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なぜかメールが通じないようなので、この場を借ります。

MHさま。そちらからの8-15メールが届きました。どうもこちらからのメールがそちらに届かないようです。8-13作文は13日朝と14日朝の2回送信しています。わたしはMHさまが休暇に入ったと思っておりました。以上、この場を借りてご連絡を申し上げます。ファンサイトの管理人さま、恐縮です。

新刊紹介:『誰も語らなかった防衛産業』(並木書房)

●新刊紹介:『誰も語らなかった防衛産業』(並木書房)

 桜林美佐さんの新著が届いたので拝読しました。
 例によって手間のかかった取材であります。(1年くらいかかっているのではないでしょうか。)
 しかも、わたしなんぞの入り込めないところを幾つも取材しておられます。

 「……防衛関連産業を取材させてもらったが、取材するにあたり相当の手続きが必要だった」「一般に防衛産業への取材は、かなりハードルが高いといえるだろう。町工場レベルであっても情報管理は徹底している……」(p.75)。

 まさにその通りでありましょう。
 これを、小生らグータラなロッキングチェア批評家どもの代わりに桜林さんが身を挺してやってくれたというところが、じつに貴重なのであります。

 たとえば、三菱長崎機工。たしか旧海軍の魚雷を造っていたところじゃありませんでしたっけ? 今でもかなり「秘度」の高い工場のはずですが、その中に入って取材をしておられる。よく許可が出たもんです。脱帽です。

 日本製鋼所の室蘭製作所。この中に日本刀を鍛刀しているセクションがある……という話は聞いたことがありましたが、正面から取材を申し込んでみる気力が、ワタシにはありませんでした。それを桜林さんは、北海道住民でもないのに、サクッとやってしまっています。脱帽です。
 原子炉の圧力容器を作れる工場だからこそ、こんどのヒトマルの砲身だって、完全国産ができたんですなぁ。(つまり、ヒトマルTKは輸出の制約も少ないってことだ。)

 弾薬メーカーの旭精機。オレはこの会社にインタビューできるなら聞きたいことが山とある。しかし取材のカベがいかに厚いかも分かっているから、ハナから諦めているわけ。ところが桜林さんは何かマジックをもっているらしく、この会社にもあっさりと入り込んで取材をなすっておられる。脱帽です。

 下請け工場の取材もまたすごい。
 極端な話、〈百種類の部品を1個づつ納品してくれ〉と迫られてしまう下請けの特技工場さん。10個のロットで不具合が1個ならば予備の感覚で乗り切れるが、1個の発注しかないのにその1個が検品に不合格だと、それを作りなおすためには、2倍の労力・資材を投入せねばならない。
 これではとてもやっていられないという本音。同情できますね。

 防衛大綱が決まるまでにあと半年というグッド・タイミング。多くの人に読んでもらって、日本のダメさ加減についての認識をあらたにしてもらいたいですね。特に、〈日本の兵器技術は世界一〉だとか迂闊に思い込んでしまう、昔の石原慎太郎氏式な夜郎自大たち。もう日本の武器なんか欲しがる外国はいないんだよ。こっちから営業かけて売り込まぬ限りはね。それもオフセット条件(部品の国産工場まで建ててターンキーでひきわたしますとか、その兵器を装備する部隊の訓練までぜんぶ面倒みますとか)付きじゃないと、インドだっていまどき武器を買ってくれやしないのです。

 こういうすぐれた取材本を読んだ上で、ネット上に流れているリーク情報に気をとめていると、事態の真相にいくばくか接近できる気がしますね。たとえばアパッチの件で富士重工が防衛省を訴えたのは、当然、防衛省の方から「訴訟にしてもらった方が、手続き的に、補償がしやすい」というサゼッションがあったんでしょ? 大手マスコミはそういう真相を報じないから、まるで富士重工と役所がバトルを始めるみたいな印象しか与えませんけどね。

 あとぜんぜん関係ないんですが、ネットで『ガンズ&アンモ』をみていたら、米国で売られている「AR-15」自動小銃(ただしフルオート機能無し)用に、ニコンがすごいスコープを市販してるのな(M-223 シリーズとかいう)。ビミョーに兵器周辺的な器材なら、日本のメーカーは、すでに国際的な売り上げ実績を積んでいるわけですよ。パナソニックのラップトップもIED処理ロボットの遠隔操作用に使われてるしね。

 軍用に転用できぬ民生品などない。これを日本人は知るべきだね。

※兵頭先生より何故か書き込みができないため、管理人が書き込みしております。
↓で兵頭先生の軍事ニュース紹介が読めますよ。
Podcast28_Military_News_Blog
http://podcast28.blogzine.jp/milnewsblog/

読書余論 2010-8-25配信分の内容予告

▼小島直記『洋上の点――森恪[つとむ]という存在』S53-4
 田中義一内閣の実質外相だった、元・三井の商社員。S18の山浦版伝記が不満なので一から調べなおした評伝だという。山内万寿治は57ミリQF閉鎖機など発明しておらず、それは英国メーカーの贈賄の手口だった、等々面白し。

▼A・H・S・ランドー著、戸田祐子tr.『エゾ地一周ひとり旅』1985、原1893
 M23に146日間で単身北海道一周をやってのけた冒険野郎。20年前の箱館戦争当時の交通事情がどれほど劣悪だったかを推知するよすがとして貴重な証言。アウトドアズマンも必読。

▼金田一京助『古代蝦夷[えみし]とアイヌ』平凡社ライブラリー 2004
 東北のえみしと北海道アイヌは同じであったことを論証。それがいつしか別民族としか思われなくなった理由は、大和朝廷が完全同化策をとったのに対し、松前藩が最悪の差別支配を続けたから。地名語源詮索も面白し。

▼山辺安之助・述、金田一京助ed.『あいぬ物語』大2
 京助は春彦の父。

▼日本歴史地理学会ed.『奥羽沿革史論』大5-6

▼鳥居 民『昭和二十年 第一部=6 首都防空戦と新兵器の開発』1996

▼善波 周[まこと]『弾巣』S18-3
 青龍刀のシナ兵と真剣勝負した体験談あり。

▼会田雄次ed.『世界の名著 16 マキアヴェリ』S41

▼『太田耕造全集 第一巻』S58 亜細亜大学pub.
 平沼内閣の書記官長(今の官房長官)。英字新聞を読んでいた反戦家は多くとも、英字新聞を読む攘夷家は稀少であったから、いろいろ参考になる。「三S」は遅くとも昭和5年には言われていたようだ。

▼防研史料 『和田秀穂史料』
 海軍のマッドマックス型の「號星拳銃」など。

▼防研史料 『爆撃精度向上ニ関スル研究(第三回報告)』S14-9~S15-10
 中攻による公算爆撃に関する、数字てんこもり資料。

▼竹長 吉正『日本近代戦争文学史――透谷・漱石・花袋・伝治を中心に』S51

▼(社)日本ねじ工業協会『日本におけるねじの始まり』S57

▼(社)日本ばね工業会『日本のばねの歴史』S59

▼陸軍文庫『砲兵陣中必携』M8
 4斤砲について詳しく分かる。

▼防研史料『大東亜戦争以前に於ける陸軍鉄兜に関する技術資料綴』

▼山下弥三左衛門『潜水奇談』S39
 米軍が戦時中に、酸素とヘリウムの混合気をホースで送り、200mでの長時間作業を可能にしていたこと。

▼黒石茂喜『潜水記』1966
 WWIに地中海で沈められた八阪丸の金塊をどうやって引き揚げたか、など。

▼坂ノ上言夫『拷問史』大15-8
 手術道具がないときにどうやって手足を苦痛なく切断し得るかが分かる。

▼田口【迎のシンニュウをサンズイにした字】三郎『音と戦争』S18-12

▼『史論叢録 上』大7、興亡史論刊行会pub.
 エリス・バーカー著の「和蘭興亡史論」の抄訳を収載。オランダは民主主義ゆえに没落した、とする。

▼森鉄之助『ゴム製造法』S18-9

 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)

 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。

 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。

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