の自殺性についてよく考えて欲しい。自由主義経済とマック憲法は、絶対に両立しないのです。それは三菱重工がアメリカ人から乗っ取りを仕掛けられる時代になれば、よ~く分かりますよ。

 12月の10日前後にPHPさんから『日本有事』という新著が出ます。これを読んで欲しい。表紙がダサダサで勘弁してくれっていうレベル(日本の話なのにM-1戦車がセンターにあったりして、イヤガラセをたくらんでいるとしか思えんw)なんですが、中身は廃憲論を集中してとりあげていますから、ぜひ表紙ではなく中身を重視して、ご購入ください。
 さらに余裕ある人は、この新刊を入手された後で、片岡先生の『核武装なき「改憲」は国を滅ぼす』にも御目をお通しいただきたい。結論は接近していても、そこに至る細かな歴史認識や軍事バランス分析はずいぶん違うということに、きっと驚かれるはずです。(同書116ページの「くだる」は「大命くだる」の誤記でしょうか?)

 『朝雲』の記事の中で唯一泣けましたのが、日本初の推力5トン級の完全国産ターボファンエンジン(戦闘機用)が、いつのまにかできていたってことでしょうか。でも、アメリカはさらにその先を行ってますけどね。これから石油もなくなるし。

雑件。

 『原爆から水爆へ』という本の中で、ルメイが1945-9に北海道からシカゴまで11000kmを無着陸飛行したが、そのときB-29が飛び立った旧日本海軍のMizutani飛行場とはどこなのかが、不明だったのです。訳者の人は防研にも問い合わせたようですが。
 空自の某佐官氏から、それは自分がいた千歳の「連山」用コンクリート滑走路しかないだろうと示唆されましたが、「ミズタニ」という地名には心当たりがないとのこと。それでは仕方ないとわたしも忘れていたところ、たまたま思いたってキーワード検索したら、アッサリ確認ができました。昭和10年に大阪の水谷政次郎氏が開拓した農場が昭和16年に海軍に寄贈され、それが現在の東千歳駐屯地になっているということです。まず間違いないでしょう。北海道で2500mものハードなランウェイを利用できたのは、そこしかなかった。
 ただし『原爆から水爆へ』の著者が引用するルメイの回想には間違いがあるように思われます。ルメイの部下が9月に最初にMizutaniにB-17で降りたようなことを言っているのですが、北海道で8月に真っ先に進駐軍が飛来しているのは他ならぬ千歳なのです(詳しくは『北の発言』のバックナンバーを見よ)。9月時点で米軍が進駐していなかったのは、オホーツク沿岸です。ルメイの記憶の中で、当時の美幌その他と、千歳の情報とが、混交しているのではないかと疑われます。

 さてお知らせです。次の『諸君!』に長めの記事を書いていますので、核武装論に興味のある方はご一読ください。
 ふだんこうした雑誌記事の前宣伝はやらないんですけど、発売の1週間くらい前に印刷所に入ったところで、次号に誰がどんな記事を書いているのかは、一部の方面には知られてしまうわけです。無名時代はそれで何の問題もありませんでしたが、最近は○○系の工作員が雑誌の店頭発売前から逆宣伝に励み出すらしいので、皆様にはちょっとだけお耳打ちをして置く次第です。

チラ裏おまけつけときます

 空自はF-22が欲しくてたまらないのだがアメリカはライセンスはおろか、純正グレードでの完成品輸出すら許可しそうにない。パキスタンとか台湾あたり向けのパチモンF-16みたいな格落ち戦闘機を有難く買いそろえていたら常任理事国を目指す大国の面目はいつ整うのかよという話です。空自はじつのところシナ空軍なんてほとんど眼中になくて、西太平洋空域で一番高級な飛行機を乗り回していないと我慢ができないだけ。口には出さないが、韓国とシンガポールがF-15を買ったのでもうファビョってるわけです。視野が成金の奥さんなみに狭いのだ。

 視野といえばPCの普及で空自のパイロット候補者の視力がグングン落ちている。これは大問題ですよ。
 月刊『BAN』の最新号で爆笑したのは、アフリカから入国してくる犯罪者は視力が3.0とか4.0とか平気でありやがるので、日本の刑事がヤサの周辺で張り込みしているのが全部、遠目にバレちまうっていうんですよ。また、連中は、照明のついてない真っ暗な屋内にライトもなしでツカツカと進入して、中の様子がすっかり見えているっていうんですねぇ。勝負にならんだろ、それじゃ!
 そこで提案。PCのモニターディスプレイの表面透明パネルに「遠視者用めがね」の屈曲率を採用したらどうだろうか。つまり、モニターと裸眼の間隔が40センチくらいしかなくとも、ユーザーの両目は2m弱の遠いところに焦点をあわせている、そうなるようにするんです。眼鏡メーカーに告ぐ。これはヒット商品になるんとちゃいますか?
 とにかく近視のパイロットなんて絶対にシャレにならんての。いくら飛行時間を増やして訓練したって、肝心なときに敵を先に目視できないようじゃ、どうしようもない。そんなパイロットしか集められないんだったら、無人機の方がよっぽどマシです。とっとと無人機を国産しましょう。

 2機のVC-10が国連軍の名目で英国から沖縄にやってきて大気サンプルを採取したそうですが、これは英国がイランの核実験に備えて「予行練習」させてもらったってことですよね? 英国は別に日本を特別に応援しているわけじゃないと思うが、北海油田の枯渇ってのは深刻ですよ。彼らは毎年日本より1兆8000億くらい余計に国防費を使っているのですが、その無理ができなくなる。ちなみにフランスの国防費は日本より1000億円多いだけ。コストの点から見習うべきは英国ではなくてフランスでしょう。

 アメリカが旧ソ連にどうしてあんなにてこずったかを分析した結論はですね、結局、原油価格の値上がりだったと。油田を国内に持つ国がアメリカの敵となっている場合、アメリカは原油の国際価格をぜったいに上げさせてはならないというのが教訓です。これが中東政策の根本です。
 しかし、今はソ連がライバルとしては脱落しました。油田を国内に擁しないシナみたいなライバルしかいなくなった。となると、世界全体で原油価格が上がるのは、アメリカの国内経済面では苦痛だが、安全保障の上ではノープロブレム。敵も弱ってくれますから。
 というわけで、中東を敵手に渡さないかぎりは、アメリカの一人勝ち体制はますます強化されるのです。
 ただ唯一の問題国がイラン。原油価格が上がる結果、イランは太ります。人口が多いから、「第二のイラク」どころじゃない。「第二のソ連」になっちまうかもしれない。……まあ、教育水準の点でそこまでは無理だが、イラクや北鮮以上には確実になれるでしょう。また、イランとシナをくっつけさせちゃならんというのが、当面のアメリカの最大の課題です。

 こういう大局を考えると、ますますF-22じゃないんだよね。F-35でもない。「低燃費防空」を考えないといけない時代の節目なんですよ、今は。無人小型機でしょ、やっぱり、こうなったらもう。
 しかし経団連周辺はF-35に執心しているように観察されるのです。武器輸出三原則の見直し運動は、MDよりもF-35に関係があるんじゃないか。F-22はライセンスが許されないので日本のメーカーにはまったくおいしくない。F-35開発に関与できるなら、大国の面目にもなるわけです。
 さらにその先がありましょう。アメリカのメーカーは、日本の軍需メーカーを買収したいのです。三菱はもうターゲットじゃないですか? ちょっと弱っているようだから。そしてその逆に、元気の良い日本の軍需メーカーも欧米の軍需メーカーを買収できるようにすべきだと。それには、武器輸出三原則なんてものがあったら、投資を集められないでしょう。輸出もできないんじゃ、株価に連動させようがないんだから。資本戦争で圧倒的に日本側が不利になっちまうわけです。

 わたしは日本政府が武器輸出を解禁しても日本製兵器がたくさん売れるだろうとは思わない。当初は業績ゼロでしょう。いかに日本人の国産武器評価が夜郎自大であったか、思い知らされるだけでしょう。しかし、株価は上がりますよ。というのは、長期目標が立つから。将来、いいものを造れば、売って儲けられるんだと、予測できますから、とうぜんに投資を呼ぶでしょう。そこが大事なのです。そこから、軍事オタクどもが考えも及ばないような製品が、ソフト、ハードを問わず、必ず出てきます。それが目玉商品になりますよ。
 また、その将来ビジョンが日本人のマインドを変える。ソフトウェア環境も変わります。ここを変えない限り、日本の財政は特殊法人土建ばら撒き自滅ループを自己変更できないでしょう。なんで防衛庁や科技庁が「無利権官庁」で、当選回数の少ない議員が腰掛長官になるものと位置づけられているのか。おかしいでしょ? 防衛庁と科技庁が日本最大の利権官庁となるくらいでなくちゃ、日本は土建国家からは脱却できないのですよ。今のままだと、国債はまもなく売れ残るようになりますよ。そしたら原発用のウランどころじゃない、100%輸入の石油と、60%輸入の食料も含め、「円」ではな~んにも買えなくなるんですよ。分かっているのか? 早くプルトニウム発電所をたくさん造っておかなければ全国民で泣きを見るという近未来が。

 いまのところ武器輸出の許認可権を握っている経済産業省の木っ端役人がシナやイランに武器技術を流してしまわないように、どう制度上で予防ができるのかが大きな課題です。MDビジネスは外務省と防衛庁にも「これは利権になる!」という経験をさせました。この2官庁も指をくわえてはいない。そしてこの2官庁にしてからがクズがいます。わたしは、武器輸出は首相だけが許可を与えられるようにすべきだと考えています。首相が非器だったらそれはもう日本国民としては諦める以外にないでしょ。
 それにも、もちろん「偽憲法」の廃絶が事前に必要です。
 マッカーサー偽KEMPOHのタテマエでは、〈シナを困らせるためにインドに武器を売る〉といったオプションの余地はないんです。マックKEMPOHは「平和憲法」ではなく、「自由否定条約」「自然権放棄誓約」だからです。マッカーサー偽KEMPOHをまず廃絶することが武器輸出の大前提です。

中央公論12月号その他の記事について。

 麻生太郎vs手嶋龍一のインタビュー記事が載っているので買ってきました。読んでみたら、核武装論議については言及がありませんでした。やっぱりね。

 この手嶋氏、文藝春秋の12月号の座談会では、9-11の翌年の2002にブッシュ氏にインタビューしたときに、大統領が、北鮮については「対話の窓口を閉じたわけではない」と留保をつけた。これは対中東とは意気込みがぜんぜん違うと感じた――と証言しておられる。
 同じ座談会によれば、中西先生は、既成核保有国が北鮮制裁に本気でないので驚かれたようだ。

 アメリカがシナと朝鮮の問題を中東よりずっと後回しにして安心している理由は至ってシンプルと思います。シナも朝鮮も石油を自国内で産出しない。だから、「はっけよい」の正規戦争になれば、「待ってました」とばかりに、アメリカ軍は、海上封鎖とパイプライン爆撃、貯油場爆撃で、シナも朝鮮も干からびさせることができる。通常戦争では万に一つも負けないという自信があるのでしょう。

 石油に関しては、時間はアメリカの味方です。「はっけよい」の対決が何年も後に順延されてもアメリカとしては一向構わない。むしろ好都合。
 というのは、シナ経済が今後、大量の石油に依存するようになれば(なるにきまってるんですが)、戦時のシナの脆弱性は今の何倍も昂進するだけでしょ。どうやったって、中東油田を支配するアメリカには面と向かっては逆らえなくなるんです。戦争どころじゃない。戦闘機パイロットの訓練すら、満足にできなくなるんですよ。

 おそらくシナは、V-2のプロジェクトマネジャーだったドルンベルガーと同じ結論に到達しますよ。すなわち「石油に依存する飛行機よりも、ロケット兵器を量産だ!」
 また予言しときましょう。これからシナは核ミサイルをやたらに増やして来ますよ。

 NPTってのは、既成の核武装国が核軍縮することが前提だった。その前提をシナは破り続けてる上に、北朝鮮まで核武装させた。シナがNPTを破壊してしまったんです。NPTというものが、もう存在しないのですよ。
 10日発売の月刊誌を見る限り、この大局が分かっているのは中西先生だけのようですね。

 朝鮮戦争でソ連がいちばん苦労したのが、トラックを動かす石油の工面。わざわざルーマニアから運んできたんです。
 今はどうか。北鮮には一滴もない。トラックが動きません。ということは弾薬を運べない。
 戦車が動かないどころじゃない。歩兵すらも前には出られないのです。
 文藝春秋座談会で上村幸治氏が、もしアメが北の核施設を空爆したら北はソウル一点にしぼった砲撃で反撃をする、と見積もっておられるのは、合理的で、得心できます。歩兵主体でも、もう「暴発」なんてできない。(ほとんどの評論家が口にする「暴発」説がいかに日本と世界の歴史というものを知らぬかについては、10ページくらい使わないとおそらく誰も納得できまいと推量されるので、次のPHPの新刊で縷説することとしました。)
 江畑謙介氏が12月号の文藝春秋座談会で、もしも核施設に限定した空爆をアメリカが実施すれば、「北朝鮮の報復攻撃でソウルは瞬時に火の海になります。民間人数百万人単位の犠牲者と、日本からのものも含めた莫大な金が灰になります。さらに、寧辺の原子炉を破壊すれば、チェルノブイリ事故の再来で、朝鮮半島だけではなく、日本までも大変な放射能汚染の被害を受けます」(pp.114-5)と恐怖を煽っているように見える理由はよく分からない。ひょっとして、北鮮はソウルを攻撃できる原爆兵器をすでに配備し、アメリカはそれを先制破壊できない――との意味? 同じ江畑氏が中公12月号では、――日本は通常弾頭ミサイルでは北朝鮮を抑止できない。なぜならイギリスに1050発うちこまれたV2号はたかだか5000人殺しただけだ(pp.50-51)と、通常弾頭の非力さを強調しておられるのですけど……。

 京城が38度線から近くて有事には危ないってことは、韓国人は誰でも最初から承知なわけです。北鮮は同胞だから危険など絶対に無いと信じている人たちは、同胞の砲弾にあたって死んでも不平はありますまい。リスクがあると承知している人たちは、有事にどう逃げ隠れするかは考えてますよ。
 宣伝臭芬々の「火の海」説を科学的に検証してくれる軍事専門家の登場を期待したいですね。

 文藝春秋座談会で上村幸治氏が、シナは日本が核を持つのは理論的帰結として当然であるから、日本国内での核議論イコール即保有と考える――と解説しておられるのは、もっと注目されるべきでしょう。
 「核武装について議論するな」と叫んでいる日本人は、要するにシナのエージェントを買って出ているのですよ。

『voice』最新号の中川昭一氏の寄稿に関して。

 わたしは中川氏には興味は無いのですが「レギュラス」という単語に反応しました。
 思わず昭和61年の国会の速記録をネットで検索しちゃいました。ついでに大出俊が横須賀と原潜の話をとりあげたもっと古い議事録もヒットしたので読みふけってしまいました。
 はじめに雑感を申しますが、インターネットは間違いなく有権者が国会の議論をチェックし易くしてくれました。誰がいつ阿呆な発言をしていたか、丸わかりです。過去の速記録がぜんぶテキストデータになっていて、その記録が永久に曝され続けるのは結構なことです。入力の手間暇はたいへんだと思いますが、タイプミスもほとんどなし。

 しかし昭和61年にもくだらない国会をしていました。当時の社・共は、日本人が日本国内ではアクセスしにくい米国内の半公開資料をとりよせて騒いでいただけだ。いまならネットでヒキコモリでも取って来る、そのレベルの秘度の資料にすぎません。
 さいきんの野党には、レアな米軍資料をふりかざして閣僚から言質を取ろうと迫る議員がいないな……と思っていたら、もともと大した調査はしていなかったのですよ。「ネットが無い」という昔の情報環境の中で、彼らのフツーの調査が、日本の土人には際立って見えただけだ。
 そして、取ろうとしている言質がじつにつまらぬもので、シナ・ソ連のエージェントもどきの反日的な動機が、有権者から本能的に好感されなくなるのも、時間の問題だったんでしょう。

 大出俊氏が横須賀と原潜の話を国会で最初にしたのが、昭和41年5月31日の内閣委員会です。これがたいへん面白い。
 シナが核実験してから2年経っていません。勝負どころですよ。防衛庁長官は、根が「反シナ」と伝わってくる松野籟三。
 官僚のくせに政治家より威張っていた旧内務省の海原治を松野は左遷したんですが、あとで官僚から仇を取られてスキャンダルにハメられて失脚しています(失脚してなきゃ、首相の目もあった)。その原因が分かる。隙があるんですよ。海原らキレる官僚とはぜんぜん肌合いが違うんだ。好漢なのだが……。
 この時代の国会で原子力の勉強をしていない。ミサイルの勉強もしていない。だから官僚に代弁してもらうしかない。野党の方が勉強しているから、下僚としたら、国会でなんだか頼もしくないように見えてしまうわけです。シナが日本に届く核ミサイルを持つ年ですぜ、昭和41年言うたらね。これでは下僚が海原についてしまうよ。
 好漢惜しむべしですよ。あたら「反支」の人材をうしなってしまった。海原がこの時点ですでに「天皇」と呼ばれていたことも大出の発言で確かめられる。面白い。

 楢崎弥之助がここで言っている。〈もし防衛のためなら核兵器も憲法違反ではない。政策上それをしないというだけ〉という政府見解がすでにあることをね。いまの中川さんは大昔からある話をただ再確認しているだけです。

 シナの原爆に対抗して、この時期、米軍は、佐世保と横須賀に米空母や原潜を寄港させようとしていた。それによって、日本はシナに対抗して核武装する必要はない、と伝えたいわけです。日本政府はそれに乗った。乗るしかない。マック偽KEMPOH下の経済成長下、「自衛隊をもっと増強せよ」という日本の有権者は19%しかいなかった。ところが社・共は、日本独自の核武装にも、核を積んだ米艦の寄港にも、どちらにも反対する、というわけです。だったら日本はシナとソ連の奴隷になれっていう主張だ。こんな野党が支持されていた。マック偽KEMPOHの害毒は日本人の理性をすっかり麻痺させました。これほど効いた毒は、日本開闢いらい、無いでしょう。

 大出の寄港反対の口実が、スレッシャー級攻撃原潜にサブロックが積まれているというのです。まだ前防衛庁長官の小泉(父)が地元横須賀で生きていた頃でした。大出の選挙区は隣の横浜で、ノース・ピアと相模原の間の物資輸送はぜんぶ把握しているし、横須賀にも詳しいわけです。「核アレルギー」という言葉は米国の雑誌で使われた言葉だとも分かる。

 昭和41年国会では、『陸奥』の艦長だった保科善四郎も現役議員だったんですよ。「自主防衛」と「自力防衛」は違う。「自主防衛は、孤立防衛ではない」――という話をこの時点でもう確認していた。平成になってもまだこの違いは認知されていませんからね。日本の「記録環境」「記憶構造」がおかしいんですよ。痴呆老人がおんなじことを何度も何度も聞くようなもんでね。だからわたしが「図書館、図書館」と言うとった意味もわかって貰えますか。

 さて、大出レギュラス発言の初登場は昭和59年2月28日の衆院予算委員会です。1958-2の米国資料をもちだしまして、ターボジェット推進の音速ミサイルである「レギュラスⅠ」には核弾頭がつけられ、しかも潜水艦×2、巡洋艦×4、フォレスタル級の全空母(10隻)に積まれてすでに海に出ていると書いてあると。
 またその後の資料によればレギュラス搭載潜水艦は5隻に増えており、またレギュラスを積んだ米海軍艦艇のデタレント(抑止)ミッションは1960-3-12に開始されて1963-12まで9回実施されている。ところがすでに巡洋艦『ロサンゼルス』は1961年に神戸に寄港している。また第4回目のミッションは横須賀を使っている。問題じゃないか――というわけです。昭和36年のえらい古い話を昭和59年にしている。
 1964年以前の「抑止」はすべて対ソ用です。ミサイル・ギャップが信じられていた。

 で、ようやく肝腎の昭和61年2月8日衆院予算委員会の速記を見る。
 ここで大出氏はさいきんロサンゼルス型原潜が核トマホークを積んで横須賀入港しているんじゃないかと問う。たとえば昭和60年だけでも7隻のロサンゼルス級攻撃型原潜が都合14度、入ってきている。
 その質問の流れの中でまた昔話をするわけです。例の1960年代初期のデタレント・ミッションで『グラウラー』と『グレイバック』がレギュラスを積んでいた。「レギュラスII」を積んだ『グレイバック』は四回演習をやって、うち二回は横須賀で終わった。だから核兵器が寄港していると。三原則違反じゃないかと。政府は米国に問い質せよ、と。
 また昭和39年にはすでに原潜にサブロックが積まれているはずで、それは日本に寄港していると。
 これを中川議員は当選して最初の予算委員会だったのでよく覚えていると今度の『voice』で書いていらっしゃる次第です。としますと、おなじ引用をするのなら、大出質問の「三十九年以来……」の箇所ではなくて、もっと古い年号に言及した箇所の方が、より趣旨に適うのかもしれません。中川氏のスタッフは案外、親分に粗いサポートしかしてないんじゃないか?

 じつはこの日を含めて後続のかなりの審議がトマホークでもりあがりました。というのは戦艦『ニュージャージー』が核トマホークを積んで横浜にやってくるという話があったわけです。
 とうじの背景を概説しますと、レーガン政権はおびただしい水上艦と潜水艦に核トマホークを載せて極東海域を遊弋させつつあった。ソ連のシステムでは軍艦にやたらに核兵器は積めないのです。人とモノの管理がたいへんなので。だから対抗できなかった。
 対抗できないのでどうしたかというと、西側のすべての反政府集団に「反核」運動を促していた。

 中川氏と麻生氏はどちらも核武装論者なんかじゃあるめえと疑っていたら、中川氏ご本人は『voice』12月号でこう書いています。
 いわく「まず現在の日本国憲法を前提に、『持たず、作らず、持ち込ませず』を守り、そのうえで何ができるかを考えることだ。そのうえで憲法を変える必要があれば、対応すればよい。しかし、それは今後の国民的議論が必要だ。私は『核武装せよ』といっているわけではない」。
 ……これのどこが核武装論?

 今回の『voice』の記事から匂ってきますのは、従米一辺倒の下僚スタッフによる熱心な入れ知恵が中川氏に対してはなされている、という印象だけのように兵頭は思います。

 最新の『中央公論』には麻生外相が何か寄稿しているようなのでこれもチェックしたいところですが、当地北海道では月刊誌の店頭売りが内地より数日遅れますので、まだ書店には出掛けずにおります。中公は拙宅に送られてこないんですよ。しかたないので、来週の月曜あたり、買ってこようと思います。

チラ裏日誌

 核武装論が出てくると、敗北主義者が「錦の御旗」のように取り出してくるのがNPTでしょう。
 このNPTってのは、米ソ英仏支があるとき皆で寄り合い相談してムラの掟として自生的に定まったようなもんじゃありません。アメリカ一国の主導で他国に案を示して同意させたもので、他の四国はそれを呑んだのです。幹事国はアメリカであり、「アメリカ=NPT」です。ここが分かっていない人が多いのがいつもながら驚きです。1億総「村人」感覚なのですな。
 NPT加盟国があらたに核武装するときは、それにアメリカが同意/黙認するか否かだけが重要なことで、アメリカが同意/黙認すれば、あとの国には止めようもないのです。
 ソ英仏の3国がNPTに同意したのは、「西ドイツに核武装してもらっちゃ困るな」との利害が共有されていたからです。とうじのアメリカの心配は、フランスとカナダと英国が、プルトニウム取り出しの容易なタイプの原発を世界の核後進国に売り始めていたことでした。

 北鮮の核爆弾はパキスタンの技術です。パキスタンに核を拡散させたのはシナです。アメリカの1994の北鮮爆撃を世界的工作で阻止したのはシナです。シナはアメリカのNPTを妨害し破壊しました。
 匪賊の親分は新参の子分に銃器を渡し、子分はその代価として親分に面従します。「面従」すれば「腹背」しても良い――と構えるのがシナ式なのです。子分は、やろうと思えばいつだって親分の隙をうかがってその銃器で暗殺できるでしょうが、そんなことを気に病んでいたら、ヤクザの親分やシナ人はやっていられないんです。それよりも、できるだけ大勢の子分が面従してくれること。それを他の世界に向かって誇示できること。これがシナ人が感ずる「セキュリティ」であり、人生最大のよろこびであり、人生の目的そのものなのです。この前、北京にアフリカ諸国を呼び集めた儀式もまったく同じです。俺には子分がこんなにいるぞ、と。それをアメリカに示すことで、アメリカと対抗し、最終段階ではアメリカをもシナ化するつもりです。
 アメリカはシナ対策に本腰を入れねばなりません。

 アメリカにとって好都合なのは、日本がイギリスのように信じられる国になって、核武装してシナを封じ込めることです。ところが困ったことに、日本は信じられる国じゃないのです。
 公的な約束を軽視する国民であると思われている。そんな国民に核ミサイルを持たせたくありませんよ。誰だって。
 マックKEMPOHは、日本が武力をもたず、武力で自由を守りませんと誓約する内容です。属領フィリピンがアメリカから押し付けられたのと同じ「擬似条約」です。これはアメリカ政府のプログラムにはなかったことで、異常な軍人・マッカーサーが独走したのです。マッカーサーが嘘つきであることは昭和29年に青木一男が明らかにしました。

 アメリカ政府は、そんな阿呆な憲法は早く廃絶しろよと、朝鮮戦争直後から非公式ルートで促し続けました。しかし日本政府は何もしませんでした。
 こんな偽憲法を60年も放置している国民なのです。日本の有権者は。
 この偽憲法を放置しながら、英仏以上の国防費を毎年支出している。嘘つきじゃないですか。
 憲法をいいかげんに考えている国だから自国民の人権も守れない。
 <自国民の自然権を守らない>と謳う憲法なのですから、拉致被害者の放置もある意味筋は通るのですが、これでは「まして外国に対しては、何をしでかすか分かったものではない」と思われるのは避けられません。マックKEMPOHある限り、日本人は外国からは信用されようがないのです。

 アメリカ合衆国は、バラバラの個人の寄り集まった共同体として、強大化しました。いわば、いきなり近代社会としてスタートした新造大国です。強国となり大国であることによって、国家を構成する全個人の自然権もまた、強く保護されてきています。
 自由な個人同士の間の自然権を合理的に両立させるには、「公的にウソをつくことを許さないこと」「契約を守ること」「法律を誰にも例外なく守らせること」は欠かせないでしょう。個人が個人として自由でいたければいたいほど、その人々は、民本的な手続きで制定される法律を大事に考える共同体に、忠誠をつくす義務があります。
 だからアメリカ合衆国において、政治家や事業家は本職の以前に「弁護士の精神」を持っていなければ周囲からは深く信用されず、人々は最も国旗を尊重し、地域での教会の地位が英国とも大陸ヨーロッパともくらべものにならず高いのです。

 このアメリカ合衆国の外交の独特な個性を感得するには、フランク・ケロッグ(1856~1937)といういいかげんな法律家と、彼がノーベル平和賞を取るきっかけになった「パリ不戦条約」を振り返ることが、非常に参考になりましょう。
 ケロッグはミネソタの田舎で法律を独学し、州の司法試験に合格。地方検事からキャリアをスタートし、1904年からセオドア・ローズヴェルト政権の反トラスト訴訟を手伝って名を売り、1912年に上院議員となりました。
 共和党員でありながらウッドロー・ウィルソン支持であり、ベルサイユ条約にも国際連盟にも賛成です。しかし選挙で負けたため、上院議員は一期かぎりで終わりました。
 クーリッヂ大統領は1925年にこのケロッグを国務長官に抜擢します。
 ケロッグの最初の仕事は、シナにおける排外暴動への対応でした。全米の田舎町からシナに多数の宣教師を派遣していたプロテスタント教会は、蒋介石の革命外交路線を支持するよう、米政府に求めていました。
 1926年、シナの国民政府は、九か国条約の参加国の中で最も報復力の弱そうなベルギーとの条約を一方的に破棄しました。列強がもしこれを黙認するならば、シナはどんな条約も破ることができるという悪しき前例が生じます。そこでシナ駐在のアメリカ公使(当時のシナは「大国」ではないのでどの国も大使館をおいていない)だったマクマリーは、ケロッグ長官に注意をうながします。
 だが東洋に関する知識ゼロなケロッグは、宣教師と教会の世論に媚び、条約を軽視し、シナを支持する声明を出してしまいます。ベルギーは国際常設法廷に提訴しましたが、シナが出廷にすら応じなかったことはいうまでもありません。
 国民党は続いて1927年、揚子江を大型砲艦が遡航できぬ季節を選び、漢口と九江のイギリス租界に軍隊を乱入させ、強行接収をはかりました。またもや米国の教会はこれに声援を送り、本国の下院も、米国は治外法権を一方的に放棄せよという決議案を審議しはじめるのです。
 アメリカの場当たり的外交に危機感を抱いたのが、フランス外相のブリアンです。
 ブリアンは、米国の第一次大戦参戦10周年にあたる1927年に公開書状をケロッグ宛てに発し、仏米二国間の対独集団安保体制を提案しました。
 ケロッグは、国是たる孤立主義には逆えず、さりとて、「反対する」と返事をすれば、東部エリート層に多い「国際派」勢力から批判されてしまいそうでした。
 そこで、米国内で「戦争の違法化」というスローガンがブームとなっていたのに着目し、「戦争を国家政策の道具としては放棄(renouncing)する」という主旨の多国間条約を、ブリアンに逆提案します。
 国務省は、この条約を日本(1928年6月に張作霖を爆殺したばかり)やドイツにのませることに大きい意義があると考え、熱心に働きました。
 国際連盟の五大理事国の一員として、すでに不戦条約に類似した連盟の規約に賛同している日本は、ケロッグの呼びかけを拒絶できません。
 これが「戦争ノ抛棄ニ関スル条約」(パリ不戦条約)で、1928年8月27日に日本など11か国が調印しました。その時点ではシナとソ連は入っていません。条約は1929年7月24日から発効することになっていました。
 米国では、条約を批准するか否かは、上院が決めます。上院は、<条約がアメリカの自衛権を害しないこと、自衛戦争かどうかを判断できるのは各国の意思のみであること、またこの条約によってアメリカが違反国に対する制裁を自動的に求められることはないこと>を確認して、承認しました。
 イギリスも、スエズ運河などを念頭に置き、次のような留保を表明しています。「ケロッグ氏は自衛権が譲り得ないものであると認めた。世界には、英国の安全のために特別で死活的な利益を構成する諸地域がある。これらの地域を攻撃から守ることはイギリスの自衛である」。
 不戦条約が発効するまでに、シナやソ連など31か国も、ワシントンに「確定的な忠実な支持表明の委任状(instruments of definitive adherence)」を、各国内で批准の上、寄託し、これらの国々は1929年7月24日付けで、不戦条約の加盟国として扱われることになりました。
 1929年にケロッグからこの不戦条約の幹事役を引き継いだアメリカ国務長官が、スチムソンです。
 彼の就任早々、満州の張学良と極東ソ連軍は戦争を始めました。スチムソンはパリ条約幹事国としてこれを仲裁します。
 シナ革命外交への態度では、スチムソンはケロッグ以上に宥和的でした。好機と見て、蒋介石軍は1929年に天津のベルギー租界になだれ込みます。マクマリー公使は、これこそ不戦条約違反だと考えたが、国務省の極東局長ホーンベックと上司のスティムソンはあくまでシナに味方し、ベルギー租界は8月31日に消滅します。
 スチムソンはケロッグよりははるかに日本を知っており、日本政府の面子にはずいぶんと気を遣っています。しかし1931年からの日本の満州事変は、まさに自分の顔に泥を塗ったものであると、翌年末までに認識をしました。さんざん気を遣っただけに、日本陸軍の見せる行動がいっそう不愉快でした。スチムソンはのちに陸軍長官(国防長官)となって、キッチリと、このときの報復を成し遂げるのです(カイロ宣言およびポツダム宣言および原爆および東京裁判)。
 東京裁判で木戸幸一などの弁護についたウィリアム・ローガンは、1948年3月10日の市ヶ谷法廷で、かつて不戦条約の上院での批准審議の折に、ケロッグ本人が<経済封鎖は戦争行為だ>と答えている記録を引き、真珠湾攻撃は自衛だったと強弁しました。これなどは露骨な詭弁でしょう。
 米国人にとって封鎖とは、南北戦争のときに北部海軍が南部の大西洋岸を哨戒し、港に出入りしようとするすべての商船を拿捕・撃沈しようとしたような行動を指します。真珠湾攻撃以前の米国の対日石油禁輸は、軍艦による日本の封鎖ではありませんでした。オランダとイギリスが石油を日本に売らなかったのは、日本が両国と交戦中のドイツの同盟国であるのですから、むしろ当然でしょう。国際連盟規約も、パリ不戦条約も、禁輸が戦争行為だとはしていません。
 支那事変中のアメリカは中立ではなかった、と唱える論者もいます。たとえば東京裁判のパル判事は、アメリカは真珠湾攻撃のはるか前から、武力紛争の一方の当事国(シナ)に武器・軍需品を積み出し、一方(日本)に対しては禁じていたから、すでに戦争の当事国だろうと意見書にしたためています。これも、いいがかりでしょう。
 アメリカは1938年以後も日本に戦略物資たる石油を売り続けています。全面禁輸したのは南部仏印進駐に対する経済制裁なのです。南部仏印進駐は、日本がアメリカにお願いして始まった日米交渉中の暴挙で、しかもアメリカの警告を無視して実行されました。アメリカが怒るのは当然でしょう。
 支那事変は日支のどちらも宣戦布告しておらず、したがって法的には戦争ではなかったのですから、米国メーカーがシナに武器を売ってもなんの問題もありません。中立には好意的なものもそうでないものもあり、後者を戦争行為といったら世の中に中立はなくなります。日本がシナに宣戦布告すれば、米国も表向きはシナに武器が売れなくなったのですが、米国製石油欲しさにそれをしなかったのは日本なのです。フライングタイガースは日本を空爆したわけではありません。日本の特務機関は実際に軍閥間騒動を指揮しています。
 FDRが1941年12月8日の連邦議会で日本に宣戦布告したとき、<日本政府は偽りの声明や平和維持の希望を表明して、米国を念入りにあざむこうとした>と述べています。日米交渉中の日本外務省の態度は、まさしくその通りだったでしょう。事前に「貴国のこの行為は正義に反し、わが国益に致命的に有害だからやめろ。やめないのなら、わが国は自衛の行動を起こさざるをえない」と、要求および警告を伝えたでしょうか?
 シナの革命外交への肩入れに関して米国の態度は不法で不正義でした。が、真珠湾奇襲の作法は明白に日本側の「侵略」なのです。あれを自衛といいつのれば、日本はシナと同列のレベルに落ちることになるだけです。

 寺島健は条約派の予備海軍中将で、東条内閣の逓相でしたが、彼の伝記の中に逓信省の文官の証言があって、昭和16年11月の北海道で無線をモニターしていたら日本海軍が北で作戦を起こすためか電波封止に入ったことが分かり、北方といったら相手はアメリカしかないので戦争を予期したと見えます。つまり南雲艦隊の単冠湾への集結と出撃などは、電波の世界ではバレバレだったのです。ハルノートは単冠湾出撃の直後に作成されました。すべては見張られ、海軍省の電話も盗聴されていたのです。
 ですから真珠湾攻撃をアメリカが予期していたのも何も驚くことのない、あたりまえの話なのですけれども、艦隊の出撃と実際の攻撃行動との間にはなお天地の開きがあり、外交官が自国艦隊の出動を知っていながらそれを交渉での立場の補強に役に立てるのでなしに、その逆に、軍隊が外交官を抱きこんで嘘を演技させて奇襲を試みたという事実が、アメリカを激怒させたのです。

 米国は、第一次大戦以降、一国で防衛が成り立つことが確実に見えた唯一の国でした。
 しかし、遠い将来を考えたとき、もしも全ユーラシアがアメリカの敵に回るような事態を座視すれば、そこから中南米やカナダにも反米工作の手が伸ばされるかもしれないと、一応懸念されます。なにしろ、全ユーラシアの資源と人口をあわせれば、それはもちろん米国より巨大だからです。
 そこで、ユーラシア大陸内、あるいはその辺縁に、味方を確保しておくのが米国にとっては長期の保険になるのです。すなわちそれが第二次大戦の米英同盟、米ソ同盟、米支同盟です。また戦後の、米英同盟、米独同盟、米日同盟も同じです。
 米英の海軍力では戦前のドイツを倒すことはできず、どうしてもソ連の陸軍力に頼る必要がありました。同様、米英の海空軍力では戦後のソ連を倒すことはできず、どうしても西ドイツに再軍備してもらう必要がありました。
 また、日本の経済ポテンシャルをソ連や中共に奪わせるわけにもいきませんでした。その日本が自分でGNPにふさわしい軍事力を持ちたくないというのであれば、アジアでのソ連の進出を封じ込めるため、赤色シナと手を結ぶのも、アメリカにとって安上がりな一法でした。
 かくのごとく現在では、単独防衛を現実的な国是にできる国は、地球上にはありません。集団安保はすべての国家の自然権です。

 1970年代後半から1980年代にかけ、米ソ冷戦の終末段階(ナヴスターGPS衛星群+トライデントSLBMによる米国の対ソ戦略核バランス優位の確定の流れと、それに抵抗するソ連最後の宇宙軍拡のあがき)を意識することすらもなく、マックKEMPOHに自己肯定をされた我が日本の腰抜け町人たちは、「趣味に生きる人生」を捜索します。日米経済摩擦は、統制経済を愛する日本の官僚の「身内を裏切るな」の儒教ビヘイビアが米人から反発されたために険悪化しました。

 1994年の半島危機と、「10.9」以後の国会論議で、米国指導層の「侮日」はいっそう深まったでしょう。現在のイラクでの苦戦と、シナ政府の宣伝の狡猾さを考えれば、沖縄駐留の米海兵隊が、シナ軍に対して用いられるような可能性はほとんどあり得ません。逆に本国での侮日の気分を受けた在沖の海兵隊員が、平時の日本国内でまた騒ぎを起こさないともかぎりません。政府は米海兵隊にはさっさとお引き取りを願っていいでしょう。