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 次の救国農政提言本(タイトル未定、版元は草思社さん)の店頭発売が12月になってしまいそうですので、先行して内容の紹介をします。

 ほんとうは安倍馬鹿内閣の消費税導入の前にこいつを是非とも世に問いたかったのですが、間に合わなくて、すみません。
 農水省さんの「減反見直し」プレスリリースとも同期できなくて、すみません。同期できればインパクトがあったんですけどね~……。

 「昔マルクス(統制経済)、今アメリカ(TPP、海兵隊による洗脳……)」になってるでしょう。
 1905終戦の日露戦争で日本は砲弾を105万発補給できました。その一部は緊急輸入でかろうじて間に合わせたほど。ところが10年後の第一次大戦で、フランスは3億発、ドイツは5億発の砲弾を製造し射耗した。銃弾じゃないですよ、砲弾です。
 この数値を見て、わが陸軍省のミッドキャリア・オフィサーズの気が狂っちまった。この工業力・調達力の格差を埋めることがわが国にはできない。解法はないのか?
 明治科挙制の文武分離式の弊害で、もう一から物事を考えられなくなっていた彼らは、圧倒的な「体系」を有したマルクシズムに救いを求めました。その結果が「統制経済」なのです。(今日では「アメリカ」がその「圧倒的体系」を引継ぎましたね。一から物事を考えない人間には対抗不能。無批判に丸呑みすることしかできぬものです。)

 ではその統制経済には何ができたか? 支那事変&大東亜戦争を通じて、日本は7400万発の砲弾しか製造ができなかった。10年前のフランスの製造力の四分の一以下です。アメリカは1941以降、4百億発を補給しました(銃弾ではなく砲弾ですよ)。

 いま大蔵省がやってるのも類似パターンです。国の予算の3割が老人福祉に消えていく。この額も割合も、下方硬直で、将来、減ることはない。しかも有権者は、高負担を求める政党、低福祉を言う政党には、絶対に投票しない……。こう思ったら、大蔵エリートの気が狂ってしまったんです。
 一から物事を考えられない彼らが既存の枠の中で考え得た唯一の解法が「消費税」。しかしそれが日本を救わないことも、彼らは推定できる頭脳を持ってるんですよ。大蔵官僚と仲間たちだけが栄えて国は滅びる。それでいいと判断を下した。マルクスは「国家なんかいらない」って言ってるんだから、彼らの教養では、そうなっても問題は小さい。
 これを国家叛逆といわないとすれば、キチガイというべし。安倍馬鹿とそのオトモダチは同罪でしょう。
 エリート官僚たちをしてそんな売国政策にひらきなおらせた背景は、多重の意味で、日本国民の「高齢化」です。
 自分ひとりの天下りだけが心配なんじゃない。息子たちの天下り、孫たちの天下り、同僚・知人の息子の天下り、そのまた息子の天下り……面倒を見なきゃならない天下りポストの数が、高齢化によって幾何級数的に増えちまってるのですよ。
 パワー・エリートは、老後の鞏固な「生計自衛システム」を構築します。システムの恩恵から弾かれるのは、老齢失業者たちだ。
 わたしはこの、老齢失業者たちを「ニート老人」と呼び、ニート老人を救済する方法を考えたくて、今回の本の原稿を書きました。
 ところが草思社さんの担当編集者は「ニート」という言葉がなぜか大嫌いらしい(それも刊行が遅れている理由の一つなのです)。残念でなりません。

 独居老人だけが単身で居住してよい、「Lo(ロー)基準住宅」というものをわたしは提案します。建築基準法に、これを追加するのです。
 特に基礎が重要。基礎を「まくらぎ方式」にする。これによってレンタル農地の「地目」を変更せずに、その一部を宅地の敷地として有期限で使用させることも認められるでしょう。老人が死亡したら、耕作権は相続させないとあらかじめ決めておいて、「Lo(ロー)基準住宅」は基礎からきれいにはがしとって、もとの農地に原状回復できる。だから地主が安心。

 この「Lo(ロー)基準住宅」は「100万円住宅」にもなります。新築なのに、売価100万円。いままで無職のあなたは、50歳を過ぎて銀行で住宅ローンを組むことは絶望でしょ。しかし、100万円の貯金をして、キャッシュで自宅を買うことは、できるようになるんですよ。
 軽のキャンピングカーが100万円台でできるのだから、単身居住専用の平屋プリファブリック住宅を工場で量産して100万円を切れないなんておかしいんですよ。工業製品は量産すれば必ず安くなるんですよ。安くならないのは、「高(Hi)基準」しか合法でないという、不合理な制度があるから。ここが住宅建築制度イノベーションの肝。
 永久建築でなく、子孫に伝えず取り壊す予定の、単身専用の平屋住宅に、「高(Hi)基準」しかあてはめられない。これじゃダメだ。

 次に「予備畑」制度の提案。これは『新潮45』の先月号にちょっと書いたから、その記事をみてください。耕作放棄地を集約して大企業に大規模経営させるんじゃなくて(この農水省の発想は、そこが「劣位農地」だからこそ不作付けなんだという現場の真相から目を逸らしている)、5反づつ、ニート老人に貸すんです。ニート老人はそこに「100万円住宅」を建てて済み、その「予備畑」に竹木が叢生しないように管理し続ける。もちろん自分消費用に菜園や花壇にしてたってかまわない。日本が食料有事にみまわれたときに、農水省が出す「畑動員令」にしたがい、イモや麦などをすぐに5反全面に手植え・手播きできるようにしておけばいいというのが、レンタル契約条件だ。これが「予備畑」という制度イノベーション。

 なぜこの発想を得たかというと、それは第一次大戦と第二次大戦の英国の食料事情を調べた結果です。彼らは、ぜんぜん飢えていなかったどころか、WWIIでは逆に、国民寿命も児童の身体健康も、佳良化してるんですよ。二度の大戦で、英国はUボートにさんざん苦しめられたなんていうのは、アメリカの銃後を味方にするための大嘘宣伝だということがよくわかりました。精しくは本が出たら買って読んでみてください。レーショニング(配給)とブロケイド(食料封鎖)、そして「ヴィクトリー・ガーデン(都市畑)」について、ドイツと比較して詳述しました(フォーリンポリシーの最新記事によれば、WWI直前にコナン・ドイルが『デンジャー!』という小説で、ドイツの潜水艦による対英ブロケイドができるぞと警告していたんだそうですね)。
 ヒトラーは英国と戦争する気がなくて、そのためにドイツ空軍は近海で艦船を夜間攻撃する計画も能力も訓練もなかった。だから近海の制空権が英側にあるかぎり、アメリカから英国への貨物船の流れは阻止されませんでした。

 英国を食料面ですこぶる有利にしていたのは、ブリテン島の半分もが「採草放牧地」で、それはマルサスvs.リカード論争でいうところの「劣位農地」が大半だから、ふだんは麦もイモも植えないが、有事には、プロ農民が蓄力でプラウ耕起すればすぐにイモ畑や麦畑にできた、ってことです。英国は戦時中、ついに一度もパンの配給制をしないで済んでいるんです。(戦後一回、パンの配給制をしてるんだが、それは対米経済交渉の支援射撃だった。詳しくは書籍の刊行を待って欲しい。)

 類似のことは日本でもやれる。それが「予備畑」です。有事に1年で「現役畑」に変える。しかも、人力だけで。
 できます。作目を選べばいい。そのためにわたしは裏庭(荒れ地)でいろいろ実験をしてきました。
 ただし英国と日本は気候が違う。日本で、不耕作地を放置すると、ジャングル化してしまい、竹木の根が張り、もはや人力耕起では鍬の刃も立たなくなるので、一年では「現役畑」に戻せなくなる。だから常駐管理人が必要なんです。そこにニート老人を充てればいい。
 JAは、このニート老人をしてレンタル予備畑の「Lo(ロー)基準住宅」にすまわせるための諸手続きを代行する不動産業を営めばいい。おっと、そういうのはTPPで禁止されるかもしれない。でも街の不動産屋もそういうサービスはできるからご安心。

 この予備畑が1000万ヘクタール、後備山林500万ヘクタールあれば、将来、輸入がゼロになっても、日本人は2年目から餓死しないで済む(最初の1年は、ライブストックを潰し、その飼料を人間サマが食べることでしのげる)。食料輸入がゼロになる事態とは、原油も天然ガスも入ってこないワースト・ケースにきまっていますから、「予備水田」じゃ無意味です。「予備畑」だけが意味がある。トラクターもトラックも動かないというワースト・ケースを農水省は考えなくちゃね。

 後備山林に植えたらよい「放任植物」のひとつの候補が「キクイモ」です。昨日、わたしは、今年の3月から荒地に植えて実験していた菊芋の一部を収穫して、調理&毒見してみました。凍土に植えたわけです。それでも死なずに9割発芽した。そして、夏は半日陰なのに、株の7割は開花するまでに高勢に育った。すごいよ。人工注水は一滴もしてません。強風や落下物で倒伏した株も、枯れなかった。
 調理法としては、タッパに入れて蓋をして1200Wレンジで2分というのがよかった。香りはゴボウ、舌触りはターニップ、そして味は馬鈴薯に似ています。
 さらに生でも当たらないかと実験すべく、薄く切り刻んで水道水で洗い、醤油をたらして1個分、腹におさめましたが、一晩たっても体調に何の異常もないですな。

 これから、寒冷地ほど地価が下がる(少子高齢化が起きた先進国では、金持ち老人が暖地へあつまるので、寒冷地の地価はますます下がり、消費地から遠い不作付け農地のレンタル料はタダ同然になる)ので、東北と北海道で、わたしの提案が、まず、有望になると思っています。

 消費税のおかげでこれから日本には老人失業者がどんどん増えます。これが現状認識。それを救済したい。これが本書の目的。ではどうするか。土地制度、農業政策、学制、社会保障など、多岐の制度イノベーションが必要です。それが本書の本篇部分。ニートは悪じゃないと認知することから、イノベーションが納得される。これが全編を通じての訴求点です。

 もし、貯金ゼロで50歳を迎えてしまったとしても、すくなくとも餓死することはないという社会スキームが実現したら、日本人の気持ちは、どれほど明るくなるでしょうか? 

 機械が発達する現代工業国では、人口の何割かは失業せざるを得ません。他の国では失業者は反政府勢力になります。日本のニートはそうならない。ここが日本の国としての「徳」です。エリート官僚はこの「徳」を使い捨てる気でいるようだが、それをゆるすことはできない。

 本書の冒頭に、アリの巣の観察記を載せてあります。なまけているようにみえるアリは、なまけてはいません。それは「予備」なのです。狭い坑道の切り端に、アリが3匹も4匹もあつまっても、作業効率は最高に上がらないのです。しかし、切り端のアリが事故死や病死をすれば、すぐに、いままでのニート蟻が、現役蟻に変身するんです。(この話は『別冊正論』でもしましたね。)

●読書余論 2013-10-25 配信号 の 内容予告

▼防研史料『大正12年 関東地方震災関係業務詳報』
 小石川の造兵廠は大震災からどのように立ち直っていったか。製造ライン毎に被害と復旧過程がわかる。

▼防研史料『大正13年 陸軍造兵廠歴史』
 「拳銃附軍刀」なる珍兵器を試作していた。

▼防研史料『大正14年度 陸軍造兵廠歴史』

▼『偕行社記事 臨時第11号』M38-5

▼『偕行社記事 136号』M27-7
 軍刀か拳銃かの議論。どうもまだ26年式拳銃は、影も形もないらしい。この拳銃は本当に謎に満ちている。

▼防研史料『昭和20年度 生産状況 並に 金額表(火砲・光学)』
 高射砲などを月に何門製造していたの数値が製品ごとに分かる。

▼防研資料『重点兵器生産状況調査表(S20年度)』造兵課
 S20-4~8月の期間である。
 高射砲が最も必要なときに、高性能戦車砲のためにその生産資材資源が無駄遣いされていたことがよくわかる。

▼防研史料『地上兵器 生産状況調査表(S20)』

▼防研史料『S16~20 月別兵器生産状況調査票』
 100式機関短銃の生産数の正確な数字が部内には無いということがこれで分かる。燃やしちまったのか、記録そのものがなかったのか。

▼和田頴太[えいた]『真珠湾攻撃 その予言者と実行者』1986文藝春秋Pub.
 ビリー・ミッチェルが実施した実艦撃沈実験の詳細。TNT1000ポンド充填の2000ポンド爆弾は至近弾にすれば数発で戦艦を転覆させられることがわかった。信管は、水中10mで起爆するようにセット。
 それで山本五十六は双発の陸上大攻に賭けた……が……。

▼遠藤敬二『TV・FM放送アンテナ』S41 NHK刊
 テレビ送信アンテナは高ければ高いほど得だが、中波ラジオアンテナはそうではない。

▼箕作元八『西洋史講話』開成館M43-7-10pub.
 M34のパリ万博で懇談した日本の外交官や官僚や事業家や留学生たちが、西洋史の教訓に無知すぎることに唖然とした著者が、東大で教える傍ら8年がかりで書き上げた、1300ページの、旧制高校生&高等師範学校向けの圧巻通史。近代ほど詳しいので、社会主義(共産主義)や無政府主義の淵源など、当時の日本ですでに最先端の問題になりつつあったことの経緯がよくわかる。石原莞爾は発売直後のこの本のナポレオンのところだけを読んで、しきりに感心し、トンチンカンな「教訓」を汲んでいることも見当がつく。石原は「要領主義」の「ノートまとめ屋」にすぎなかったことを察するには、本書を1冊通読するだけで十分かもしれない。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)

 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。

 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。

 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
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http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。

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 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
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★★★謹告★★★
 『新潮45』の10月号の記事の著者プロフィールで予告してます草思社からの農業安保論の単行本は、この10月ではなく、11月の発売にずれ込みました。スイマセン。