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ロストブラッド氏の貧血報告

 わたしの著述の長年の愛読者であるらしい金○○氏が最後の頑張りを見せているようだ。
 地面に深い穴を斜めに掘り、そこに水を満たし、底部で原爆を炸裂させると、水鉄砲の力により、重い物体を軌道上に打ち上げることができるという。これは Thunder Well 理論といい、1991年の小説『臨界のパラドックス』に紹介されている(なお、この小説じたいは、とてつもなくつまらない)。
 この方法なら、日本軍の巡航ミサイル(その誘導はどうする気だよ? 準天頂衛星で日本独自のGPSを構成しなきゃ、満鮮国境山地の低空飛行中に精密な座標が取れないじゃない。詳しくは『正論』7月号でも見てくれ)が事前に策源地(あのさー、これってがんらいBaseの和訳でしょ。明治初期に策源と訳していたのに昭和の軍人は国語力がないから余計な地を加えんと意味がとれんようになった。だったら「基地」でいいじゃんという話だがあえて策源なんて古語を持ち出してるのは“テリトリー”と英訳させたい底意? もう姑息なダブル・ワーディングはやめようよ。ますます外国から信用されなくなるだけだからさ)を攻撃しようとしたところで屁でもなかろうしエアボンレーザーで邀撃される畏れもない。サイロ式固体ロケットのように無兆候で奇襲的な発射も可能だね。
 重さ4.5トンくらいある初歩的原爆モドキを、飛行機によらずに日本列島まで投射することができる手段としては、今の北鮮にはこれ以外にないだろ。逆にいうと、この方式を採用したことが立証されないうちは、北鮮は「核投射能力」のある核武装国ではない。「核地雷」の実験国にすぎません。

同憂具眼の士はすくなくない。

 本日、防衛省の防衛政策局から、09-5-15付の「北朝鮮によるミサイル発射について」という資料が、送付されてきました。
 以下、同資料の中で、確認されている推定概算の数値。

 ミサイルが秋田県海岸にさしかかったとき(2009年4月5日午前11時37分)の高度は、370kmで、さらに上昇中であった。

 ミサイルが岩手県海岸から太平洋へ抜けた時刻は不明。しかし、その時点での高度は、400kmであり、さらに上昇中であった。

 ミサイルの最高弾道点が、どこであったかは不明。いつであったかも不明。その高度も不明。

 ミサイルが最終的に落下着水した時刻は、11時46分。しかし、その位置は不明。しかし、北朝鮮が3月12日にICAOなどに提供した資料の中で設定されていた、太平洋上の危険区域の西端付近と推定される。〔ところが送付資料には、そのICAOに伝えた設定区域とやらの座標について、ハッキリした数字が書かれていない。しかし添付のイメージ図を見ると、東経165度よりもほんの少し西側から、その「設定区域」が始まっているように見える。〕

 朝鮮中央テレビの映像等にみえる燃焼の火炎状態等から、1段目の推進剤は液体燃料だと防衛省は結論。
 そのブースターは秋田県海岸から計って320km沖、北鮮の発射点から計って540kmのところに落ちている、という。

 以上が、このペーパーを拝読して兵頭が関心を喚起された情報要素です。
 以下、私見。

 1万mまで余裕で潜れる有索式無人機(Remotely Operated Vehcle)の「かいこう」と、3000m級無人探査機の「ドルフィン-3K」と、6000m級無人機の「ディープ・トウ」は、1999年に打ち上げ失敗したH-IIロケット8号機の第1段筒体を、3次にわたって海中で捜索して、残骸の一部を引揚げていはずだ。
 残念ながら「かいこう」は、2003年5月29日に台風の中で「亡失」してしまった(浮力があるはずなのでどこかの外国にコソーリ分捕られてるんじゃね?)けれども、日本にはまだ「しんかい6500」とか「かいれい」などもあるはずで、秋田沖320kmの水深は4000mもないはずから、試料回収は確実にできるだろう。
 テポドン2がそんなに「脅威」なら、なんでやらないのかな~? すでに「NR-1」が回収しちゃっているからですかぁ?

 あと、Joseph S. Nye,Jr. 氏が、駐日大使の売り込み失敗ですって? 朗報ですね。彼のシナ無知は、度し難かった。彼の著『ソフト・パワー』は、彼がシナの間接侵略文化について何ひとつ分かっていないことを天下に披露していました。「読書余論」のバックナンバーでご確認ください。

AHO-DOM アホーダム

 くだらない戌ロボットにうつつをぬかしている間に、これまた日本が周回遅れで米国メーカーに大差をつけられてしまった「掃除ロボット」について検索をしていたら、またも怒りがこみあげてきた。

 なぜ「ルンバ」の後追いをしようとするのか?
 80年代のイギリスで「英国病」という話があったが、今の日本は「東大病」だ。そのココロは、先行者の後追いの役人的発想しかできない。だから、会社内評価では「それは無難だ」と肯定されるのだろうが、外部の市場・消費者から見ると甚だつまらない。

 日本の家庭に必要な家政ロボットは、ヴァキューム・ロボットではない。「舐め取りロボット(Multipurpose Licking Robot)」である。
 長短の舌を使い分けることで、多角形の室内の隅々までも清掃が行き届くであろう。しかも埃は立たない。
 ただしこれを床掃除・絨毯掃除の用途だけに限る発想は、かなぐり捨てよ。
 「ナメろぼ」は、少子高齢化する日本社会に、究極のモノグサ生活を約束してくれるはずである。それは、皿も舐めるし、人体も舐める。道路だって、ビル外壁だって舐める。のみならず、舐めたものを自己の燃料にもできる(DARPAが新案の超高効率の外燃蒸気機関をEATERという自給自足ロボットの心臓にするつもりだという英文記事を先日読んだが、その要素技術としても、なめとり sipping 機構は必須だろう。蝿の吸唇=Fly mouth や、砂を洗浄しているナマコの仕組みも、参考にできるのではないか)。

 ここまで言えば、あとはもう語る必要はないだろう。標題の意味を反芻して貰い度い。まさに Man Eater の実現……。

ロボヒトくんの戦死叢書

 ロボットアームを介在させる内視鏡手術について英文サイトで調べているうち、〈内視鏡手術の発想そのものが「ボトルシップ」に由来するのではないか?〉と、唐突に思いついた。

 毛唐の手先がぶきっちょだ、なーんていうのは、〈日本人とロボットの相性は先天的に良い〉とフカしている阿呆共と同じ、大嘘に違いないんだ。

 そこでボトルシップはいつから作られたかを英文サイトで調べてみたら、1850年代に7本檣の大型高速クリッパーが大西洋を定期的に走るようになってからであろう、と書いてある。
 さらにアッと驚かされた示唆。ガラス瓶に入れておく意義として、せっかく苦労して作った精密帆船模型を、埃や衝撃から半永久的に保護してくれる機能がある――ってこと。そうなんだよ。この作品保護についての考慮がないことが、日本文化の欠点だ。

 アートボックスの浪江大先生。おひさしぶりです。まだ旧軍戦車の写真集が売れるんですか? だったら1920年代のドイツのトラック用ディーゼルに詳しい新人の解説者を発掘すべきですよ。「ハ号機」とBT-7Mの「V-2エンジン」は、同じ根をもつライバルに違いないんで……。

雑誌『正論』2009-6月号記事のテニヲハ直し ならびにThe乞食宣言PART 2

 歳をとってテニヲハの狂った文章がむしろ増える傾向を自覚するとは、なんと情けないことだろうか。古くなったFAXの、かすれた小さなゲラ活字を、近視と乱視と老眼で追えなくなっているためか? いや、視力の前に、ブログの書きすぎで、活字媒体の仕事に正対するときの緊張感が低下しているのかもしれない。

 以下のとおり訂正してお詫びします。

○71頁 下段 5~7行目
 四月五日の北朝鮮のミサイル発射は、米支対立の進展や、韓国製宇宙ロケットが上がる前に何かをせねばと、存在感の小さくなった北朝鮮が焦ったものだ。
   ↓
 四月五日の北朝鮮のミサイル発射は、韓国製宇宙ロケットが上がる前に何かをせねばと、米支対立の進展の前に存在の小さくなった北朝鮮が焦ったものだ。


○72頁 下段 8行目
 米国が、「チェコにXバンド・レーダーを置こうとし、《後略》
   ↓
 米国の、「チェコにXバンド・レーダーを置こうとし、《後略》


 ――――という次第で、どなたか新品同様なFAXを二千円くらいで譲ってくれる人はいないでしょうか? 紙を自動で裁ち切る機能が無い物を希望します。この機能があると、刃がひっかかったときに全部再送信となって、ロール紙の残量が少ないときは往生してしまうのです。

◎「読書余論」 2009年5月25日配信号 の 内容予告

▼Lester・B・ピアソン著『国際政治と民主主義』皆藤幸蔵tr. S31
 原題は“Democracy in World Politics”.
 ハンチントンにはネタ本があった。これはそのひとつ。早くも1955年に、これからは同じ文明内の国家間には大きなトラブルはなく、異文明の間に戦争が起きるのだと予言しています。

▼八代昌一『幼年学校の教育』S19-4
 地方幼年学校によって、教えていた外語が違っていた。東京では独語を教えていなかった。

▼水木森也『軍馬の譜――文字で見る文化映画叢書 4』S18-1
 靖国の例大祭の翌日には軍馬祭をやっていた。

▼一橋大学経済研究所附属日本経済東京情報センター『明治徴発物件表集成 別冊』1990
 要するに国勢統計の宝庫である。

▼武富登巳男ed.『久留米師団召集徴発雇用書類』1990 
 馬の召集令状として、馬匹徴発告知書があった。
 自動車も馬なみに徴発した。

▼宇佐美ミサ子「幕末期における宿・助郷人馬の徴発」『日本地域史研究』S61所収

▼山路愛山(彌吉)著『基督教評論 日本人民史』山路平四郎校注、S41、イワブン
 古本で入手可能ですが、旧かな旧漢字で細字ビッシリ。しかも後半はカナ文の草稿なので、現代の若い読者だと、ちょっと見ただけで投げ出すでしょう。被差別民=隼人=異民族(白丁)=島嶼漁民だったのではないかという説は、クリスチャンで文明史論家の愛山が思いついて晩年まで考究したもの。佐伯=アイヌ説まで唱えています。
 「耶蘇傳管見」は、山路が1905-8から西暦0年へタイムスリップして新訳聖書の時代を見てきたというSF趣向で、イラストレイティヴ。
 満州語と日本語の比較考は、まちがいなく後の司馬遼太郎を大いに刺激したでしょう。
▼『櫻井忠温全集 第一巻』S6-2-25、誠文堂
 「肉弾」と、その英語版、独語版をも収む。他に教育勅語全文の英訳、軍人勅諭全文の英訳、対露宣戦の詔勅全文の英訳が附録されている。

▼『櫻井忠温全集 第二巻』S5-10-10
 「銃後」と、謎の翻訳「前線十萬」(ヤン・ヘイ著)を収める。
 旅順に有刺鉄線は普通にあったのかどうかの疑問が、これでやっと解けた。
 「前線十萬」の世界は、「のらくろ」連載企画のヒントになったと思われる。

▼『櫻井忠温全集 第三巻』S5-12-15
 「煙幕」の中に「先陣争ひ」「まぼろしの殺人」「秩父の山うるはし」(映画梗概)などあり。リアルには文才のない人であったと誰でも分かってしまう。
 「雑嚢」はWWI中のトピック集。その意味でのみ貴重。
 サイレント脚本「赤城の夕映え」。これはモデルが存在した。

▼『櫻井忠温全集 第四巻』S5-11-15
 「草に祈る」。この挿絵を右手で描いているように見える。ハルピンの軍事図書館の3万冊の蔵書が、旅順図書館に移された。
 「秋風録」、「前肉弾」、「草に祈る」(映画筋書)も所収。
 「黒煉瓦の家」は必然性不明な創作を混ぜているので要注意。

▼『櫻井忠温全集 第五巻』S5-9-13
 「新篇 将軍乃木」。じっさいに何度も乃木に面会しているので、エクスクルーシフな情報が含まれている。
 「橘中佐」映画脚本。中佐はとうじの東宮誕生日の8-31に戦死した。それが作中で非常に強調されている。米国務省はこの映画から、あるヒントを得たのではないか?
 「十字路」のなかに、『肉弾』と『銃後』の中間期に投稿した雑文が数点、混ざっている。「波止場鴉」など。読めば、櫻井の周囲が櫻井を不快に思ったのはあたりまえだと分かる。反軍的というよりも、本人のダウナーっぷりが正直に出すぎているのだ。
 「落第生」は、陸軍将校生徒採用試験を採点者の立場から語るインサイダー情報で、貴重。ひやかし受験の多かったことが分かる。
 「流浪の人」は、「赤城の夕映え」の元作のようだ。
 代々木の衛戍監獄の見学リポートは貴重。
 「老小使」は、上野戦争に参加したものの逃亡した老人からの聞き取り。ちなみに山路愛山の父は上野から函館まで転戦した。櫻井の父も同世代。

▼『櫻井忠温全集 第六巻』S6-1-25
 「土の上・水の上」。その前半1/3は「蛙の鳴く頃」として新聞連載された。
 忠勝の末裔で大阪外語の英語教師・本多平八郎が同行。
 カーライルの旧宅を訪ねてサインブックを見たら、M41=1908-8-6に、海老名弾正、本田増次郎、そして兄の櫻井鴎村が一緒に訪ねていた。
 チャップリンに面会。すでに日本訪問が予定されていた。日系人の情況。
 アムステルダム五輪中、郊外閉居のカイゼルに会おうとして執事に阻まれる。
 「顔」(自叙歴)。日清戦争の捕虜も松山に収容。『坊ちゃん』の山嵐は、数学の教師の渡部だと思う。秋山大将は、野人そのままだった。
 「大調練時代」。たぶん新聞班長としての執筆。
 本人による「製作年譜」。

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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)

 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。

 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。

 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は200円です。
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 2008年6月25日号以前のバックナンバーのコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
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