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ANNE MURRAYの「ア・リトル・グッド・ニューズ」を聴く。

 ストラテジーペイジの2015-11-29記事「Russia: Cold War Weirdness Returns」。
  露軍機は当初、ISを爆撃しないでいた。ISがロシア民航機に対するテロをエジプト上空で実行したのだと11月前半に判断してから一転、IS爆撃に注力しつつある。
 フランス軍機は対IS空爆に関しては露軍と同じROEを採用した。すなわち、ヒューマン・シールズは無視する。

 露軍はISのファイナンスにターゲットを絞っている。すなわち石油生産とトルコへの密輸出だ。

 露軍は米、イスラエル、フランスと戦地協定を結んでいるが、フランスとの協定は独特である。単に味方射ちを予防するという以上の協定。

 しかしフランスの方としては、あまり露骨にロシアと共闘することはできない。というのはウクライナ侵略について対露制裁中なのだし、ロシアが「ISは米国の発明品」と国内宣伝していることにも同意するわけにいかない。

 ロシアの主張。アサド政権は国連から認められたシリア唯一の政権である。そして露軍はそのアサド政権から招かれてシリアに駐留しているのだ。

 ロシアがトルコ機をSAMで撃墜できないのは、トルコと全面対決になればダーダネルス海峡を封鎖されてしまい、シリアに海からアクセスできなくなるためだ。
 そしてプーチンには分かっている。シリアで露軍はNATO軍とは勝負にもならないのだ。

 トルコ国境を支配する者は、シリア第二の都市アレッポも支配できる。

 すでに露軍機はシリアで1500人を爆殺した。うち7割は反政府ゲリラだが、3割はヒューマンシールズか、間違った時に間違った場所に居た人たちだ。

 米軍とその同盟国軍による対シリア空爆は1年強続いている。彼らがこれまで4000人爆殺したうちの間違った市民は1割未満だった。

 ISのヒューマンシールズの使い方は、たとえば市民を鉄の檻に入れてそれを写真に撮ってインターネットに公開するのである。

 ロシア国内では、失業率は5%より悪化していないと公表されているが、貧困が広まりつつある。
 ロシア政府は最近、同国のGDPは今年、すでに去年よりも3.7%縮んだと発表した。

 他方で平均家計収入は10%落ち込み、インフレが同時昂進しているので庶民の食料品購買力はそれ以上に悪化している。
 政府公式発表では今ロシアには「貧民」が15%いる。しかし実相は、その2倍だろう。
 地域によっては、住民の4割近くが貧困だと行政が認めている。

 あと2~3年は、この右肩下がりの経済力趨勢は止まらないだろう。これはロシア国内の経済学者も認めている。
 すでにロシアの経済規模は世界のトップ10ヵ国から転落しているのだ。

 住宅、交通、電気水道などインフラへの政府支出が減らされていて、メンテナンスがなされず放置されるために、年金暮らしの老人たちに生活苦が加重されている。

 ルーブルの下落は、海外の民間航空会社のロシア行きの便を減便させている。

 ロシアの対トルコ経済制裁は、効くまい。トルコはロシアとちがって他の取引相手を探せるからだ。国際制裁と単独制裁の差である。却って、トルコと取引させてもらっていたロシア企業がダメージを蒙る。

 ロシアから逃げ出した外国企業の投資を、シナ1国で埋められるか? 不可能である。中共の対露投資が増えたにもかかわらず、ロシアに対する海外からの投資は80%以上も減ってしまっている。

 露軍はさすがにシリアへは徴兵を送り込むことができず、すべて純然志願兵である。最前線の歩兵には、危険手当て加重によって、月に4000ドルが支払われている。

 ウクライナのGDPは2014からくらべて13%ダウンした。

 トルコ機は、露軍が報復を狙っていることが確実なので、11-27からしばらくそのF-16を対シリア爆撃に飛ばすことを止めている。

 西欧は現在、ロシアよりもノルウェーから、多量の天然ガスを輸入している。この逆転は2015年に起きた。
 対露経済制裁にもかかわらず西欧は今でも天然ガスの総輸入量の三分の一をロシアから買い続けている。

 タジキスタン内の3箇所の露軍駐留基地から露軍が11-15にどこかへ逃げ出した。酩酊した露兵がクリャブ市で揉め事を起こし、タジク住民と基地の間で緊張が高まったためという。

 ロシアとタジクは条約を結んでおり、6000名の露兵が2042年まで基地に駐留できる。それらの基地はアフガン国境に近い。ヘロインとテロリストの出入りを見張るのが目的だ。タジク国境警備隊も腐敗しており、アフガン人が賄賂を渡せばいくらでもヘロインの輸送を見逃してしまう。だからタジク兵の尻を叩いてアフガン人密輸ギャングと銃撃戦をさせるのも露軍将校の役目。

 ISとその係累のシリア内のゲリラがますます「反イスラエル」を叫ぶようになってきたので、イスラエル政府は、「アサド政権の方がマシだ」と考えるに至った。公式に、11-10に「中立宣言」をしている。つまりアサド政権の退陣をイスラエルとしてはプッシュはしない。
 ※ではイランが支援するヒズボラやシリアは安全かというとそんなはずもない。要するに、隣国内で永遠無限に内戦が続いてくれるのがイスラエルとしては最大の国益なのである。それだけアサドは弱り果てていていまや理想的に無害(対イスラエル用の原爆をこしらえる可能性ゼロ)だといういうこと。またイスラエルは、イランの原爆開発も当分は無い、と見ている可能性がある。

いまでも「進水式記念絵葉書」が油彩で描かれているとは、良いことを聞いた。

 Grant Newsham and Kerry Gershaneck記者による2015-11-26 記事「Saving Taiwan's Marine Corps」。
  ※この記事に注目するのは、ニューシャム海兵大佐は陸自に送り込まれた初代のリエゾン・オフィサーだから。ほぼ同じことを陸自にもアドバイスしたのではないかとわたしは疑う。

 台湾海兵隊は以前は1万6000人だったが、いまでは9000人に減らされている。
 台湾海兵隊は、簡単にいうなら、1979年時点での米海兵隊のコピーである。
 その精神も装備も1979年で固定してしまった。それから35年過ぎ、米海兵隊の方は、はるかにヘリ化しているのに。
 ベトナム以後、米海兵隊はすっかり軽便化し、敏捷化しているのだ。

 台湾海兵隊も、米海兵隊と英国ロイヤルマリンズのハイブリッドを目指して、フットワークを軽々しくしなくてはいかぬ。

 市街戦能力を身につけなさい。台湾北部の都市化地域ではそれが役に立つ。
 もう鈍重な「自走榴弾砲」の時代じゃないから、軽便な牽引砲と、地対艦ミサイル部隊とに、更新しなさい。

 CASや艦砲射撃を地上部隊から要請する中隊、アングリコ(ANGLICO)を急いで育成しなさい。そして台湾陸軍にもその能力を普及させてやんなさい。

 LAV-25(六輪APC)を台湾海兵隊も採用しろ。
 機雷戦に習熟しろ。それは台湾防衛の役に立つ。今はスマート機雷もあるから。
 ※グァム島の米海軍基地内には「タスクフォース75」というのができた(長は大佐)。そこが装備する高速艇が「マーク6(Mark VI) 」。85フィートの現代版PTボートである。むろん雷装なし。25mmのマーク38機関砲×2門、12.7mm機関銃×6梃。さらに軽機や擲弾発射銃を増設できるマウント複数。駆逐艦がすっかり巡洋艦サイズになってしまい、雑用など命じ得なくなったので、そのギャップを埋める機動艇だ。わが陸自こそ、こいつを装備しなければならない。海兵隊なんかの真似事をしている場合じゃない。

 次。
 Thomas Grove記者による2015-11-26 記事「Russian Defense Industry Hits Speed Bumps」。
  ロシアは、最新のT-50戦闘機を100機、初期調達する気だったのに、予算がなく、12機前後に削減する。
 ボーレイ級原潜は、計画では2020年までに8隻調達の見込みだったが、どうも6隻になりそうだ。

 アルマタ新戦車は2012年時点でカネがかかりすぎるという内部批判があった。今年、プーチンが個人的に工場を訪れて激励した一方で、国防省は初期発注を止めた。

 つまりプーチンは国内向けのイメージ宣伝として軍拡を叫び続けながら、裏では国防省を通じて各メーカーに「生産の自主削減」をこっそり強要しているところなのである。ロシアにはもうカネは無いのである。

 他方でロシアの国営兵器産業は、2015年度分として政府から受注した契約分の生産が、年度末までに間に合いそうにない。年度の中間点における納品達成率は平均で38%であった。インターファクスは特に小火器メーカーのカラシニコフ社の名を挙げている。※政府が設備投資や運転資金のための融資をしてくれていないということなのか?

 シンクタンクのIISSによるロシア批判。露軍機はシリアで誘導爆弾を落として精密攻撃していると宣伝しているが、じっさいには無誘導爆弾がほとんどである、と。※コラテラルダメジなど無視してダムボムで絨毯爆撃してやった方がゲリラは弱るし人質状態の住民もそれを納得、否むしろ歓迎するのであるというイスラエル人の知恵にそろそろ耳を傾けたがよいぞ。

 モスクワのシンクタンクCASTによると、ルーブルの下落によって、ロシアの軍事費支出は、いまや世界の七位か八位にまで落ちたという。2014クリミア侵略の前は、世界の第三位だったのに。

 アルマタ戦車のメーカーは、ニズニタギル市に本社があるウラルヴァゴンザヴォド社である。米欧ではこの会社を制裁リストに加えている。ロシア最大の民間銀行アルファバンクを含めた債権者たちは、同社を裁判所に提訴している。なんと同社は870億ルーブルの借り入れ金を返せないでいるという。米ドルにして10億ドル以上である。
 同社は銀行預金として700万ドルしか置いていないことも、差し押さえ調査の過程で判明している。

 回顧すれば対独戦初年の1941年に月産1000両以上もT-34を送り出した工場が、このUVZなのだ。冷戦期にはT-44とT-62を製造していた。

 現在はT-72の近代化改修で食いつないでいる(工員は1日7時間労働)。アルマタの量産が本格化しなかったら、従業員は路頭に迷う。

 ※嘘ばかり言っているロシアも少しは本当のことを言う。そのひとつが、「アメリカがサウジにどんどん石油を量産させてイランとロシアを潰しにかかっている」というもの。仰るとおりでしょう。11-25にワシントンポストに奇妙な分析記事が載った。ISがしぶといためサウジに世論の非難の矛先が向きかけているのを必死で逸らそうという趣旨に見えた。こういうのは米政府が書かせているんじゃないかな? サウジはアメリカの役に立っているのだ。

 次。
 現代テロリストに対する「アブナクナイ師」のテレパシー説法について。

 「人を殺してはいけない。ただし、どうしてもしかたない場合には、人を射ち殺し、斬首し、大量爆殺し、焼き殺し、その動画をユーチューブにUpしてもゆるされる。」
 「異教徒からは税金を取れ。ただし、どうしてもしかたない場合には、異教徒を皆殺しにして土地財産を奪ってもゆるされる。」
 「隣人同胞には親切にしろ。ただし、どうしてもしかたない場合には、隣人同胞にいいがかりをつけて殺して財産を奪ってもゆるされる。」
 「婦人には親切にしろ。姦淫してはいけない。ただし、どうしてもしかたない場合には、犯したり殺してもゆるされる。それも、数え切れない人数を次々と。」
 「弱者や困っている人はいたわれ。ただし、どうしてもしかたない場合には、襲って殺して財産を奪ってもゆるされる。」
 「子供は愛育し、保護しろ。ただし、どうしてもしかたない場合には、誘拐し、自爆ヴェストを着装せしめて市場の雑踏の中へ往かしめ、そこで起爆させてもゆるされる。」
 「盗んではならない。ただし、どうしてもしかたない場合には、いかほど盗んでもゆるされる。」
 「外国人とは平和に共存しろ。ただし、どうしてもしかたない場合には、外国人を皆殺しにしてすべてを奪ってもゆるされる。」
 「約定は守られねばならない。ただし、どうしてもしかたない場合には、すっかり更改してもゆるされる。」
 「律法は守らねばならない。ただし、どうしてもしかたない場合には、そんなものは無かったことにしてもゆるされる。」
 「偽証してはならない。ただし、どうしてもしかたない場合には、どれだけの嘘を語ってもゆるされる。」

 そしてアブナクナイ師は言った。
 あなたがわたしの教えにそむくとしても、どうしてもしかたないと考えたならばゆるされないことがあろうか。なぜなら、わたしの上記の指導に一度でも同意したことがある者は、すでに「万能の身」にあらざるや?

そうだったんですよ、川崎さん。

 Vidya Sagar Reddy記者による2015-11-25 記事「Russian Navy Reads the Art of War」。
  ※記者はニューデリーのシンクタンク勤務。

   いまのロシアの大きな狙いは、NATOの東方拡大を、押し返す。
 米海軍による海洋支配を、拡大させない。逆に海洋の不自由化を進めたい。  ※「FON」対「海洋の不自由化」の角逐する時代なのか。

 WWI前、カイザーのヴィルヘルム2世は、『孫子』を読みたがったという。
 マッカーサーは、孫子についての言及がある。
  ※どっちも初耳です。ちなみにマッカーサーが台湾を「不沈空母」と表現したことがあるのは本当です。1950年8月17日に、東京から米本土の「海外戦争復員兵協会」に宛てて、その総会で読み上げてもらうつもりで打電した「メッセージ」の中で。そこにはマックなりの地政学が披瀝されています。
  ――第二次大戦で、アメリカの戦略的な前線は、米本土の海岸線や飛び地の島嶼から、いっきょにフィリピン群島へ変わった。そして太平洋全体が、アメリカという城を守る濠になったんである。
 アリューシャンからマリアナまでの列島線を軍事的にしっかり確保していれば、アジアで自由主義国の領土を占領してやろうという〔ソ連・中共陣営の〕奇襲攻撃はありえない。しかしこの列島線をうしなわんか、戦争はもう避けられない。
 もし台湾が敵手におちいれば、そこは敵の突出陣地になる。そうなると、沖縄に対する空襲力は、シナ本土からするものよりも2倍の威力になってしまう。また、台湾からならば、大型爆撃機ではない、ただの戦闘機によっても、フィリピンを空襲できるようになってしまう。
 台湾が敵の手にあるということは、不沈空母および不沈「潜水母艦」が敵の手にあるのと等しい。沖縄とフィリピンに対して理想的な攻撃拠点になるし、われわれが沖縄やフィリピンからシナ大陸を攻撃するときにも一大抵抗拠点になってしまう。
 われわれが台湾を守れば、われわれは大陸のシナ人からは嫌われてしまうなどとと説く者がいるが、この者たちの太平洋における宥和主義・退却主義ほど、甚だしい謬論はないのだ。
 アジア人というものは、攻撃的で断乎たる動的な指導者を尊敬する。臆病で遅疑逡巡する指導者を、アジア人は、あざわらうのだ――《すべて兵頭私訳》。
 なお、トルーマンは、大統領命令をマックに与えて、このメッセージを公式に撤回させましたが、マックはその前にプレスにコピーをばらまいていました。トルーマン図書館博物館の、アチソン長官の関係のファイルに、この原文らしいものの電報受信タイプ紙が残っています。以上、長い余談。

  クリミアの切り取りでは、「ゲラシモフ・ドクトリン」が実行された。
 敵の弱点を狙え。なおかつ、直接の激突はしてはならない。
 孫子はすべての戦争はごまかしを基本とするという。
  「兵は奇道なり」。

 孫子いわく。敵が弱く見えるときは実は強い。敵が強く見えるときは実は弱い。
 孫子いわく。敵の予期せぬところへ自軍を展開せよ。そして敵の弱点を衝け。

 ロシアは欧州と中東に侵略の狙い(NATOの東方拡張を押し返すということは、西側から見れば侵略に他ならぬ)を絞っている。だからこそ、その方面には米海軍を集中させないために、バルト海や黒海や太平洋や米本土周辺などの遥か離れたアサッテの方角にて、米海軍に対して挑発行動をわざと仕掛けているところなのである。

 予算を削減され続けてきたロシア海軍には、とっくに西側海軍と正面衝突して勝てる実力は無くなっている。

 そのため今ではロシア海軍も、シナ人のマネをして、非対称戦術に賭けるしかないのである。

 さらには、シナ軍が南シナ海に構築しようとしている「A2AD」を、北極海から地中海にかけてつくりたいのである。

 米海軍のリチャードソン作戦部長は、ロシア海軍の活動は地中海の海上交通を不自由化させることを指向しているとすでに指摘した。

 ロシア海軍は、「戦わずして人の兵を屈する」を実践中である。

 米国は、「ユーラシア島」の東方における対支の「A2AD」打破と、「ユーラシア島」の西方における対露の「A2AD」打破を、両立させられるほど、国力にも海軍力にも余裕はない。今後もない。

 ※アウタルキーを既に得ているハートランド勢力(ロシア)が、リムランド勢力(EU&NATO)の海上交易を不自由化してやることで相対的に国権を高めることができるとは、まさにスパイクマンすら予測できなかった新事態だろう。これは相対的に弱い(ロシアの)海軍力によっても実行できるのだ(マハンが生きていたら驚くはずだ)。ただし日本にとって幸いにも、中共はこのロシアのマネはできない。中共はアウタルキーを捨ててしまって、輸出入にヴァイタルに依存しているから。中共海軍が今後いくら相対的に強くなっても、海上交易の不自由化で致命的なダメージを受けるのは、シナ人自身なのである。したがってアジアの反支連合が採るべき安全・安価・有利な戦術は、「機雷戦」である。その結果、シナと交易できなくなる米国の経済成長は鈍る。日本の地位は相対的に急浮上し、太平洋は静かで落ち着いた海になるだろう。

 ※さらに余談。さきごろロシアから公表された動画で最もショッキングだったのは、ISの大規模な石油精製工場と、数百両の石油運搬トラックが、誰にも爆撃されずに今まで稼動し続けていたことが明らかになったこと。ロシアの言う通り。トルコは、ISとズブズブなのだ。
 トルコは、自前の石油資源を確保したいのだろう。一方ではISを通じてシリア・イラク領内の油田を実質確保してやろうと動いているのだろう(それはもともとトルコ帝国のものだったし)。もちろん、もし隙あらば、コーカサス方面の反露諸国も支援して、ロシアからは石油・ガスを買わずにすむようにしたいとも思っているだろう。旧トルコ帝国が崩壊してすべての油田を剥奪された恨みはつのる一方なのだ。
 いま、アゼルバイジャンの石油は、ジョージアとトルコ領を串刺しにして、シリアのすぐ北の港までパイプラインで搬出して欧州へ売られている。これに将来、カスピ対岸のトルクメニスタンも、「カスピ海底横断パイプライン」を敷設して相乗りしたい。すなわちアゼルバイジャンとトルクメニスタンは、陸封国なので、トルコの擁護と協力なしには石油商売ができない。となれば半分はトルコの油田みたいなもの。トルコは、こういう支配関係を強化し拡大して行きたいのだろう。それはロシアにとっては「営業の邪魔」と映る。
 ロシアが弱れば、トルコが出てくる。プーチンは自分が老人だと意識しているはずだ。だからこそ、無理をしてでも、トルコに対しては強く出なくちゃならない。これはロシア人の宿業だ。プーチンの個人的体力が尽きかけているのだ。さもなきゃ、若さを強調するヘンな宣伝ビデオをこれほどに垂れ流しはしない。「強く見せているときは実は弱い」のである。もうじき、とりまきの戦争屋たちを抑制できなくなるかもしれない。

ニヒリズムのテロ行為に利用されやすい宗教とされにくい宗教があるのは事実。前者の文化圏では現世の救済と暴力が結びついていると推測することは可能。

 Owen Daniels記者による2015-11-23記事「4 Reasons the US Should Support the Resettlement of Syrian Refugees」。
  米下院はシリア難民を受け入れる前にその身元調査を厳密にやれと11-19に決議した。
 げんざい、全米の知事の半数以上が、彼らの州内にシリア難民は受け入れないと声明している。
 オバマは1万人受け入れると発表したが、それは阻止されている。
 ただし上院は下院に同調しないだろう。そのため身元調査が法制化されることはあるまいが……。

 事実についてまずわきまえよ。
 ひとつ。米国で難民認定されるのは、かなり狭き門である。
 2001-9-11以降、合衆国は80万人近くも難民を受け入れているが、そのうちこれまでにテロ関連の罪名でしょっぴかれたのは3人だけである。つまり米国の入国審査役人は有能で、あぶないやつは見事にはじかれているのだ。

 9-11以降の手順。まず国連難民高等弁務官が難民希望者のリストを米国に知らせる。それを、米国の本土防衛庁などが多重スクリーニングする。米国にはテロリストについての重厚なデータベースがあるので、事務は他国よりも早く進む。

 難民は1年間、滞在がゆるされる。そしてグリーンカード取得にも動けるが、それには更なるスクリーニングがある。
 最短でも18ヵ月しないと、難民は大手を振って米国住民となりおおせることはできない。
 というわけでテロリストが難民にまぎれて米国に入るのはとてもむずかしいのだ。

 今のところ、パリテロの犯人に「難民」はいなかったと考えられる。フランスとベルギーの国籍取得者がほとんどであった。

 ただし、複数の犯人は、フランスやベルギーからシリア戦線へ行ってISのために戦い、それからまたフランスやベルギーに舞い戻って来ていた。

 この2国は、そういう危ない自国籍民が国内に所在することを把握していながら、互いに政府間の連絡も取らず、テロが実行されるまで何の手も打たなかったのだ。今回の犯罪実行者たちは、新来の外国人ではなくて、すでにその国の中で暮らしていた大量の元外国人の跳ね上がりどもだった。
 こうした条件は、米国にはあてはまらない。

 ※少なからぬ数の先進国では、自国民が海外で勝手に戦争してくる行為を法律で禁じ、犯した者からは国籍を剥奪するようにもしつつある。しかしフランスとベルギーにはそうした法制は無いらしい。おそらくそれは「外人部隊」制度の伝統と関係があるのだろう。

 米国はむしろ、EU市民だからという理由で、ノービザで公然と米国に入国ができるあぶないテロ志願者たちを、警戒した方がいいだろう。

 今回のパリテロの犯人たちのうち少なくとも1名は、もし観光客等を装って米国の空港にあらわれた場合、米国のテロリストデータベースにはまったくひっかからずにそのまま入国できた、と専門家は認めている。

 米国は2015末までに欧州諸国と協議し、直近5年以内にイラクやシリアを訪問した履歴のある欧州国民には、ノービザでの米国入国は認めないようにする仕組みをつくりたい。

 ISは、ISだけがスンニのプロテクターだと宣伝している。それはウソだ。
 トルコは200万人以上のシリア難民を入れた。
 レバノンは100万人以上。
 ヨルダンは60万人以上。※いちばん同情されていい国。この負担は重過ぎる。
 イラクですら20万人以上。
 ※カネも土地もあり同宗派国なのに受け入れを拒否しているGCC諸国こそ恥を知るべきだろ? コーランには困った信者を救うなと書いてあるのか?

 欧州ではドイツは80万人を2015末までに受け入れるであろう。
 フランスも3万人入れると言っている。

 かたや米国は、シリアへの軍事介入を始めてからこれまで40億ドルの人道支援金を出したが、米国内に受け入れたシリア難民は1682名である。そしてこれに1万人追加するかどうかで国内が揉めているところだ。

 次。
 Roy Abbas記者による2015-11-20 記事「Think ISIS Is Not Islamic?  Think Again」。
  ISがインスパイアされているのは、13世紀のラディカルなイスラム法学者シェイク・タキ・イブン・タイミヤと、18世紀のイスラム法学者ムハマド・イブン・アブド・アルワッハブ。
 イスラム・テロをなんだかんだと擁護する者は、英国内のインド系住民はその先祖が英国から被った苦痛に報復するために英国内でテロを起こしてもゆるされると言っているようなものだ。
 バングラデシュはパキスタンから迫害されて分離独立しているが、そんな理屈が通るなら、バングラデシュ人はパキスタンに今から報復攻撃をしかけても可いわけだ。

 偽知識人は、レッド・ヘリング(=鰊の燻製を地面にこすりつけることで猟犬が狐を追えなくする。関係ないものを持ち出すこと)をやめろ。

 ISがイスラム教に依拠してテロを繰返しているのが事実である以上、われわれがISに対抗していく唯一の道は、イスラム教圏内に存在する「カリフェイト」のコンセプトを容赦なく酷評して顰斥することしかないのだ。

 ISイデオロギーのカギとは、カリフェイトのコンセプトと、カリフェイトの預言なのである。それはアラビア語を知らないでわかったつもりになっている論筆家どもの知ったかぶった言説とは何の関係もないのだ。

 預言者ムハンマドとその教友たちの言行録を集大成した『ハディース』。そこからISイデオロギーのすべてが発出してくる。回心、納税、死……これらのIS流儀は『ハディース』に根拠があるのだ。

 ファティマ・イムラ・ナゼーが言ったように、ネイティヴのアラビア語話者でないムスリムたちは、アラビア語で書かれたコーランを暗誦しても、そこに暴力的な表現があることには気が付かない。

 もし、各信者がその母国語でコーランを聞いたならどうなるか。ほとんどのムスリムたちは、コーランの内容の暴力性に、不快さを感ずるだろう。そして、「これは翻訳が正しくない」と言い出すだろう。なぜなら彼らはコーラン以前のモラルの原則を有しているからだ。

 ナゼーいわく。少数のムスリムたちは、コーランをモラル上の究極の権威とみなす。そしてコーランの暴力とヘイトに満ちた章句を字義通りに遂行するべきだと信ずる。結果が、ありとあらゆるコミュニティを破壊するだけのISになっている。

 「ISとイスラムは無関係」と護教する連中は、かならず、コーランの「5:32」をひきあいに出す。そこにおいて、イスラムは無辜を殺すことは禁じている、という。

 どっこい、「5:32」にはちゃんと抜け穴・逃げ道がある。ISだろうと他のイスラム・テロリストだろうと、そこを利用するのは簡単なのだ。

 イスラム教を批判すると、ムスリムも西側社会も、うけいれたがらない。正当な批評も、中庸イスラム教徒からは、「イスラム恐怖症を煽っている」とレッテル貼りされてしまう。西側社会の左翼は「おまえは無神論者だ」と言い、リベラルたちは「レイシストだ」と言う。

 2014年にイスラエルがガザに侵攻したとき、ロンドン、ニューヨーク、パリ等では、西側在住のムスリムが、大デモを起こして、イスラエル大使館に抗議した。しかしISの所業がいかほど暴虐でも、西側在住のムスリムがそのようなデモを起こすことはないし、サウジアラビア大使館やカタール大使館がムスリムデモ隊から抗議を受けることもない。カタールはISへの資金提供者である。

 前のイラクのアルカイダの長、アブ・ムサブ・アルザルカウィ・ザルカウィは、7つのアジェンダを掲げていたが、それらはイスラムのカリフェイトのコンセプトからインスパイアされている。

 ドローンでイスラム暴力集団のリーダーを殺しても、敵は短期間しか弱まらない。なぜなら、西側は彼らのイデオロギーに対しては攻撃も排斥もしていないからだ。その結果、リーダー1名の死が、後継者複数を生む。

 われわれの敵は、ナショナリストではない。連中は、領土問題が解決されたならそれでおとなしくなるという手合いではないのだ。

 われわれの敵は、単なる兇悪犯罪者の群れでもない。
 われわれの敵は、暴力を行使することによってカリフェイトを建設し、さらに彼ら流のシャリアー釈義を全世界に押し付けたがっている集団なのだ。

 次。
 ミリタリー・コムの2015-11-23記事「Osprey's Own Rotor Wash Led to Deadly Crash」。
 2015-5-17にハワイで21人乗っていて墜落したオスプレイ。海兵隊員2人が死亡した事故。原因が解明された。
 昼間で、天気は晴れていたが、自機が巻き上げた土埃で左エンジンが「コンプレッサー・ストール」を起こした。

いま、ナヴァロ教授が面白い。

 Christopher P. Cavas記者による2015-11-19記事「Two USN Carriers in Japan?」。
   CSBAのアナリストのブライアン・クラークが、日本に常時2隻の米空母を置け、と提案している
 艦上機の陸上での置き場は厚木だけでは狭いが、岩国が拡張されているので、海兵隊と同居すれば問題は解決する。

 次。
 ?記者による2015-11-21記事「The future of sniping  Enemy at the gates  New technology is improving military sharpshooters’ range and accuracy」。
  ヴァジニアにあるシンクタンクのグローバルセキュリティによれば、世界でいちばんおそろしい狙撃銃は、ノルウェーのナモ社が作ったラウフォスMK211というモデルで、500m先で厚さ15mmのスチール鈑に30度という浅い角度でヒットしても貫通できるという。
 しかもこの弾丸には炸薬が入っていて、貫通後に爆発し、さらに焼夷剤によって内部の燃料に点火できるという。メーカーによると、1発でヘリコプターを墜とせるそうだ。 ※口径情報が皆無。何だこの記事は?

 しかるにこのたびニューメキシコ州で米軍から開発を請け負っているサンディアナショナル研究所は、狙撃銃から発射後の弾丸を空中で軌道変更させる技術を完成した。
 ライフル銃身から発射する、有翼弾。サボで包まれていて、サボは銃口を出たところで剥落する。
 射手の相棒のスポッターが赤外線レーザーで照らしつけているところを、弾丸内蔵のセンサーが検知して、フィンを操舵してコース修正する。
 操舵信号は1秒間に30回のサイクルで、発せられる。
 すべての精密メカが、発射時の12万Gの加速度に耐えねばならない。メーカーは、それをなしとげた。

 これとは別にDARPAも、EXACTOという自律誘導弾丸を開発中である。
 こちらは、フィンを使わない。12.7mm弾が旋転したまま空中で軌道修正できるという。その具体的方法は謎。
 誘導電波は銃の側から空中の弾丸(の弾尾)に対して指令される。よって、スポッターのレーザー反射には依存しない。

 サンディア社はXM25のメーカーでもある。この25mmの擲弾は無誘導だが、内部に、旋転の回数をカウントするチップが入っている。旋転数によって飛距離を知るわけだ。あらかじめインプットした飛距離に対応した旋転数を感知したところで爆発する。だから物蔭の敵兵の後頭部の上空で爆発させてやれる。
 しかしアフガンではこいつの取扱訓練中に早発/腔発事故が起き、兵隊1人が負傷している。まだまだ完成品ではなく、実戦配備は2017だろうという。
 ※爆発弾頭には常にこの「自爆事故」のリスクがつきまとう。だからWWIIの初期の英軍戦車の小口径砲には、ソリッド弾頭しか搭載させなかったのではないかと思っている。

 テキサスの会社、トラッキングポイント社は、スナイパーの仕事をおそろしく単純化した。このメーカーの新開発のシステムを狙撃銃にとりつけると、射手は、そのときの風速をインプットして、敵兵のシルエットに向けてほどほどに照準して、引き金を引くだけでいい。引き金を引いても実包プライマーはすぐには発火しない。銃身がいちばんいいところに来たときに、コンピュータが見計らって発火させる。敵兵のシルエットのどこに当てるかも、コンピュータがちゃんと最善の選択を考えてくれている。だから、いかにへたくそな射手であろうとも、もはや、外れ弾というものは、絶対に発生しないのだ。 ※アーチェリーの「クリッカー装置」からの連想だろうね。

 こうなると次に来るのは、狙撃手そのものを失業させる時代であろう。

 おそろしいのは、トラッキングポイント社の製品は、海外輸出に何の制限もない。サンディア社の弾丸とエグザントは輸出禁止品目なのだが。

 さすがにトラッキングポイント社には海外からのハッキングの試みが殺到しているそうで、同社では外部とのインターネット接続を今では完全に遮断してしまっている。

 次。
 Peter Navarro記者による2015-11-18記事「China's 'Carrier Killer' Missile Strikes the 2016 Presidential Debate」。
  ※この記者は最近『クラウチング・タイガー』という、極東での米支戦争を予言する本を米国で出した。内容をざっと読んだところ、反日的な記述がひとつもない。しかも、韓国発のでたらめな情報をひとつも引用していない。反支でしかも親日、そして韓国はスルー(最低限の事実紹介だけにとどめている)。すがすがしく、じつに「読中感」がイイ。この人はすでに類似の本を2冊出している。そのなかで一貫して「シナ製品をボイコットして米国内の製造業を守れ。海外に工場を移すような米企業には高税を課せ」という正論を説き続けている。とにかく面白い人だ。

 土曜日に迫った、ニューハンプシャー州での民主党の公開ディベートのために、CNNは質問を用意した。それは、いわゆる中共の「対艦用弾道ミサイル」(米空母キラー)についての、各大統領候補の識見を問わんとするものだ。
 そもそもそんな兵器が実在していると認めるのかどうか、認めるならその有効性をどう評価しているのか。まさに、大統領としての軍事的教養があきらかになる。※ナヴァロ氏は、否定も肯定もせず、ただ、孫子の「戦わずして人の兵を屈する」を挙げるのみ。実在しないことは当然わかってるはずだ。曲者なんだよ。

 このテーマについて一般視聴者がわかりやすいように事前に知識を与える「コンパニオン・ビデオ」が用意されている。

 その中で、米海大のヨシハラ教授〔ラヴァロ氏が最新刊でいちばんたくさん所説を引用している権威。ちなみに兵頭はこの人をあまり高く買わない。ハリウッドスターの検死をやった日系医師と同じ臭いがする〕や『フリー・ビーコン』編集者のビル・ガーツ記者らが対艦弾道弾の基本コンセプトの解説をしてくれる。

 またそうしたミサイルを30ノットで走る空母に命中させるのがいかに難事かについては、トマス・X.Hammes氏〔海兵隊を三十年努めた古手の毛沢東研究家で、2006にラムズフェルドは辞任しろという声を挙げ、やはりラヴァロ教授の最新刊中には何度も引用されており、兵頭が首肯できる所説が多い〕らが説明してくれている。

 共和党のディベート大会は次はネヴァダである。そこではこういうテーマを論じたらどうだろうか。――なぜ米国との交易で得た稼ぎを、米国をやっつける邪悪な兵器システムに投入しまくっている中共のようなトンデモ国と、われわれはつきあいをし続けなければならないんだ? われわれはシナ人が米国市場にはアクセスできないようにもっと制限するべきではないのか――。

 トランプ候補はわたしに賛成である。※トランプはシナ問題で頼りにしたい専門家20傑の中にナヴァロを挙げる。しかるにナヴァロ氏はレッキとした民主党右派(市長選や連邦下院選に出た過去がある)なので、ヒラリーが当選したとしても、存在感が増すわけ。奇貨おくべし。

 テッド・クルス候補とマルコ・ルビオ候補は全くダメである。この2人は、シナ人がいくら米国を脅威しようともシナとつきあえというスタンスなのだ。
 中共政府によるアンフェアな「元」の為替レート相場操作を、クルスとルビオは容認している。
 カーリー・フィオリナ候補は、かつて某会社のCEOとして、製造拠点を米国内からシナへ移してしまうことにより、米国内の雇用を数千人分も減らした女だぞ。

 ランド・ポール上院議員は孤立主義者だから、対艦弾道ミサイルがあるのならば米海軍はハワイまで撤退しろ、と言うわけだろうな。※ラヴァロ氏は孤立主義者ではない。ミアシャイマーに私淑しているから。

 ※ここでひとつの事実を提示しておこう。ナヴァロ氏の最新刊を読んだ人なら、この意味がわかるはずだ。テッポウの弾丸には銅が必要である。銅は、「銅精鉱」の形で輸出され、消費国で精錬される。シナは世界の銅の半分を消費している。シナはチリから銅精鉱をバルクカーゴキャリアで運んで来る。毎年数百万トンもだ。民航船は最終積港と最初の揚港を結ぶ大圏航路を通る。チリから極東まで、貨物船で三十数日である。その航路は太平洋を西回りに横断するコースとなる。マッキンダーが口を酸っぱくして言っていたように、地政学を論ずる者は、ぜったいにメルカトル図を見ていてはいけない。地球儀にゴム紐を当てながら考えること。そしてもうひとつ。(株)商船三井の広報室は、とても親切だ。

 次。
 Alex Calvo記者による2015-11-18 記事「He Who Defends Everything Defends Nothing」。
  国際仲裁法廷でフィリピンはシナに対してどんな法廷戦術によって勝利できるか。
 勝ち目はある。
 スペインの古地図がある。そこにはスカボロ礁がバヨデマシンロクという名で載っている。スペインは米西戦争後にパリ条約によって比島をアメリカに渡したのだ。
 この暗礁の正確な経度と緯度が海図に載るまでには年月がかかった。
 そのため、1748-9-12に英国東インド会社所有の軍艦『スカボロー』が座礁事故を起こしてしまう。この事件からマシンロク島にはスカボローという別名が与えられたわけだ。
 1792-5にマラスピナ探検隊が、ようやく正確な座標を報告した。
 ついで1800年にカビテ湾を根拠地とするフリゲート『サンタルチア』号が詳細な測量。
 このフネはフィリピンに配備された最初の蒸気動力軍艦だった。スペインは、スル諸島のサルタンや、海賊と奴隷輸出に精を出しているイスラム教徒のモロ族と戦わねばならなかったのである。
 以上は、前口上。以下が本題だ。

 1913年、スウェーデンの東アジア会社所有の貨物船『ニッポン』号が、台風のためスカボロ礁で座礁してしまった。
 これをフィリピン政庁が救難しているから、島に対して統治行政権を行使していた証拠になるのである。
 しかもフィリピンの裁判所で海難審査されている。司法権が及んでいた証拠である。
 ※記者は名古屋大の客員教授。分野は、インド洋~太平洋の戦史と国際法。台湾の「南シナ海シンクタンク」にも所属し、現在、第二次大戦におけるアジア諸国の対日戦への貢献について1冊執筆中という。

中共は戦時のマラッカ海峡利用を諦めた。代わりにスンダ海峡を確保すべく、インドネシアに対してはあらゆる譲歩をしても、スンダ海峡を機雷で封鎖されないようにしたい。

  Eric Haun記者による2015-11-13記事「Canada to Ban Oil Tankers on Northern BC Coast」。
   カナダの太平洋岸にあたるブリティッシュ・コロンビア州は、その北部海岸の近くを原油タンカーが通航することを暫定的に禁止すると決めた。
 これで、カナダ西岸に原油輸出港を確保して、そこまでのパイプラインを通そうと目論んでいた産油地のアルバータ州の計画は、ますます実現から遠ざかる。

 エンブリッジ社は、内陸のアルバータ州のエドモントン市郊外のオイルサンド採掘場からの原油を、「ノーザン・ゲイトウェイ」というパイプラインで、太平洋岸の良港「キティマット」(水深大なので大型タンカーが接岸しやすい)へ送り、そこからタンカーで対外輸出して儲けようと考えていた。この構想が、不可能になる。

 米国へ陸送するパイプライン構想であったキーストーン社の「XL」は先日にオバマの反対で潰されたが、どちらの構想も、沿道と沿岸の住民が、環境汚染を非常に心配していた。
 トルドー首相は選挙前から、パイプライン反対を公約していた。

 アルバータ州は大ピンチに陥るであろう。オイルの生産量はどんどん増えているのに、それを州外に売るパイプラインが増えないというのであるから。

 残る希望は、トランスカナダ社の計画である「エナジー・イースト」。すなわち、アルバータ州から原油をカナダの東海岸へ陸送しようというパイプライン企画である。しかしこっちも見通しはまったく暗そうだ。

 ※マラッカ海峡にインド海軍がインド洋側から機雷を撒こうとするのを、中共海軍には阻止する手立てはない。まして沿岸国のマレーシアも海洋権益をめぐって中共とは必然の敵対関係にあるから、マラッカ海峡の戦時利用など、まったく諦めるしかないという結論に、北京は到達したのであろう。スンダ海峡ならば、インドネシア1国さえ籠絡しておけば、なんとか確保ができると睨んだのだろう。

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 Daniel L. Byman記者による2015-11-16 記事「Why ISIS might regret the decision to go global」。
  この記者はブルッキングス研究所の中東テロ専門家で、記事は『フォーリン・アフェアーズ』に載ったものである。

 ISに参加した外人兵のうち150人は米国から渡り、3000人は西欧から渡っている。
 だからISは単にフランスでテロが容易だったからフランスでテロをした、というのにすぎないかもしれない。

 イラクとシリアでは25万人が内乱で死んでいるが、パリで125人が死んだというニュースの方が世界のマスコミでは大きく扱われる。よってISにとっては良い宣伝になり、落ち込んでいる新兵リクルートがまたはかどるかもしれない。

 なぜグローバルなテロ活動は今では流行らないか。そんな組織を運営していたら、米国その他の通信監視網にかならずひっかかり、各級指揮官がリーパーで爆殺されてしまう。

 ISが、在外の協賛集団に勝手をやらせることにするとどうなるか。その群小集団は必ず乱雑に暴走し、弱者を殺して国際的な不評判を招くだけ。

 キミがISの大蔵大臣だったら、どこに軍資金を分配する? 世界中の敵を攻めていたら、どのひとつにも勝てず、しかも持続不能だろう。

 アルカイダは9-11をやったために米軍を呼び招き、アフガン内の聖域を失った。こんどはISが仏軍のためにラッカを制圧されるだろう。

 ローレンス・ライト記者によれば、アルカイダはアフガニスタンの2001の最後の数ヶ月でメンバーの8割を殺されてしまったそうだ。

 テロリストがいつも犯す勘違い。世界(あるいは敵国政府)は彼らに対して現状でもう最大の反撃努力を払っているのだ、と判断してしまうこと。じつは、世界(あるいは敵国政府)は彼らに対してまだ予告編をチラ見せしているだけ。本編の地獄変はこれから封切られるのだ。

 次。
 2015-11-15 記事「Confessions of an ISIS Spy」。
 デイリービーストがISの新兵教育係にインタビューできたという超貴重情報。
 ISに参加しようとやってきた者には、人の憎み方の教育を2週間ほどこす。シャリアのIS風解釈を教えるのだ。異教徒はISの敵であるがゆえに、殺さなくてはならない。

 非アラブ圏から馳せ参じてくる新兵たちの半数は仏語話者。半数は英語話者である。だから新兵教育も、通訳を同時に2人使う。

 ISのかかわる内戦では、死者の2倍の数の重傷者が出る。彼らは二度と戦場へは戻れない身体になっている。ISの戦死者はこれまで4500人以上出た。

 いちばん勢いのあった日々には、まいにち3000人もの新入りが海外から到着していたものだ。今は50人強である。

 この50人をシリア戦線で消耗させてしまうより、そのまま外地のスリーパーとして海外で騒ぎを起こさせる方が、リクルート戦略の上からは得なのではないかと、最上層部は考えるようになった。

 IS内部では、誰も戦友のパーソナル・ヒストリーを詮索しない。名前すらも訊ねない。全員、「アブなんとか」にきまってるんだから。誰かが他人の細かな詮索をしはじめたら、それは究極のレッド・フラッグ。スパイ査問なのである。

友好は金とひきかえには達成されない。「友好」を売ることに成功した側は、さらに「友好」を買わせることができるからである。

 Daniel L. Byman記者による2015-11-15記事「Five things to know about the Paris attack」。
  ISは2014に登場した。それ以前には存在しない。

 あきらかに今回は末輩のローン・ウルフが思いつき的にやらかした反抗ではない。欧州を襲った初めての組織的かつ計画的な、同時多発大量殺戮テロである。

 過去数週間で何が起きているか。まず、ISはイラクのSinjar市をクルド部隊のために追い出されてしまった。たいへんな不面目である。

 他方、ベイルートのシーア派居住区(おそらくヒズボラの司令部所在地)で自爆テロがあり、40人以上死亡。ヒズボラはISの不倶戴天の敵である。

 またシナイ半島上空ではロシア民航機が空中爆発して224人死亡。※この爆弾は貨物室内の気圧変化で安全装置が解除され、携帯無線で起爆されるものではなかったかと思う。あるいはデジタルタイマーで安全装置が解除されて、気圧がトリガーになるものか。

 フランス政府は1980年代にはテロリストに甘いところがあった。しかし1990年代にアルジェリア人がパリでしきりにテロをやらかしたので、以来すっかり対テロ闘士に変貌して今に至る。

 フランスは「世俗政治」(脱教会)を堅持する国体であるのが誇りである。たとえば女の「ヴェール」着装は許容しないし、他方で下品な宗教攻撃漫画を擁護する。

 ISは義勇兵をすこしでも欧州からイラク+シリア戦線に多く結集したいと思っているのであり、わざわざ兵隊を欧州へ送り出したりはしていない。

 せっかくできたすばらしい「カリフェイト」から異教徒圏へ逃げ出すような「難民」どもは、宗教的に大罪を犯しているのだとISは宣言している。
 ※つまり今回の犯人はシリアから派遣されてきたものではない。

 こういうテロを事前に警戒しようとしても、封殺は無理。フランスはちゃんと警戒してましたから。

 米国内にはもともと反政府的なモスレム人口はほとんどいないので、フランスのケースが米国にすぐ波及するとは思わん方がいい。

 ※日本で警戒するとしたら、アルミ蒸着の袋に水素を充填して導電性ワイヤーで相互に結束した多数の風船を、山の中の原発送電線の真下で放球する対物破壊テロ。2015-11-4に河南省鄭州市で起きた事故は、はからずも、アルミ蒸着水素風船は多数が結束されると高圧送電線を破断させられるだけの威力があることを立証してしまったから。

 次。
 Bob Owens記者による2015-11-10記事「Military Wants On-Base Concealed Carry, Will Likely Get It」。
  テネシー州のフォートフッド基地内で2009にイスラム信者兵による乱射事件があったことはいまだに米軍の心掛かりである。この種のテロの再発をふせぐために、基地内では、有資格の将兵に「拳銃」を常時携帯させてはどうかという意見がある。米陸軍内ではその意見は強く、連邦議会内でもこれを支持する人々がいる。

 ※パリ事件は、この法案の追い風になるだろう。海外の米軍基地でも、みんな拳銃を常時携帯するようになるかもよ。ダッジ・シティかよ!

 ※余談。 Bill Hayton という国際法に詳しい人が 2014年に『The South China Sea: The struggle for power in Asia』という参照価値の高い解説書を出してくれているらしい。スプラトリーの問題はそもそも台湾の国民党政府が最初に種を播いたんだという経緯も正確に詳しく紹介されているようだ。これは訳刊されないのだろうか?

オペレーション・オトモダチ

 ストラテジーペイジの2015-11-9記事「NBC Weapons: The Embarrassing Secret Of Dirty Bombs」。
  通常爆薬の周りを放射性物質で包んだ「ダーティ・ボム」。こいつが現代のテロに最も適している理由は、毒ガスや病原菌よりも殺傷力があるからではない。大衆が「放射能」という言葉を「塩素」や「炭疽菌」という言葉よりも恐れてくれるからなのである。
 特にラドンごときで大騒ぎする現代のアメリカ社会には、この脆弱性がある。

 プルトニウムのような高レベルの放射性物質はよく警備されている。が、低レベルの放射性物質となると、どんなチンピラでも盗み出すことができ、じっさい、世界中で盗まれまくりだ。
 テロリストがこれを少し集めて火薬の力で戸外で吹き飛ばせば、風にのって放射性物質の微粒子が数千ヘクタールに拡がるだろう。その放射能が誰かを殺すことはないが、パニックは毒ガスの何倍にもなってくれるのだ。
 ※サリン事件のとき、東京の地下鉄は除染後にたちまち復旧した。しかしあれがもし低レベル放射性物質を使った「ダーティ梱包爆弾」だったなら? 東京の地下鉄は半年以上、止まっていたかもしれない。

 核兵器の使用を森林大火災だとするならば、ダーティボムはマッチ1本に火をつけるような行為だ。それは実質、無脅威だ。しかし、大衆とマスコミにとっては右往左往する価値がある。

 こんにち米国政府は、放射性物質を取り扱う労働者に、年に5000ミリレム(mrem)を超えた被曝をしないようにせよと求めている。

 米国内でダーティボムが爆発した後、現場には放射線量計が常置され、復旧後、そこで働く者、立ち入る者たちの被曝量がカウントされるだろう。そしてある人物のカウントが累積5000ミリレムになったとされたら、もうその人は、年内は、そこへ近付くことはゆるされないのだ。

 ながらく、米国では人々は自然に年に160ミリレムの放射線を浴びていると考えられていた。しかしその後、ラドンガスが住宅床下などに滞留することがあると知られるようになり、じつは年に360ミリレム浴びているとわかってきた。
 それいらい米国では、ラドン濃度の高い地域では住宅の床下を強制換気しなさいと指導される。それをしないと居住者が毎年数千ミリレムを被曝することもあるという。

 強すぎる放射線を短時間に浴びれば人は傷つく。だがそのレベルは、桁が違う。1986年のチェルノブイリ事故の場合、134人の消防士が、7万ミリレム~134万ミリレムを、1週間強の間に浴びた。
 その結果、28名が放射能症で死亡した。

 日本の広島と長崎における追跡調査は、学界を混乱させてきた。というのは、データが示すところ、放射能を浴びた人々の寿命は却って延びたようだったからだ。それは、被曝者のケアが他の人々よりも優先された結果なのかどうか、そこがよくわからないのである。ロシアでの追跡調査が、この疑問に決着をつけるだろうと期待されている。

 レントゲンの胸部撮影は5ミリレムである。太陽光線に含まれる放射線を人は年間に30ミリレム受けている。石造りの建物は、中の人を毎年50ミリレム、被曝させる。毎年10万マイルの距離を飛行機で旅する人は、そのせいで67ミリレム、よけいに被曝している。

 ラドンガスの放射能ごときに大騒ぎしているような米国のマスコミ環境は、ダーティボムを企画中のテロリストにとっては、いちばん好都合である。わずか数ミリレムの増加や減少でも一喜一憂するのだから、簡単・確実に、ある特定のエリアを、その後何年間も人が寄り付かない場所に変えてやることができるだろう。

 過去に米露は合同で、ロシアの僻地を使ってダーティボムを実験している。そこで、さまざまなタイプの粒子の飛散パターンと、効果的な除染方法について計測・検討された。
 この実験の結果は、テロリストを利口にしないために秘密扱いになっている。だが、漏れ伝わるところによれば、あっと驚くような新知見は、特に得られてはいないそうである。
 ※このような記事が出るのは、イスラエルに対するダーティ・ボムのプロットがあると偵知されたからなのかもしれない。銃後に対する事前啓蒙の記事である。

 次。
 Dan Snow記者による2014-2-25 記事「Viewpoint: 10 big myths about World War One debunked」。
  えらく古い記事だが、ご紹介しよう。第一次大戦の塹壕戦について、現在の英国で人々が抱いているイメージは正確ではない、という話。

 まず、第一次大戦は、最も多数の人が死んだ戦争ではない。
 WWIよりもその50年前の「太平天国の乱」の方が、多くの死人を出していた。すなわち14年間の騒乱で2000万人から3000万人のシナ人が死んだ。これに比してWWIでは非戦闘員も含めて全世界で死んだのが1700万人だったのである。

 また英国人のみの経験に限ると、対人口比率で最悪の戦乱は、17世紀なかばの国内戦。これがWWIよりひどかった。
 WWIではブリテン島の人口の2%が死んでいる。しかし17世紀内戦ではイングランドとウェールズの人口の4%が死んだのだ。統計は無いものの、スコットランドとアイルランドではもっと高率で人が死んだことも間違いがない。

 WWIでは、英国は600万人の男子を動員し、そのうち70万人が死亡。すなわち、11.5%が陣没した。
 また、英国の陸軍将兵の戦死率が最悪だったのはクリミア戦争(1853~56)だった。

 第一次大戦の西部戦線では、英兵たちは、塹壕の中に居ずっぱりだったわけではない。
 長期塹壕生活は兵隊のモラルも健康も破壊するのがあきらかだった。そこで、塹壕に10日間配備したら、次の20日間は、後方の野営地で起居する将兵と持ち場を交替するようにさせていた。

 塹壕も数線陣地帯であるから、敵に近い壕もあれば、遠い後方の壕もある。その最前線の壕には、最大でも連続3日しか、同じ英兵を配置しないようにした。
 もちろん、大会戦のまっただなかではなくて、あくまで閑期中のパターンとしてだが。二段目・三段目の塹壕線であっても連続1ヵ月配備ということはまずなかった。

 こちらから大攻勢をかけている最中には、最前線の塹壕に連続7日ということは稀にあった。しかし通常は会戦中でも1日か2日で最前線配備を交替させていたのである。

 WWIでは、英陸軍の下士官・兵は12%強の戦死率だった。しかし将校は17%である。将校は上流階級の子弟であった。
 特に、小隊を率いた少尉~中尉、中隊を率いた大尉~中尉の戦死率は、高いのが当然だった。最初に塹壕を飛び出し、敵の機関銃に向かって先頭を進むのだから。

 戦死者のうち、イートン校の卒業者だけでも1000名(全員将校)以上いた。これはイートンOBの全従軍将校の2割であった。

 戦時宰相のアスキスの息子も戦死した。また、後に首相になるアンドリュー・ボナー・ローは、WWIで息子2人をうしなっている。アンソニー・イーデンは兄弟2人が戦死、1人が重傷。

 ドイツ軍の指揮官たちは、英軍歩兵を、「ロバに率いられたライオンたちだ」と褒めたという。これは嘘である。アラン・クラークという男による作り話なのだ。WWIで戦死または戦傷した英陸軍将官も200名以上にのぼる。

 いかにもWWI以前、英軍の将校たちは、殖民地戦争しか想定していなかった。
 しかし人間は新環境にはすぐに適応する。彼らもたちまちにして、現代戦争のエキスパートになったのである。

 ガリポリでは、アンザックより英本国兵の方が多数、戦闘している。この事実も認識度が低い。
 そして英軍将兵はガリポリでアンザックの4~5倍、死んだ。フランス将兵ですら、アンザックより死者で上回っているのだ。
 ※ニュージーランダーのことはキウイと言うらしい。豪州人はオージー。

 しかし当時のアンザックの本国人口のすくなさを考えれば、彼らが受けた衝撃の程は、同情ができるだろう。

 第一次大戦の4年間で、戦術は、劇的に変化し続けている。同じことばかり繰返していたわけではないのだ。
 1914においては、時代遅れな騎兵の偵察があり、歩兵は鉄帽ではなく布製戦闘帽をかぶり、支援火力なしで歩兵が強襲を試みていた。両陣営ともに、ライフル銃ばかりを信頼していた。

 しかし1918には、鉄帽をかぶった戦闘チーム〔軽機関銃×1とライフル兵複数〕が、味方野砲の最終弾着に膚接して突撃するまでに進化していた。

 この戦争に勝者はいなかったなどと言う者もいる。
 あきらかに英国はドイツに勝っている。独艦隊は封鎖されていたが、軍港からの自殺的な突出攻撃が命じられるや、水兵たちが反乱を起こした。

 WWI当時のドイツ指導部はヒトラーより利口であった。彼らはベルリンを征服される前に降伏したので、「じつは負けてない」という戦後宣伝が、可能となったのだ。

 ベルサイユ条約は、過酷とはいえない。
 ベルサイユ条約がドイツから剥奪したのは、領土の1割であった。そのドイツは、当時、欧州一、カネモチな国であった。
 普仏戦争でフランスから資源豊富な2州をもぎ取った行為にくらべたら、なんでもない。
 ベルサイユ条約が過酷であるというイメージを定着させたのは、ヒトラーの宣伝である。

 西部戦線の塹壕地帯では、英兵たちが享受した給養はすばらしかった。英兵は毎日肉食した。本国では配給システムで肉が希少品だったときにである。前線では1日に4000カロリーがふるまわれていた。
 また英兵たちは、平時の本国ではありえないようなセックスの自由も堪能したのであった。
 総体に、英国人は、第一次大戦を、楽しんだのだ。※このような記事がネットでリバイバルされる理由は、ロシアとの第三次大戦が近付いているようなので、銃後を啓蒙しておこうというのかもしれない。ちなみに露軍は過去、いっぺんも、米軍と正式の戦争をやったことがない。欧州の古くからの大国として、これは稀有である。

DARPAの解説本が出たようなので、ぼやぼやしないで訳刊すべし。

 ストラテジーペイジの2015-11-4記事「Space: Russia Goes On The Offensive In Orbital Space」。
  2015年前半某日、ロシアの軍事衛星1機が、米国の民間用インテルサット衛星(現在75機あり)のうち2機に10kmまで異常接近した。

 そこで調べてみたら別のロシア衛星2機も、そこまで近くはないものの、米国の衛星に意図的に接近する挙動を示していた。

 これについてDODは露当局へ問い合わせたが、いまだに何の返答も無い。(2014-9に打ち上げられたロシアの軍事衛星が、米国の通信衛星に異常に接近する機動をおこなった。これについて米国がロシアに2015-10-6に問い合わせたことは、10-21のストラテジーペイジに出ている。)

 ちなみにインテルサット衛星の多くは安価なロシアのロケットで軌道投入されたものである。

 近年、インテルサットの運用会社は、その搬送回線を、商船会社および海外に展開中の米軍司令部に売ることが多い。彼らは衛星回線でインターネットする必要があるからだ。軍の利用内訳は、作戦中の重要通信のためではなくて、兵隊(水兵)と家族との間の電話用とかが多いが、時には重要情報(たとえば最新海図)のやりとりもあり得ることは無論である。

 米海軍の艦艇には、1.3m皿か、2.7m皿がつくようになった。これは衛星が中継してくるUAV動画を受信するためのパラボラアンテナである。米海軍は2010年にインテルサット社からバンドワイドスの半分以上を買う契約を結んでいる。

 1個の空母機動艦隊には8000人の水兵が乗組んでいる。彼らが、陸上で生活しているのと同じくらいの快適なインターネット環境を、艦隊勤務中にも洋上でエンジョイできるのかどうか。このことが、優秀な水兵を募集する上で、きわめて重要だと、米海軍上層部はとっくに気付いている。だから、今回の「能力見せつけ事件」は、米水兵のロシアに対する敵愾心を煽ったであろう。

 次。
 Tom Rogan記者による2015-11-1の新刊紹介記事「Review: Annie Jacobsen著『The Pentagon’s Brain』」。

  DARPAの本拠はヴァジニア州のアーリントンにあり、このごろの年間の予算額は30億ドル前後である。

 DARPAの前進はARPAといい、1958に設立された。
 それは1957のスプートニクショックが引き金だった。

 1960に、「ソ連が1000発のICBMで先制攻撃してきた」という誤警報事件があった。これは長距離レーダーが月を誤認したもの。※このエピソードは軍事通なら皆知っていること。

 ベトナム戦争中は、DARPAは心理戦研究や枯葉剤開発を促進した。
 そしてインターネットも彼らがつくった。

 本書後半の、対ゲリラの道具開発ものがたりは興味深い。
 2マイル先から爆弾の「臭い」を探知する技術。
 虫サイズのマイクロ・ロボット。
 ※あまりあっと驚く新情報は書かれてないような感じだが、DARPAの入門者用解説書が本邦にはこれまで1冊もないのだから、さっさと翻訳して防衛省が責任もって配布しなきゃダメでしょ。ビジネスばかり先行して。

 ついでに、以下、さいきん読ませてもらった新書2つについて。
 多田将氏著『ミリタリーテクノロジーの物理学〈核兵器〉』(2015-7初版)は、他著では得られない核兵器の関係の情報が多数、物理学的に解説されていて、しかも読みやすいという奇書。たとえばW88の革新性の意味を、わたしは初めて絵的に承知できました。

 施光恒氏著『英語化は愚民化』(2015-7初版)は、痛快な政府攻撃本であると同時に三木谷浩史氏攻撃本で、その趣意には全面同意したい。1971年生まれの著者にこうした本が書けるのだという事実がまたわれわれを心強くさせる。
 0歳児や1歳児を育てるときに、わたしたちが自然に使う言語は何か。それは英語ではないはずだ。ふだんの日本語でなくば、わたしたちは、自分の子供も防衛できない。
 日常言語は、あるグループが他のグループから防衛するためにも、差異化されている。言語は防衛の道具なのだ。
 もしも楽天を含めた日本のネット通販のフォーマットにおいて、説明も記入も日本語は排除される新ルールとなったらどうなるか? 楽天の通販ビジネスはアマゾンによって即日に駆逐されるはずだ。三木谷氏には、日本語の防護陣地によって外敵から守られているおかげでかろうじてじぶんのビジネスモデルも成立しているのだという自覚は、ない。
 われわれ人間は、カラスの顔を1羽1羽弁別できない。ところがカラス同士の世界では、それは簡単なことのようなのである。これもカラスにとっては言語の安全保障なのだ。もしカラスに個体IDの名札をつけさせることに成功したら、その人間は、いつでもカラスを絶滅させることもできるのだ。
 陸軍将校は外国語を学ぶ。それは、敵の謀略に対抗するためには敵の言語に詳しくないと国家も生存できないからだ。米軍特殊部隊員やCIA工作員も、必死で特殊外国語を覚えようとしている。言語の防壁を突破すれば、ゲリラの外堀は埋まったのである。
 非英語圏におけるグローバリズム唱道者は、グローバル戦略の最も古い創始者であるマハン(米人)とマッキンダー(英人)を再読熟読した方が良い。特にマッキンダーは、ブリテン島内の地方都市が、首府ロンドンに対する単なる人材供給基地になってしまっている現状を大問題だと憂慮していた。一小都市の中にすべての自己実現の可能性(ひらたくいえば職業選択)がフルセットで揃っていたから、古典古代期のギリシャ都市文明やイタリア都市ルネサンスは花開いたのだ――というのが、マッキンダーの結論である。

資料読みに人生の時間を捧げるのが法学徒の苦しみなんだよな~と久々に痛感した記事ですた……。

 Jonathan G. Odom記者による2015-10-31記事「Why US FON Operations in the South China Sea Make Sense」。
  豪州にFONに反対する中共工作員が巣食っている。サム・ベイトマンとかいう曲学阿世だ。こやつの宣伝文に論駁しなければならない。
  ※記者は米海軍の中佐で法務専門。中佐といえばバリバリだよ。

 ベイトマン博士は、ワシントンが南支那海で何について抗議しているのか不明確だ、などと文句をつけている。
 不明確な戦略を採っているのは北京だ。中共政府は「U形線」に主権があるあると叫びながら、その「U形線」の座標を絶対に明言しない。

 国際常設仲裁法廷もこの点で中共を非難している。すなわち、シナはかつて「ナイン・ダッシュ線」の定義を公示したことがないではないか、と。

 中共はスプラトリーに主権があると叫びながら、そのうちのどの島がEEZの起点となると考えているか、どの島が領海の起点とはなってもEEZの起点とはならない無人岩礁だと考えているか、どの構造物が500m安全距離の起点とはなり得ても領海の主張はできないものであるか、一度も公的に見解を表明したことがない。

 中共が1992の領海法(国内法)を宣言したときに、スプラトリー諸島には「ベースライン」を設定・公示していない。UNCLOSの「アーティクル16」はそれを要求しているのに。

 米海軍が砂盛島の12海里内を通行した後も、あいかわらず中共政府は、スプラトリーのどの島がEEZ起点ではないのか、また、どの島が領海起点ではないのかを、明瞭に示さなかった。

 ベイトマンは、北京に向かって「それらを明瞭に示せ」と要求するのが、先であろう。

 南支那海には三種類の国際紛争が存在する。
 一、島嶼領土についての対立主張。
 二、領海やEEZについての重複クレーム。
 三、法外で行き過ぎた領海およびEEZの主張。

 この第一型の紛争には、国際慣習法が適用されるが、第二型と第三型の紛争には、国際海洋法が適用されるのである。

 米国は、第一型の紛争には、米国が一方の当事者でない場合には、片方の肩を持たないというのがポリシーである。

 そして米国は、第三型の紛争には、常にFONをぶつけてきた。

 パラセル諸島の紛争を例にとろう。
 パラセル諸島については、シナ、台湾国、ベトナムの3者が領有を主張して対立している。

 のみならず、この3者はいずれも、パラセル諸島周辺海域での他国艦船の自由航行を、国際海洋法を超えて制限するぞという、「第三型の紛争」を引き起こす主張を維持している。
 だから米海軍は時折パラセル群島の海域でFONをやってきた。すなわち誰かの領海であろうところの範囲内を軍艦で無害通航する。3者に対して、国際海洋法を超えた勝手な主張など受け入れないぞという米国の意思を同時に公平にデモンストレートしてやっている次第だ。

 尖閣の場合はどうか。この場合、米国は、領土主権については日支どちらの肩ももたない。しかし尖閣のまわりの海域に、国際海洋法を超越した航行規制を施行せんとする国(中共)に対しては、米軍はFONを実行する。

 ちなみに尖閣諸島の周りに日本政府は、領海基線を直線的に引いたものを公示しているが、この線引きの一部分については、米国務省は、納得していない。
 それはさておいて、日本政府は、この尖閣の領海やEEZについて、国際海洋法を逸脱した主張はしておらず、また国際海洋法にない余計な規制を、他国に対して強制しようともしていない。それを米国は嘉しているのである。

 他方、2012-9に中共が尖閣のまわりに線引きして公表した直線的な「領海」基線は、国際海洋法を甚だしく逸脱した流儀であった。

 そこで米国務省は2013-3に、中共に対し「外交上の申し入れ書」(demarche)を手交し、中共の主張する尖閣周辺の領海基線を認めないと通知した。

 その申し入れ書にいわく。米国政府はどちらの領土主張の肩も持たない。しかし当該島嶼の領有の主張とは無関係に、国際法は、当該群島の周りにこのような直線的な領海線の引き方は認めない――と。

 したがって米軍艦が尖閣のまわりでシナ側が宣言した勝手な領海を横切るFONはあり得るけれども、それは尖閣の領有について日支どちらの肩を持つことを意味しないのである。

 FONについては米国防総省は年次報告書(DoD Freedom of Navigation report)を公表している。それを見れば、FONは中共を狙い撃ちしてはおらず、同盟国の主張する「領海」に対しても実施されていることがわかるだろう。
 米国のFON方針は1970年代に固まった。しかし早くは1961年にフィリピン政府を牽制するためにFONをやっているのだ。

 フィリピンは2009年に、またベトナムは2012年に、それぞれ国内法を改正し、それによって、それ以前の国際法を超越した両国の海洋主権主張は、かなり穏当に適正化している。

 FONは、「米国はそれを黙認はしませんよ」というデモンストレーションである。黙認というのは国際法上、重大な不作為になってしまうのである。

 紛擾のきっかけを作っているのは誰か? 中共は、その国内法により、領海内の他国軍艦の無害航行を禁ずるとした。

 しかしUNCLOSの「アーティクル24」は、臨海国は外国艦船の無害通航の権利を実質制限するようなマネをしてはならぬ、と明言している。

 法曹家ではないベイトマンは知らないようだが、国際法の解釈や適用の流儀については、「条約の法についてのウィーン会議の決定」というものがあるのだ。

 条約の特定の条款が両義的だったり不明確だったときは、条約交渉の過程等を参酌しろということになっている。

 その国際法の当初の目的、当初の意味、その文脈等を逸脱して勝手な新解釈を唱えることは、国家には許されていないのだ。

 EEZはセキュリティ・ゾーンには転化し得ない。そうさせてはならない。これはUNCLOSの協議中に確定している原則である。中共はそれに真向から違背している。

 UNCLOSは、「領海」中で他国艦船が臨海国の国防や安全にかかわる情報収集活動をしてはいけないとする一方で、EEZについてはそうした活動は制限していない。

 UNCLOSは、無害航行権を享受するのは商船だけでなく、「オール・シップス」、すなわち軍艦が含まれるとしてあるのだ。

 水上軍艦が他国領海において無害通航を実施するとき、その領海主権国政府に対して事前に許可を求めたり、事前に通知する義務は無い。この解釈も、1984のUNCLOSの議事録に、トミー・コー議長(シンガポールの国連大使)の発言としてハッキリと残されているのである。

 ただし「アーティクル18」は、無害航行権を享受する艦船は、止まらずにサッサと通行してしまわなければならぬ、と釘を刺している。
 が、国際法学者のピート・ペドロゾの言う如く、UNCLOSは無害航行する艦船に、領海縁A点から領海縁B点まで直進針路を保てとは要求はしていない。

 アーティクル19によれば、無害航行する軍艦は、臨海国に対し、脅迫や、力の行使をしてはならない。臨海国の通信システムに割り込んでもいけない。

 シナ海軍は、米国(グァム、ハワイ)、日本、比島、マレーシア、インドネシア、そしてインドのEEZ内で繰り返し、軍事行動を続けてきた。

 UNCLOSは、領海基線を直線化するのは例外的な場合に限るとしているのに、中共はその本土の領海基線をむやみやたらに直線化して主張し、堂々とUNCLOS精神を蹂躙している。

 「島嶼国家」についてのみUNCLOSは直線的な領海線を許可しているのに、大陸国家である中共はパラセルと尖閣をも直線で囲んでいる。これは違法である。

 UNCLOSは接続水域については、4つの目的に関してだけ、他国艦船に強制法執行できるとしている。すなわち、収税、移民、検疫、関税。しかるに中共は、「国防」の目的で他国艦船を接続水域で排除しようと努めている。

 UNCLOSは、EEZを、主権国が資源に関する保護ができる海域としているのに、中共はEEZでの他国艦船の全活動を禁じようとしている。

 UNCLOSの批准のあとになって尖閣に直線領海線を引き、また東シナ網にDIZを宣言するなど、次々と揉め事を引き起こしているのは中共だけである。

 ※先日のFONはその後の米政府のリークが非常に下手を打っている。というのは「無害通航」という余計な言葉を出してしまったからだ。あの砂盛島は領土ではあり得ないのだから、そこに領海もEEZも生じない。したがって米軍艦が501mまで近付いて軍事演習しようが艦載ヘリを飛ばそうが自由であり、さらにはP-8が高度3000mくらいで真上をフライパスしても何の問題もない。というか、そこまですることによってはじめて米国は「砂盛島を領土とは認めない」という意思表示となったはずなのである。「無害航行」という言葉を出したら、砂盛島に中共の主権があると暗に認めたようなものではないのか?

海上には「ウェイポイント」がない。ロシア製巡航ミサイルはウェイポイントが頼りだと判明した。結論。シナ製対艦ミサイルは、遠距離では当たらない。

 Christopher P. Cavas記者による2015-10-31記事「Navy Chiefs Talk, New Details On Destroyer's Passage」。
  米下院のシーパワー分科会の委員長、ヴァジニア選出共和党議員のランディ・フォーブズは、同盟国海軍も砂盛島12海里内でFON作戦をすべし、と語った。

 10-30に海軍ソースが明かしたところでは、『ラッセン』は火器管制レーダーを停波し、艦載ヘリも飛ばさなかった。「無害通航」を印象づけるため。

 また、『ラッセン』を上空から援護した哨戒機のポセイドン(1機)は、砂盛島の12海里内には入らなかった。

 また米海軍ソースいわく、『ラッセン』を追尾してきた中共の軍艦複数は、終止、十分な距離を保ち続けた、と。
 砂盛島から1隻の民間船が離れて『ラッセン』の前を横切ったが、距離は十分にあり、『ラッセン』に変針変速の必要はなかった。

 11-3には世界周航中のシナ軍艦3隻がフロリダ州のメイポート海軍基地に入る。これは米国大西洋岸に迎えられる最初の中共軍艦である。

 11-3には、米太平洋コマンドのハリス司令官(提督)が訪支する。
 また、数週間以内に、2隻の米駆逐艦がシナの港に入る。

 10-29にはハーグの常設仲裁裁判所がフィリピンの申し立てを受理した。結審するのは来年だ。

 次。
 Mark Stout記者による2015-10-30記事「Trans-Atlantic Bandwidth: Then and Now」
  ロシアは欧州で第三次大戦になったら北米東海岸の海底ケーブルを全部切ってやる、と、特殊工作船で脅した。NYTの特報。今でも大容量通信は無線ではなく有線頼みだから、これはアメリカ軍にとっては痛い。

 そこで、ジョナサン・ウィンクラー教授のタイムリーな新著『Nexus: Strategic Communications and American Security in World War I』を見よう。
 これによると、WWIでUボートは、英国、ポルトガル、ジブラルタル、アゾレスの近くで海底ケーブルを切断した。

 1917の夏からUボートは特殊なケーブル把握&切断器具を装備して、1918-1中旬から切断作戦を展開し、1918-9までそれを続けた。

 さかのぼると、1917-2-1にドイツが無制限潜水艦戦を開始。
 2-3に米国は対独外交関係を断絶。
 2-7にさっそく英国郵政省は、フランスに派遣される米軍のためにどれだけの電報通信量を提供できるか調査した。

 その時点で大西洋横断ケーブルは17本あり、うち2本はドイツに上陸する線であった。
 米軍と米本土の連絡に使えるのは7本だとわかった。それでだいたい往復ともに1週間に7.8メガバイトの文書通信ができるとも。

 ※シナ軍と戦争になったときは、日本のUUVは、シナ沿岸の海底ケーブルを全部、爆破&切断するだろう。あたりは機雷だらけにもなるので、戦後も復旧はできない。失業シナ人は、ネットで憂さ晴らしすることもできなくなる。ご愁傷さま。

 次。
 David Hamon and Christine M. Leah記者による2015-11-1記事「Australia’s Submarines: The US Option」。
   前のブッシュ政権の高官ヒュー・ホワイトが、米海軍の『ヴァジニア』級SSNを複数隻、豪州にリースすればいいじゃん、と新聞に寄稿して提案している。が、キャンベラ政府は、米政府がそんな話を認めるわけはなかろう、と判断している。

 蒼龍級で話が進んでいるが、日本なんかと軍事同盟して将来の不安はないのか、豪州人には?

 『ヴァジニア』級ならばトマホーク・ミサイルがいっしょについてくるので、豪州の対支オプションは厭でも好転する。

 乗員の一部を米海軍から派遣して、共同運用としするのもいいだろう。

 南豪州には核リアクターや原子力産業への反対志向は無い。どんどん投資して拡大しているさいちゅうである。
 すでにキャンベラ政府はウェスチングハウス社と新工場建設の合議に入っている。

 なによりもリースは時間の節約になる。
 無人潜航艇の技術がこれから急速に進歩すると、豪州海軍が蒼龍級を就役させる頃には、有人潜水艦などまったく時代遅れになっているかもしれない。リースならば、このリスクを回避できる。

 日本は豪州に気前良く技術を移転しないだろう。しかし米国は直近の過去、英国の自前の原潜のために相当の技術移転をしてやっている。

 次。
 James Holland記者による2015-10-31記事「A Lot of What We Think We Know About World War II Is Wrong」。
   著者自身による新刊紹介だ。『西方の戦争――1939~1941のドイツの勃興』という新著。

 著者のジェイムズ・ホランドが数年前、英陸軍の参謀学校にて、小火器展示室を見せてもらっていたときだ。連合軍が「スパンダウ」と呼んでいたドイツのMG42軽機があったから、わたしはそれまで得ていた本の知識から、「これ、WWII中の最優秀機関銃ですよね」と喋ってしまった。
 すると英人の案内役は「それ、誰が言ったんです?」とツッコんできた。

 ジョン・スターリング君は説明してくれた。MG42はサイクルレートが高すぎてバレルがすぐに過熱した。それに、命中精度が高くない(これはホランド自身もあとで実射してみて確認をした)。製造単価はベラボーに高い。各部の設計はオーバーエンジニアリングであり、その反面、わずかな追加で取扱いが格段に容易になる、いくつかの親切設計が欠けていた。

 MG42のチームは、おびただしい実包を携行せねばならず、かつまた、予備銃身6本を用意しておかなければ会戦に臨めなかった。バレルは過熱ですぐにダメになるからだ。
 ※7.92ミリ実包はただでさえ重いのに、それを毎分1200発発射可能なのだから、弾薬箱がいくつあっても足りない。数十kgある弾薬箱の重さというものは、持って運んだ人間でないとわからない。

 この予備銃身を仔細に調べると、「検品係のポンチ」が1本につき複数個、刻印されているのがわかる。ドイツ人は、国家総力戦のさなかに、「工程を簡略化して人と時間を節約する」ことには頭を使わなかったのだ。

 ダマスカスに向かう路上でパウロが目から鱗が落ちて回心したように、わたしは目が醒めたのである。

 そこであらためていろいろ調べなおしてみたところ、ドイツが造ったものは、戦車もガスマスク・ケースも兵隊の制服も、なべて「オーバーエンジニアリング」であることを知った。

 フライブルクのドイツ軍アルヒーフには、1941-12にヒトラーが書いたメモが保存されている。そこには、「自今、われわれはこのような完全で審美眼に堪える兵器を製造することはやめなくてはならない」とある。すなわち、その時点までは、ドイツではそういう兵器ばかりを量産していたのだ。

 しかしヒトラーの意向はその後も反映されてはいない。
 パンター戦車のためにポルシェが設計した、6速油圧変速セミオートマチック・ギアボックスも、遠い前線での整備には向いていないものだった。

 米軍のシャーマン戦車は人力4段変速で、量産性も整備性も良かったのに。
 ※パンターをあげつらうのならばロシアのT-34と比較しないとね。あれはT-34の対抗馬だったんだから。それがどうしてディーゼルを模倣しなかったのかというと、それはドイツに航空優先のエンジン量産政策があったからでしょう。

 英国はWWII中に13万2500機の航空機を量産した。これはドイツよりも5万機多いのである。
 なぜそうなったか?

 英国政府は、英国内の成人男女を動員して配備する先として、最優遇するセクションを、陸軍でもなく、空軍でもなく、海軍でもなく、「航空機製造工業」としたからである。

 ドイツ陸軍は規模が大きすぎて、完全機械化は無理だった。WWIIにおいても、馬や徒歩移動にかなり頼っていた。英陸軍は、兵員数を抑制し、そのかわり、完全に機械化していた。

 ドイツの軍需工場には、捕虜や占領地住民が送り込まれた。その作業パフォーマンスは、悪かった。

 WWII中のUボートの威力。1940年において、英国貨物船1万8772隻が大西洋を運航し、そのうちUボートが沈めることができたのは127隻だけ。0.7%であった。WWII全期をトータルしても、Uボートが撃沈できた大西洋の敵性貨物船は、総量の1.4%であった。

 ドイツは、新たな占領地には占領軍を配さねばならず、それは大量の戦争資源を継続的に要求した。

 チュートニック/チュートン人という言葉は「効率」と結び付られる。しかし事実は、そうでもなかったのである。
 ※エマニュアル・トッドやマッキンダーに反論します、というわけか。

「読書余論」 2015年11月25日配信号 の 内容予告

▼防研史料 『航空研究会関係綴 其の一』海軍航本 S7
 第一次上海事変における陸上目標に対する爆撃所見。

▼防研史料 『不発弾処理実施要領書類』S18-7-9
 1000kg爆弾が尋常土にすっかり埋まっている場合、そこから14m以上離れた地下構造物には爆発の被害は及ばない。

▼防研史料 『海軍制度沿革』海軍大臣官房 S15-3-26印刷
 横式爆雷(仮称曳航爆雷)というものがあった。
 S10-4-17、軍艦の15糎砲用の九一式徹甲弾が採用される。

▼『長者一九会十周年記念誌 九十九里浜の語部』H10
 ※ソ連国境に展開した重砲聯隊の戦友会。
 関特演の終了時についての現地実感証言。

▼『水交社記事 Vol.28』M25-10
 届いたばかりの『厳島』のカネー式32センチ砲について、立岩 芳太郎・海軍技手が語る。えらく詳しく、「軍機」についてやかましくなかったとわかる。

▼曽村保信tr.『マッキンダーの地政学 ――デモクラシーの理想と現実』2008、原1919~1943
 ※ずいぶん前に一回、1985版にもとづいてごくあっさりしたメモを紹介したことがあるが、最近のエマニュエル・トッドらのドイツ脅威論の源流を確認するため、今回、再読した。

▼『海軍 第四巻 太平洋戦争への道』S56 ※途中まで。
 ドイツの島を日本の委任統治にすると決めたのは国際連盟ではなく、連合国首脳会議の議決によるものだった。それはベルサイユ講和条約の成立前。よって日本がS8に連盟脱退を通告しS10に抜けたときも、これらの統治は国際連盟から委任されたものではないとして占領を続けた。ただしワシントン条約がなくなるまでは、要塞禁止制限は守っていた。

▼経済雑誌社pub.『国史大系第十六巻 今昔物語』M34 つゞき
 ※巻第26の途中まで。
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。

 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。

 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。

 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。