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■ 文庫版『名将言行録――乱世の人生訓』は6月第1週の発売です。
Adam Linehan記者による2016-5-13記事「This Badass Street-Legal Tactical Vehicle Is Unstoppable」。
最新型の軽装甲機動車が市販される。なんと一般公道を合法的に走行可能だ。
カナダのテラダイン社製の4×4、「グルカRPV」の民間バージョンだ。 自重3500ポンド。径7ミリ以下の小銃弾ならば、徹甲弾仕様であっても、防弾鈑で阻止できる。エンジンは300馬力のV8ターボディーゼル(6700cc)。
最高時速70マイル。
トルクは660ポンド・ft。
水深30インチまで渉渡可能。単価は27万8000ドルだそうである。
※PHPから2008年に出した『新訳 名将言行録』(すでに絶版です)は新書フォーマットであったため総文字量の制約がかなりキツくて、192人全員を取り上げるために、全編にわたって不本意な割愛を余儀なくされていました。今回、テキストや改行を最初の草案に近い形に戻して、内容もやや見直し、改めて世に問うことができます。格段に読みやすく、また、面白くなりました。PHP文庫です。
■ You gotta be cruel to be kind.
Henry Sokolski記者による2016-5-8記事「Japan and South Korea May Soon Go Nuclear」。
※記者は「不拡散」の専門家。
2016-4-1に日本の内閣が言った。核の保有も使用も憲法で禁じられているわけではない。
韓国では、与党指導部が、核武装準備のためのプルトニウムの蓄積を急げと主張している。
保守の新聞『朝鮮日報』の2016-2-19記事。原発から取り出した燃料棒を再処理すれば18ヶ月で核兵器が持てるとする。日本は11トンのプルトニウムを再処理して貯蔵している。
原爆をつくるのには、プルトニウムは5kgあればいいとされる。リアクター・グレードのプルトニウムでも、核爆弾にはできる。先進国ならば。
日本はフランスの設計による再処理設備を建設した。まだ動かしてはいない。動かせば、年に8トンのプルトニウムを分離できる。
福島第一原発事故いらい、プルサーマルを燃やしている発電所は日本にひとつもない。だから使い道がない。
日本は米国との合意にもとづき、米国製ウランをこのように再処理できる。韓国人はそれが米国から許されないのが不満である。
六ヶ所村の再処理施設は2018年後半に稼動させる予定。そうなれば韓国人はますます騒ぐだろう。おれたちにも同じことをさせろやと。
中共も、六ヶ所村と同じ再処理工場をフランスから輸入しようとしていて、その交渉が続いている。
もしそんな工場を中共が手にしたら、既にある核兵器製造工場に素材を大量に供給して核弾頭数を急増させることが可能になっちまう。プルトニウムを燃料にする高速増殖炉は、建設費も維持費も軽水炉より高い。だから今のところそれはペイしない。
サウスカロライナ州に再処理工場が建設されている。その予算は超過し、工期は予定よりも延びている。これは米国の発電所にプルサーマル燃料を供給するという目的なのだが、エネルギー省は2月に、この建設を中止すると決めた。連邦議会はこのエネルギー省の決定を支持せよ。こんなものには反対してその予算を断て。
これから米国は超党派で「再処理の集団的休止」を日支韓に押し付けねばならない。その準備は着々と進んでいる。
次。
日本原子力学会誌『ATOMOΣ』(アトモス) 2016-3月号
座談会記事。軽水炉だけだと、100年分くらいしか世界にウランは存在しない。
だからFBRを導入してウラン消費を抑制していく必要があるのだ。エネルギーのアウタルキーのない「持たざる国」には。地球の究極資源としてウランは1700万トン〔これには海水中のウランは考えていない。採算ベースに乗るわけがないと推断?〕。
2005にFBRの電力実証炉をつくって2030年にFBRで商業発電スタートできれば日本はその究極資源の10%しか使わないで済む――と考えた。シナ、インド、ロシアが軽水炉をばんばん輸出する。ウランはすぐに足りなくなるのはあきらか。
もんじゅ を止めると、30年後にはシナ製FBRを買わざるを得なくなる。ウランがなくなってしまうから。
オイルショックならぬ ニュークリアショック。FBRの実用化には30年かかる。今から前に進まないと間に合わない。
東海大の場合、工学部のなかで原子力関連学部が最も人気が低い。機械や電気に行けなかった人がやむなく原子力に来ている。
ふげん は動燃が開発した新型転換炉の原型炉。国は1995にその研究をやめた。電力業界が、高コストを理由に、大間に新型転換炉の実証炉を建設することを拒否したから。
これはナトリウム漏れ事故の前。
すでに冷戦がおわり、ウラン需給は緩んでいた。価格が上がらなくなっていた。1995から電力が自由化され、業界には料金値下げの強い圧力が……。
とても研究開発コストは負担していられない。FBRの研究開発からは、メーカーが次々に抜けた。日立、東芝、富士電機。皆、FBR要因を他分野へ配転した。今残っているのは「三菱FBRシステムズ」だけ。ただし彼らの狙いはもんじゅの次期以降の未来炉の研究にある。
電力業界も経産省も、本当はもんじゅをやりたくない。
世界では今、ロシア、シナ、インド、フランスがFBRを開発している。
また、米国が、韓国のFBR開発を応援している。なぜFBRには夢があるか。軽水炉はどんなものをつくっても、元をたどるとGEかウェスティングハウスになっちまう。しかしFBRだと一から十まで純日本製だと主張できるのだ。
核燃料サイクル六ヶ所工場は、19兆円プロジェクトである。それにくらべたらもんじゅの再稼動に必要な2000億円など安い。
もんじゅを廃炉するにも1000億円以上はかかる。日本は「3.11」以降、エネルギー自給率が6%まで落ち込んだ。
もんじゅは2010に試験を再開できたのに、いきなり、炉内中継装置を落とすという大ドジこいた。
2012-8に復旧したが、直後に現在の規制委員会が発足。保全内容・点検頻度の技術根拠がわからない。
メンテナンスプログラムについて本当に知っているのは現場の保守担当と運転斑の人たちだけ。米国はスリーマイル事故いらい、リスクベースのメンテナンスルールを導入した。安全上の重要度が低いものは、「10年おきに検査する/取り替える」ではなく、「壊れたら取り替える」に改めた。
これで人間の注意力を、いちばんあぶないところに集中していられるようになった。書類に書いてあることだけをやっていたら、安全性は向上しない。しかし勝手に「カイゼン」をすると規制庁からは怒られる。
リスクベースとは、たとえば超小規模研究設備でどんな事故を起こそうが人命にかかわるほどの大事故になる道理がない。それならばその運転についてガッチガチのハイペース検査や交換をする必要はない、とすること。大規模設備でも、部分によってはそのような部分がある。そこには注意資源を張り付けない。
リスクベースにしないと、リスクのないところを一生懸命叩いていて、リスクの一番大きなどまんなかの部分は放置、ということになっちまうのだ。
ナトリウムとFRBを扱えるのは、日本では原子力機構だけ。三菱FBRシステムズでも、それは扱えない。
リスクに影響がない部分までイビデンスを証明する書類をつくれといわれたら、保守担当者は書類づくりに忙殺されて、肝心の現場を見に行けない。
グレーディングが必要。開発段階の小規模な炉に、実用炉の絶対安全性を求めることが間違い。
風速93mに耐えるようにしろとか。実力がない人が権力を持つと、瑣末なことを指摘することしかできなくなる。
今日の有識会合というのは文科省の会議。経産省は逃げている。
もしFBRがぜんぶつぶれるのであれば、R&Dは「常陽」でやるほかない。国民がそれに夢をもつことができれば、10兆円だって安い。
本来は官邸で有識者会合を開かなければいけない。科技庁はほんらい原子力庁だったのに、もんじゅのナトリウム漏れ事故のせいで、文科省に吸収されてしまった。
中共の輸出炉は「華龍1号」という。その輸出第一号はパキスタンのカラチ。2015-8にコンクリート打設がスタート。
英国のブラッドウェルB発電所にも今、売り込み中。ただ、これには審査期間がかなりかかる。中共の初の商業路は、泰山I-1だが、その圧力容器は三菱重工製だった。加圧水型。
ベトナムは、原発の着工を2020まで延期した。ふくいちの影響で安全を見直すので。これはロシアから輸入し、ロシア人に建設してもらうもの。融資もロシアから受ける。
※じつは米国人はアジアでは韓国人がいちばん危ないということを知っている。その決定版的な著書が出た。Mark Fitzpatrick氏著『Asia's Latent Nuclear Powers: Japan, South Korea and Taiwan』。
勝手に題を訳せば『アジアの潜在的核武装国――韓国・日本・台湾』となる。本文の記述が重視している順番は韓国が筆頭なので、サブタイトルもこの順番に直すのが妥当だろう。すでに日本国際問題研究所(外務省の天下り機関)がこの著者を呼んで講演させている。
ソースのある「事実」しか、この本には書いてない。
なぜ韓国が筆頭なのかも、事実が語ってくれている。
韓国人は7割が反日であり、6割以上が「核武装に賛成」なのである。
日本と違い、政権与党の国会議員たちが堂々と核武装を主張中である。
近過去にはIAEAやアメリカに隠れて原爆開発研究を着々と進めていた。
アメリカは、もし半島が統一されたら、北鮮の核物質は全部押収する。しかし頭が痛いのは、核知識を持った北鮮人を韓国政府が起用すること。
もし半島が統一されたら、在韓米軍は全部去る。これは決まっている。
ただし韓国は、核実験後のインドが受けたような経済制裁にはとうてい耐えられない。その数値的証明。
米国が韓国へのウラン燃料供与と信用供与を打ち切っただけで韓国経済は終わる。だからアジアで最も核武装したがっている韓国の核武装はなかなか成功しないだろう、というのが小結論。
日本については、もしアメリカが台湾を見捨てるようなことがあれば、日本は核武装するだろう、と予測。
そして、もし日本が核武装すれば、韓国も必ず核武装するだろう……。
すがすがしい本だと思いました。そしておびただしい事実を整理して無駄なく薄い本にまとめる才能に脱帽しました。この本には書いてないが、アメリカ指導層の心配は、韓国が核武装核武装と騒ぐと、それは、中東でイランに対抗して核武装したくてたまらないサウジアラビアの背中を押してしまうこと。これを一番おそれている。
だからサウジをなだめるために韓国人を黙らせようとする。韓国人を黙らせるためには日本にプルサーマル計画をやめさせよう――というのが彼らの短絡した発想なのだ。
このアメリカ人たちの「他者知らず」の行動パターンに、われわれはうんざりするのである。反近代構造であるイスラムと儒教圏人を、近代世界はそもそもリスペクトしてはいけないのだ。リスペクトが却って彼らの近代世界に対するヘイトを育てるのである。それがアメリカ人にはわからない。わからないうちにシナ人にやられてしまうかもしれない。儒教圏人に対しては常に「事実」を以って smash their face し続けないと、近代世界は彼らのために朽廃させられるところまで行くであろう。ケリー国務長官に続いてオバマ本人までが、広島に詣でるとか言ってリップサービスしているのも、そんな下心あっての環境づくりである。
■ FUture Critical Kinetic systEM …… FUCKEM
2016-5-5記事「Spies Worry Candidate Trump Will Spill Secrets」。
1952年以降、大統領選挙の最終決戦に臨むことが決まった、非現役大統領の候補者(ノミニー)には、CIAが極秘情報をブリーフィングしてやることになっている。
すなわち次の任期の無いトルーマン大統領の意向で、共和党の候補に決まったドワイト・アイゼンハワーと、民主党の候補に決まったアドレイ・スティーヴンソンの2人が、CIA情報をじぶんと共有することを許したのが、その始まり。これはトルーマン自身の経験が大きかった。1945にFDRの死によってトルーマンが大統領に昇格したとき、彼はいかに多数の重大事項が副大統領からは隠されていたかを知って、愕然とさせられたのだ。
CIA長官ジェームズ・クラッパーは、ヒラリーとトランプ両候補に機密をブリーフィングするためのチームの選任に、すでにかかっている。問題は、トランプはツイッターでその重大国家秘密をぶちまけてしまう可能性が大きいことだ。
もちろん、大統領が受けるブリーフィングよりも、候補者2名が受けるブリーフィングの方は、内容が「編集」されており、真に機微なところは隠されるのだが。
たとえば、現在進行中である秘密作戦や秘密工作。さらにまた、核兵器に関する情報は、どんなものであれ候補者には伝えられることはない。※日本外務省はこのブリーフィングが待ち遠しいだろう。この場でトランプは、日本についての間違った思い込みをCIAから全否定されるはずだ。しかしトヨタやホンダはそこまで待っていたらダメだ。今すぐ、北米全域で新聞広告を打って正確な情報を周知させたらどうか? 外務省も、日本の米軍用地の周辺の土地レンタル料の相場をさりげなくHPで教示するぐらいの芸当を見せてくれ。不動産屋に理解できる言語は、地価だけなんだから。
■ 「読書余論」 2016年5月25日配信号 の 内容予告
▼陸軍省戦争経済研究班『獨逸経済抗戦力調査』(経研報告第三號)S16-7調整
日本に1部しかない超貴重資料。独ソ戦の勃発を承けて、日本陸軍の頭脳エリートが、ドイツはこれから英米相手に長期戦で勝てるのかという数値予測を試みた。石油統計で何が分かっていなかったかが分かる。▼防研史料 『実験研究経過概要 並 主要航空兵器ノ変遷 爆撃部』
敗戦直後に調製されている総括資料。日本にもしディスカバリーチャンネルのような放送局があったら、こういう史料をネタにして番組を何本でも作れるに違いない。▼防研史料 『爆撃精度向上に関する研究実験実施方策』S16-1-31
▼望月澄男『有坂【金召】蔵』※奥付に刊年が書いてない。
苗字が同じ陸軍の有坂成章とは何の係累でもないけれども、同じ造兵将校なのでよく混同される。こちらは海軍呉工廠の「しょうぞう」さんの一代記である。ところでどなたでもいいから誰か山内万壽治の評伝を書いてくださらんかなぁ……。▼吉長・関根・中川 共著『焚き火大全』2003-1
クルミとカエデの木は、火つきも鈍いし炎も上がりにくい(p.152)。※ということは防火/防災樹として役立つではないか。▼深津 正『燈用植物』1983-6
マレー式たいまつ。木の樹脂(ダマール樹脂)を固めて、その樹脂を木の葉で包み、固く縛ったもの。全長は50センチ弱。きわめて強い光を出し、風の中でも消えない(p.160)。※おそらく水木しげるが戦中にニューギニアで驚いたというのはこれだろう。謹告。今回多忙につき、チビチビ分載しているシリーズは一旦中止。次号以降に再開します。すみません。
◆ ◆ ◆
「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
で、タイトルが確認できます。電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。
ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
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