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司令官が穏健を行動原則とすれば、敵をして歩み寄らすことはできず、味方が士気を阻喪する。/バナスター・タールトン中佐

 Mike Benitez 記者による2016-6-29記事「How Afghanistan Distorted Close Air Support and Why it Matters」。
   昨年、A-10はCAS機として必要であるのでその維持費を都合するためにF-35整備が遅れてもよい……かどうかの論争があり、空軍参謀総長のウェルシュ大将は、「空軍はアフガンで毎年平均2万ソーティのCASを実施している」と数値を出した。

 だがこの数字を真に受けてはいけない。爆弾を投下せずに帰投しても、やはり「CAS任務をしてきた」ということにカウントされているだろうし、そもそもCASでない攻撃を上層部はCASに数えていることが疑われるのだ。CASパイロットなら、皆、知っていることだ。

 地上部隊からの要請をうけて、その要請されたターゲットにすぐに爆弾を落としてやる。これがCASミッションだと思われているが、違う。

 CAS任務は定義されている。固定翼機だけでなく回転翼機による近接対地支援もCASである。ただし敵地上部隊が味方地上部隊から近いところに位置していないならば、それをいくら精密に空爆してもCASではない。そしてもうひとつ。地上の味方部隊の火力発揮や前進(または後退)と、その爆撃が、細部まで緊密に融合連繋していなければならない。

 この定義は1948年まで遡る。そこでは、敵は地上軍だけでなく海軍艦艇の場合もあるとしていた。もちろん味方部隊(または艦艇)からごく近いところに敵が位置していなければならない。その敵を、味方部隊(または艦艇)の火力発揮や運動と緊密一体に連繋するように航空攻撃を加えることが、CASなのである、と。

 今日の論議では「緊密一体の連携」というコンセプトが忘れ去られている。
 アフガン戦争は15年。アメリカ最長の戦争となった。

 アフガンへの大増強が実行された2010年、同地には400箇所の味方軍基地と、10万人の米兵がいた。
 2009年までにJTAC(joint terminal air controller)の人数は、2001年のときより2倍に増えていた。しかしアフガン作戦は、さらにその2倍のJTAC要員を必要としたのだ。

 JTACの人手不足は、アフガンでどんな現象を引き起こしたか。ほんらい、地上の一線部隊に同行してその部隊長のすぐ橫に居るべきJTAC員は、皆、後方の作戦〔航空?〕基地にとどめおかれて、自分自身の目や耳によって敵情を観測することができなくなってしまった。

 衛星リンクでビデオ映像を見ていれば、JTACが最前線に出る必要はないというわけだ。しからば、「緊密な空地一体の連繋」は、それで可能か?

 地上部隊の側も、楽をしたがる。敵ゲリラと間近に対峙する前に、はやめに航空爆撃を要請して、敵ゲリラ(の疑いがある目標)をできるだけ遠くの位置でやっつけてもらおうと考える。「ゲリラに対する予防的な爆撃」が要請されるようになっているのだ。これも、泥沼のアフガン戦争でいつしか定着してしまった米軍の癖である。

 さいげんなしに空爆要請が増えて、空軍のCAS資産は枯渇した。

 記者(F-15Eパイロットの現役少佐である)の2009~2011のアフガンでの体験によれば、CASに飛び立つ固定翼機は、ほとんどアフガンじゅうを飛びまわって3~4箇所にCAS爆撃を加えねばならず、そのため、1箇所の上空にとどまれるのは1~2時間にすぎなかった。
 爆撃要請が多すぎるために、CAS資産が薄く分散されすぎていた。

 2009年から2010年のアフガン大増強期間のCASはひどいものだった。飛行士たちが出撃する前のブリーフィングで、彼らは数箇所の空爆点を割り振られて指定された。ところが、それが実施されることは決してなかった。ブリーフィングのさいちゅうに、任務空爆点の変更が何度もあるのだ。のみならず、待機所から航空機に乗り込もうと歩いている間、座席に座ってこれから離陸しようとしている間、離陸して任務空爆点へ飛行しているさなかにも、任務空爆点の再三の変更が追加で伝達されてきた。そんな有様であった。

 急にCASに呼ばれて現場上空に到着すると、たいてい、眼下には、味方のヘリが飛び交っている。

 そのヘリは、偶然に現場を通り過ぎているだけのこともあれば、我がCAS機と同じ目標を攻撃するヘリである場合もある。ところが周波数が違うので、その味方のヘリとは交信ができない。JATCも、ヘリと固定翼機では別な周波数で統制しているのである。

 空軍と陸軍は、互いに連絡将校を協同部隊に送り込むべきである。

 アフガン北西部のCASは、バグラム基地が担当。南東部のCASは、カンダハール基地と海軍機で分担している。

 米軍は、2002年から2010年のあいだに、無人機の数を40倍にした。主に陸軍が小型無人機を多数使うので。

 いま、陸軍は7000機の無人機を使っている。空軍は300機である。

 次。
 David Cenciotti記者による2016-6-27記事「F-15E Strike Eagles unable to shoot down the F-35s in 8 dogfights during simulated deployment」。
 米国内で、F-35とF-15Eで空戦させてみて、8対0でF-35が勝ったらしいという。
 このF-15Eは、レーダーはAN/APG-82、つまりAESAで、ターゲティングポッドはSniperだったはず。
 しかし「模擬戦」の詳細はまったく不明である。

 次。
 Ed Friedrich記者による2016-6-29記事「At Washington shipyard, subs for recycling stacking up」。
    太平洋岸のワシントン州にあるPSNS(ピュージェットサウンド海軍工廠)。
 ロサンゼルス級SSNの解隊は、米国でも、ここ一箇所でしかできない。
 まず燃料棒を抜き、除籍し、それから解隊となる。

 1971から1996まで62隻のロサンゼルス級SSNが建造された。いまも現役なのは39隻である。完全にスクラップ化が終わったのは9隻だ。

 ロサンゼルス級は、ヴァジニア級での更新が進んでいる。年に1隻のペースで。ヴァジニア級は48隻建造が計画されていて、すでに20隻完成した。

 使用済み燃料は、鉄道によって、アイダホナショナル研究所へ輸送される。そこで特殊コンテナに封入して保管される。

 燃料を抜かれたリアクターの部品は、ハートフォード核貯蔵地へ輸送される。

 この解体工場には、除籍された『Narwhal』という実験的原潜も置かれている。この艦は1969に就役し、数々の秘密ミッションをこなした。当時最も静かな原潜だった。同型艦は無い。
 記念艦にしようという動きがあるので、解体できないでいる。しかし資金は集まらないようだ。

 『NR-1』もここに置かれている。乗員わずか13人の原潜。しかし原潜としては深度記録を持っている。海底に着いたあと、車輪で動きまわることができた。やはり同型艦はつくられていない。
 この艦も1969年に進水し、いらい、さまざまな極秘ミッションを遂行してきた。公式には「就役」したことはなく、したがって海軍の公式艦名もついてはいない。
 2008年に燃料を抜かれ、このPSNSにやってきた。

 ※「けっして引用してはいけない」とAPの支局長が部下に注意喚起したことのある「聯合通信」の与太記事によれば、北鮮艇が12.7ミリ×3バレルのGE製ガトリング銃を装備しはじめたのだと。

エルドアンはEUとNATOがぐらついているので怖くなってプーチンに謝罪した。

 Josh Rogin記者による2016-6-27記事「Russia is harassing U.S. diplomats all over Europe」。
  先日米国務省にて、駐ロシア大使や駐欧州諸国大使が集まってミーティングしたが、そこで知られたこと。
 ロシア官憲が米国大使、米国大使館員、およびその家族をつけまわし、いやがらせと脅しを繰り返している。

 大使主催の公式イベントに招待状なくロシア人が乗り込んできたり、国内メディアを動員して米大使館についてのネガティヴ報道を連発させるなどは序の口。

 米大使館員のアパートに深夜、ロシア情報部の工作員が侵入し、家具を動かし、照明やテレビを点けっぱなしにして、なにも盗らずに立ち去る。これはまず常套的なイヤガラセで、その次の段階では、カーペットの上に排便してある。

 モスクワ市内ではもっと激しくなる。米外交官は自動車のタイヤを切り裂かれ、交通警官も頻繁にいやがらせをしてくる。

 前の駐露大使のマイケル・マクフォールは、常にロシア政府から雇われた「ジャーナリスト」に密着尾行された。通学する子供も情報省職員から尾行された。
 こうしたことはオバマ政権の第一期からすでに始まっている。モスクワ米大使館の駐在武官の家に侵入したロシア情報局職員は、留守中に飼い犬を殺して立ち去った。

 2014のウクライナ侵略以降は、こうしたいやがらせが一層、激化している。
 2011年から14年までチェコ大使だったノーム・エイゼンいわく。プーチンが大統領に復帰してから、彼は「グレー戦争」を仕掛けているのだ。

 現在、欧州に赴任するすべての米外交官には、国務省が、いかにしてロシア官憲のハラスメントに対応するかのトレーニングを施している。
 いやがらせ事件は国務次官のヴィクトリア・ヌランドが掌握するようにしているという。

 マクフォールの家族はマクフォールの赴任中、常時、これみよがしに監視されていた。見張られているということを知らせるのが、彼らの目的なのである。
 ロシアの活動についていろいろ調べて報告しようとする外交官が、いちばん激しく嫌がらせを受ける。

 マクフォールいわく、モスクワのアメリカ大使館は、包囲攻撃を受けている孤立した砦のような状態でしたよ。

 マクフォールいわく、オバマ政権内ではこれに報復するべきかが討議された。しかしオバマ大統領は、類似の報復はしないことを決めた。

 駐米ロシア大使館スポークスマンの言い訳。駐米ロシア外交官が先に厭がらせを受けたので報復しているだけである、と。

 ロシアから欧州諸国へ逃亡した元外交官その他のロシア人がすでに複数、暗殺されている。

 ケリーは3月の訪露で、イヤガラセを止めろとプーチンに直接言ったが、何の改善も見られなかった。在欧の米国外交官たちは、米国務省に、もっとなんとかしろやと迫っている。

 オハイオ州選出共和党のマイク・ターナー下院議員はNATO議会議長も勤めている。ターナーいわく。ロシアがアメリカのパートナーだなどとという虚構をオバマ政権は追求している。しかしロシアの方ではアメリカのパートナーになりたいとは欲していない。ロシア人はアメリカは敵だとみなしている。われわれはこうした関係にこそ備えなければならないのだ。

 ※英国がEUを離脱すると不況から全欧のエネルギー消費は減り、中共の恐慌も加速するので国際油価はますます安くなり、国庫の6割をエネルギー輸出に頼るロシア財政の先行きは絶望的に暗くなるはずである。

シナ元は早く変動為替制に移行しないと安い欧州製品に負けて世界市場から駆逐されるだろう。

 Marcus Weisgerber記者による2016-6-21記事「For Defense Firms, Brexit Could Be Europe’s Sequester」。※日付が謎なのだが、ママとする。

  英国のEU離脱を可とする2016-6-23の国民投票結果が24日に判明したが、欧州の軍需メーカーの株はその2週間前から下がっている。
 6月の前半2週間で、イタリアのフィンメカニカ(今はレオナルドとかいうらしいが)の株は15%安くなり、スウェーデンのサーブ社の株は6%安くなり、フランスのタレス社の株は8%安くなった。
 英国のBAEシステムズ社株とコバム社株は2%安くなり、クィンティク社の株は6%安くなった。ただし投票直前に少し持ち直したが。

 同時期に、米国のロッキードマーティン社株、ノースロップグラマン社株、レイセオン社株は、2~5%上昇している。

 欧州では、企業買収の計画、そして、欧州のどこから何を調達するかの長期計画が、立てられなくなった。
 軍用機や民航機の共同開発も、新規のプロジェクトはこれから2年前後、相談をストップするしかない。

 ※今にして思うとEU予算でカールグスタフの弾薬を大量調達したのは、スウェーデンをEUに引き留めるための政略だったのかも……。じつは英国の次にEUから抜けたがっている国として、スウェーデンが上位に上がっているのだ。ドイツが吸引した難民が向きを変えて自国に集中したりするので、たまったものではないからね。総人口970万の国に毎年20万の貧民が流れ込んだら福祉国家なんて即死するっつーの。スウェーデンがルーマニアやブルガリアからのジプシーにもどれだけ困らされているかは、本日配信の『読書余論』に詳説しときました。ちなみにスウェーデンでは乞食は「合法」。本日電車に飛び込もうかとお悩みの貴男、すぐにスウェーデンへ飛べ!

 米国の大手、ロックマート、ボーイング、ノースロ、レイセオン、そしてジェネラルダイナミクス社は、みんな英国支社/英国工場をもっている。
 なりゆき次第では、それらのオフィスを欧州の別な国へ移転させるだろう。

 エアバス社は、英国がEUから抜けるなら英国内への投資を見直すと発言している。タレス、レオナルド、MBDA社も、英国にオフィスを持っている。
 英国がEUから抜けることで、ドルに対してポンドも弱くなり、またドルに対してユーロも弱くなる。これは何を意味するか? 英国、オランダ、デンマーク、イタリーは、もはや計画した数のF-35は買えないということ。

 しかし、ポンド安、ユーロ安は、第三世界市場への売り込みで、欧州メーカーが米国メーカーよりも価格競争力を持つことをも意味する。
 ※シナ元はドルにペッグしているから、中共メーカーの顧客も欧州メーカーが奪うことができるかもしれない。

 英国の2016国防予算は米ドルにして526億ドルである。

 BAEの会長はとうぜんながら残留を訴えていた。タイフーンの共同開発や、フランスとの無人機共同開発。こういうものができなくなってしまうから。

 次。訃報です。
  Hillel Italie記者による2016-6-24記事「Michael Herr, author of 'Dispatches,' coauthor of screenplay for 'Apocalypse Now' dies」。
  カポーティやノーマン・メイラーと同世代の米小説家。享年76歳。
 ベトナム帰還兵の体験した恐怖を誰も口にできなかったとき、『エスクワイア』特派員だったマイケル・ハーは、『派遣軍』という小説でそれを書いた。

 映画の『地獄の黙示録』と『フルメタルジャケット』の脚本もハーが共同執筆した。

全EU国が思っていること。小国がビジネスのために「大経済圏」を受け入れると、要らない難民が入ってくる。

 Eli Lake記者による2016-6-22記事「Obama Wants to Stop Subsidizing Israel's Defense Industry」。
   アメリカから毎年、安全保障絡みの政府援助資金を受けている国はめずらしくはない。しかしイスラエルは特殊である。イスラエルだけが、その年次援助金の一部を、自国製兵器の調達や開発や軍需会社育成に使うことが認められているのだ。他の国ならば、軍事援助金をアメリカ政府から貰ったら、まずアメリカ製の兵器だけを調達しなければいけないのに。

 イスラエルは、アメリカから貰ったカネの26%もを、自国の兵器産業のために使っている。同格以上のアメリカ製兵器があるにもかかわらず。
 オバマ大統領は、この不合理な慣行をストップしたいと思っている。
 ちょうど、中期援助合意期間の終わりで、改訂交渉が始まっているので、この機会にオバマ氏はネタニヤフにうんと言わせる気である。拒否するなら総額を増額しないと脅して。

 オバマ政権は240億ドルもイスラエルに与えてきた。この金額は過去のどの大統領よりも多い。

 米国の軍需メーカーはイスラエルに苛立っている。イスラエルの兵器メーカーが、次々と、米国の兵器輸出市場を侵蝕している。

 スキャンダラスなのは「アイアン・ドーム」だ。2010年時点でアメリカはイスラエルに毎年31億ドルを与えていたのだったが、この「アイアン・ドーム」をイスラエル軍に調達させるためだとして、オバマ政府と米連邦議会は、それに加えて一時金として10億ドルを気前よくイスラエルに与えたのである。ガザからのハマスのロケット弾攻撃を防禦するためとして。

 政権インサイダーによると、オバマはこの援助には大反対だった。2008の金融危機のダメージでアメリカ国内が困っているときにふざけるなという話だ。イスラエル政府は自己資金でアイアンドームぐらいは楽に買えたのである。
 ※なぜトランプ候補は、オバマ政権によるこれらのイスラエル援助を非難しないのか? まったくダブルスタンダードだよね。

 イスラエルのGDPは、過去10年でほぼ2倍に成長している。いまは2300億ドルくらい。

 そして2015年には海外に57億ドルものイスラエル製兵器を売るようになった。
 特にインド市場への食い込みがめざましい。米国メーカーは、イスラエルのおかげで、巨大なインド市場で儲けることができないのである。

 イスラエルの反論。アイアンドームで得られた知的財産は、すべてアメリカの軍需企業にも提供されるようになっている。これは米国議会が立法してそう決めているのである、と。
 ※「アメリカを亡ぼすものはアメリカ自身+イスラエル」……ということに、ならなきゃいいんですけどね。

 次。
 Franz-Stefan Gady記者による2016-6-23記事「Russia’s Deadliest Subs to Receive New Heat-Seeking Torpedos」。
  ヤセン級新SSGNと、ボレイ(北風)級新SSBNに搭載する新魚雷がすごい。
 フトリャーという大深度魚雷。
 径533ミリの「フィジク」ホーミング魚雷は昨年に装備化したばかりだが、それを早くも更新する予定なのだ。

 いま、テストがキルギスタンのイシククル湖で進められている。※とんでもない僻地の高地の湖である。よほどアメリカに試験データをとられるのが怖いのだな。

 うまくいけば、2017から量産に入る。
 駛走距離50km、駛走速力50ノット、そして深度は400mまで対応するであろう。
 シーカーは、熱探知式だという。

 開発メーカーはサンクトペテルスブルグにある。

 次。
 NYTによる大特集。2016-6-22記事「The New Panama Canal: A Risky Bet」。

 パナマ新運河はサンフランシスコなみに地震のことも考えなくてはならない。しかし考えてない。
 2009に受注企業が決まり、ようやく、完成する。
 第一号船はシナのコンテナ船で、日曜日に大西洋から太平洋へ抜ける。

 こんどの閘門はまったくパナマ政府が発注してつくらせた。
 しかし受注額があまりに抑制されているなど、おかしな点が多々あり、すぐにもぶっこわれるのではないかとNYTは気にしている。

 新運河の閘門は6箇所。そのコンクリートも鉄骨鉄筋も少なすぎる。スペインの応札者が無理をして受注したので。

 また閘門の幅がギリギリの狭さで、操船ミスがまったく許されない。船は巨大化しているというのに。
 タグボート用のスペースすら十分かどうか怪しい。
 くわえて、スペインから納入されたタグボートが酷い性能。
 運河のアドミニストレーターの息子の会社からそのタグボートは購入されているのである。

 ネオパナマックス船が満載で通航するためには、閘門の中に陸水が無尽蔵に再注水されねばならない。ところがパナマにも日照りがある。今は雨水が足りない。だから積荷を減らさないと船底がつかえてしまう。

 米国の小麦農家、大豆農家、そして液化天然ガス産業は、ネオパナマックスをフル活用することでアジアに安価な運賃で商品を輸出できると皮算用していた。
 が、それは怪しくなってきた。ネオパナマックス船は3年くらい前から多数発注されて建造されているというのに。

 ネオパナマックスがダメだとなれば、巨大船舶は皆スエズを使う。それだけだが……。

 旧閘門は扉が1個で700トン以上あった。
 旧運河は、電気機関車で閘門内を牽引してくれた。

 中間にあるガトゥン人工湖が海抜85フィートで最高点。ここまで3段にわけて船を持ち上げねばならない。通過後は、やはり3段の閘門を経て海まで出る。

 閘門は基本的に重力を利用して上げ下げする。

 中共経済の爆発成長の結果、2000年には旧パナマックス船では商売にならなくなってきた。このまま旧パナマを放置すると、北米のエリー運河(五大湖とハドソン川を結んだ)のような衰退が待っていると人々は怖れた。

 パナマの太平洋岸は潮汐の干満差が19フィートある。これに対して大西洋側は2フィートしかない。だから直結はできない。

 パナマ拡張工事を入札で受注したスペイン企業は、その能力が疑われる企業であった。

 二番札の企業の入札価格よりも10億ドルも安かったのである。これでまともな大工事ができるだろうか? じっさい、破綻しかかっている。

 ほんとうは1914年から100年目に新運河を開通させたかったが、この会社にはとても無理だった。

 ベルギーのベレンドレクト閘門が、今は唯一、ネオパナマックスのコンテナ船を通している。そこでの最新型タグボートと比較すると、新パナマの用意したタグボートはチープすぎる。

 ベレンドレクト運河は淡水のみだが、新パナマは海水と淡水が混じり、浮力が刻々変化するので、一層厄介なのだ。

 新閘門は、その囲われた水面面積が、長さ1400フィート、幅180フィートである。
 巨大コンテナ船は、長さ1200×幅160フィート。
 タグボートはタテ・ヨコともに100フィートのサイズだ。
 つまり新閘門ではタグボートの動ける余地はゼロなのである。

 タグボートに頼る方式とするなら、安全性と効率性を実現するためには、1528×200フィートの水面面積が閘門内に確保される必要があったのだ。ネオパナマックスに対応させるために。

 9段に詰まれたコンテナは風を受けると帆の役割をする。12万2000トンのコンテナ船に、タグボートは圧壊させられてしまうだろう。

 欧州の港湾専門家の助言。対策としては、運河の内側に黒色プラスチックのバッファーを貼り付けるしかなかろう。
 「浮き」のフェンダーも役に立つ。

 水先案内人は、すべてを1/25につくった人工湖とタグボートで練習中である。

 海運会社は、ネオパナマックス1隻の通航に、80万ドルの通行料を支払うはずである。
 太平洋側から大西洋側へ行くには、船尾を先にするようになるという。

 セメント配合が少なすぎると、「す」だらけになってしまって、しかも隅々まで行き渡らない。よくない。多すぎると、充填しやすく、塗りやすいのだが、ヒビ割れしやすくなる。

 コンクリートの骨材としては太平洋側から砂や砂利が集められた。しかし太平洋の砂は、骨材としては不適切なのだという。
 スペイン語で「安いものは高くつく」ということわざがある。新パナマはそれを実証するだろう。
 水を入れてみたら、やっぱりあちこちで漏れた。いきなり。
 漏れの原因はしかしコンクリートではなく設計だった。それで、あとからドリルで孔をあけて補強の鉄骨を挿入している。ただし一部分のみ。泥縄。

 日照り続きでガツン人工湖の水位は2016-2月に81.75フィート。その季節としては過去最低に。
 その翌月から、旧運河通航貨物船の積荷規制がはじまり、どんどん強化されている。

 この調子だとネオパナマックスに積載して通航可能な貨物量は、旧パナマックス船よりも少なくなってしまう。船主と荷主は怒るだろう。

 すでに6月9日(木)に第一船が新パナマを試験通航した。
 ただしこの船は大型ではない。長さ836フィートしかなかったのだ。
 バラ積み船なので背が低く、風の影響も受けない。

 新運河は、計画では、1日に12隻のネオパナマックスを通す予定だった。

 ※季刊『宗教問題』で広告しているように、7月2日(土曜日)に都内で軍事情勢の講演をします。わたしは暑いのは超苦手なので、羽田空港から往復しやすい浜松町に会場を設定してもらいました。北海道は風邪をひきそうなくらいに涼しいです。すぐ日帰りする予定です。

七月四日売りのSAPIO記事にご注目ください。

 Alan Tovey記者による2016-6-22記事「RAF will have to send F-35 kit back to US for repairs - even though it was built by a British-owned company」。
   英空軍が使用するF-35の電子機材は、米国支社のBAE工場で製造するのだが、もしもRAFが使用中に修理が必要になった場合には、その電子機材を英国内で修理することは決して許されず、セキュリティ上の要請から、すべて米国まで運んでいって米国内のBAE工場で修理しなければいけないのだということが判明した。

 ついでに暴露されたこと。英国のBAEシステムズ社は、米国内の電子戦兵器専門支社から、9億5000万ポンド(14億ドル)の年収を上げている。BAE総体では年に170億ポンド稼いでいる。

 英空軍は、F-35を140機買うつもりである。その大宗は、垂直着陸ができるB型である。
 ※英国はいやしくもP5の一員として、制空戦闘機を米国製にすることはぜったいにしない。CAS任務機・小型艦上機のハリアーの後継機を米国と共同開発することにお相伴したのみである。なぜなら米海兵隊はハリアーの顧客だから、F-35Bに相乗りしなかったらば大顧客を喪なうからである。

 F-35の電子戦機材は、ブラックボックスとして扱われる。修理やアップデートが必要になったら、そのブラックボックスだけを取り外し、米国へ輸送する。機体は英国に置いたままでいい。

 BAEのランカシャー工場ではF-35の胴体の一部を製造する。

 米軍機が使う電子機器を作る工場は、米国内に置かれなくてはならない。これは米国の武器商売ルール「ITAR」の縛りである。BAE社はF-15用やB-2用の電子機材でも稼ぐ必要があり、工場を米国内に置いている。

 宇宙放射線に強い衛星用の電子回路も、BAE支社はすでに数百個、米国衛星用に納品している。

 ※ゲイツ長官がF-22を葬ってF-35に一本化させたのは、F-35がF-16のように安価な戦闘機になると思ったからではないのだと、ようやくわたしはこのごろ理解した。F-35こそは、米国が同盟国と友好国に勝手なマネをさせないで「情報鵜匠」となるためのツール、いわば「情報拘束衣」だったのだ。しかし皮肉にも米国国内法が、イスラエルの戦闘機と同格の高性能戦闘機を周辺イスラム国に売ってはならないとしてしまったため、GCC諸国がF-35の買い手となる日は来ない。すなわち米国はF-35を売ることによってGCC空軍の動静を居ながらに「見張る」ことはできなくなった。商売的にもとても苦しいことになった。「F-35を売らないならストライクイーグルとスパホを売れ」というGCCにアメリカは答えなければならない。しかしイスラエル向けのF-35の量産は急には増やせない。どちらでも儲けることができなくなっているのだ。

 次。
 Thomas Gibbons-Neff記者による2016-6-21記事「Watch an A-10 land on a highway for the first time since 1984」。
   NATOの14ヵ国がロシア周辺で実施中の「セイバーストライク」演習の一環として、ミシガン州兵空軍所属の4機のA-10が、1984以来やったことのなかった、高速道路への着陸を実施した。エストニアで。
 ※この動画をSNSで拡散させるのがアメリカの狙いである。ロシア人にバルト3国侵略を思いとどまらせるために、これに限らず、インパクトある動画が次々に米軍の手によって製作され拡散されている最中だ。ロシア空軍はバルト3国の飛行場を数日間~2週間ばかり使用不能にすれば戦争に勝てると踏んでいるが、それは不可能だと思い知らせる目的がある。

 着陸を誘導したのはJTACたち。つまりJTACの仕事はCASを地上から指図するだけじゃなく、CAS機を臨時滑走路に着陸させることまでやるのだ。

 ドイツとポーランドでは、今でも、高速道路の一部が、代用滑走路として平時から指定されている。※ただしそれがどこか、公開はされていないはずである。

 2015年には、フィンランドとスウェーデンのF-18およびグリペンが、訓練で「ハイウェイ924号」に着陸し、また離陸した。

 次。
 ストラテジーペイジ 2016-6-22記事。
  ファルージャが奪回されたとか言っているが、残敵掃討には1ヵ月以上かかるはず。これはラマディの前例から推定できる。

 ファルージャだけでISが2500人死んだと。
 市内へ戻りたがっている元住民は8000人。

 ファルージャが位置するのは、イラン側の完全な沙漠地帯と、チグリスユーフラテスの緑地帯の境界線上なのである。バグダッドからは60km。

 イラク政府軍は2016末までにモスルも奪回すると言っているが、シーア兵士の訓練度は非常に低い。

 2015後半からトルコはイラクに越境爆撃し続けている。6月21日にはPKKに対して誘導爆弾を投下した。
 トルコのUAVは毎日越境偵察飛行している。

 イラク内のクルドは、その支配下の原油を、トルコ経由のパイプラインで外世界に売るしかない。だからいくら爆撃されても堪えている。

 クルドは支配地で毎日50万バレルの原油を掘っている。しかし国際油価が下がっているので、それは月に3億2000万ドルの収入しか、クルド自治政府にもたらさない。

 イラク政府は、1日に300万バレルを輸出している。

 イラクの北東国境のすぐ向こう側のイラン領内にはPJAKというクルド集団がいて、イラン革命防衛隊と戦闘中。PJAKはイラク領からイラン領へ浸透してきた。
 PJAKとイランの戦闘は、2003のイラク占領以後、ずっと継続している。
  ※『白書2016』でも解説するが、トルコとパキスタンは正反対の構造をもっている。トルコはエルドアンと政府与党が「オスマントルコ帝国を復活させるのじゃ」主義者で、逆に軍が近代世俗主義勢力。パキスタンではまったくその逆である。

 次。
 ストラテジーペイジの2016-6-22記事。
   イスラエルのエルビット社は、F-35のヘルメットに似た機能を有する統合情報表示ヘルメットを、ヘリコプター操縦手用と、戦車クルー用にも、開発した。

 戦車用のは「アイアンヴィジョン」という商品名。このヘルメットを装着すると、AFV車内にいながら、車外の全周を、昼でも夜でも、まるで装甲鈑などないかのように、見回すことができる。もちろんヴァーチャル・ビデオ映像がバイザー内に映示されるため。
 ※F-35用のは映像のディレイ問題が解決不可能なのでおそらくダメだろう。しかし車両用はディレイについて航空機ほど問題がシビアではないから、これから流行る。すでに民間乗用車のバックミラーはビデオモニターで置き換わる趨勢にある。戦車のドライバーは、将来は車体の最後部に位置できるようになる。車長もだ。もちろんフロントエンジン。そのような2人乗り戦車がすぐにも実現するだろう。

▼ストラテジーペイジの2016-6-22記事。
  ラインメタル社が130ミリ戦車砲を1年前から開発中であることがあきらかになった。2025までに完成させる。

 近代戦車の正面装甲が強力になりすぎたので、120ミリではもう不足だと判断した。
 砲の重さは3.5トンで今の120ミリと変わらず、弾薬も殊更特別なものにはしないという。すなわち飛翔体と薬筒が最初から結合された完全弾薬。

 120ミリ弾薬は重さ22kgあるが、これがおそらく2割り増しとなるだろう。サイズもだ。
 砲身は51口径長、つまり6.5m。

 もし120ミリを140ミリにすれば、11メガジュールに対して22メガジュールを与えられるので、パンチ力は2倍になり、M1戦車の正面をブチ抜ける。しかし戦車に積める弾薬総数は、三分の一ほど減るだろう。すなわち20発か30発しか搭載できなくなる。
 中共は2005年にこの140ミリ戦車砲のテストをやっている。もちろん自動装填にしないと完全弾薬としては扱えない。
 テレビ報道画像を見る限り、その大砲はラインメタルの技術を盗んだものらしかったという。
 しかし140ミリ戦車砲のリコイルに堪えるには最低でも60トンの車体が必要である。おそらくこの破壊的リコイルに対処できるような機械技術と60トン車体を大量調達する予定がシナにはなかったので、導入はあきらめられた。ちなみに中共国内の橋梁で60トンに耐えられるものも多くはない。

ペンタゴンは2016年の対議会報告で「対艦弾道弾」について一言も触れなかった。ないものをあるとする議論の有害性に気付いたのだ。

 Dave Majumdar 記者による2016-6-20記事「Here Is Why the US Military Is Not In Panic Mode」。
  6月2日のシンクタンク「新アメリカ安全保障センター」カンファレンスでの講演で、米海軍作戦部長のジョン・リチャードソン提督は、「米海軍に対する長距離精密攻撃兵器の脅威は確かにありますよ。みんな、A2/ADがどうのと騒いでいますな。A2/ADは〔シナ人の〕熱望的思い込みのようなものだ。じっさいにやるとなったら相当難しいのです」と語った。

 中共軍がユビキタスなISRと長距離精密打撃兵器を組み合わせられるようになったら、またわれわれも考えなくちゃいけませんな――と作戦部長〔旧海軍の軍令部総長に相当〕。

 技術の開発と拡散は続いている。北鮮ですら「対艦弾道弾」をつくろうとしているのは間違いないのだ。
 いつか、どこかの国が「対艦弾道弾」を実現する日もあるだろう。その後はその技術は世界中に拡散して行くであろう。
 だから米海軍は「対艦弾道弾」を潜在的な脅威だと今は考えておく。

 対艦弾道弾なるものを有効にするためには、「キル・チェイン」が不可欠だ。すなわちISR、データネットワーク、コマンド&コントロール。そのすべての段階で米海軍はECMを仕掛けることができる。だから米空母艦隊と艦上戦闘攻撃機群の威力は当面、不滅である。

 A2/ADを議論すると必ず「DF-21/26が届く範囲には米空母は立ち入れなくなる」と言う者がいる。この連中は、ありえない前提を暗示するという手を使って世間を騒がせている。ISRアセットとネットワークが十全に整備されていなければ、対艦弾道弾などそもそも運用不可能なのだ。そして中共軍は、現実には、まさにその不可能な段階で低徊しているのである。

 次。
 Todd Crowell 記者による2016-6-21記事「What A New Chinese ADIZ Means for Asia」。
  中共はその宣伝紙を使ってこういうことを示唆している。
 将来、米軍が南シナ海で中共の侵略を邪魔する行動をすれば、そのとき、南支那海全体にADIZを宣告する、と。

 南シナ海にADIZが設けられると、マニラ、ジャカルタ、シンガポールの民航機は面倒なことになるだろうか?
 東シナ海の中共ADIZに関して日本の民航機がスクランブルを受けたことはこれまでのところ一度も無い。

 ADIZについての国際法はない。米国も含め、すべてそれは、ユニラテラルな宣言なのである。

 ADIZに従いなさいという国際法も存在しない。しかしほとんどの国は従っている。
 ただしロシアだけが例外。ロシアは他国のADIZを一切認めない。よって、ロシア機が他国のADIZに入るときは挨拶を一切しない。
 これが、今に至るも航空自衛隊のスクランブル対象としてロシア機こそが最多である理由なのである。

 台湾は、南シナ海には他国のADIZを認めないと最近アナウンスした。

 ところで米国も日本も本土全体をADIZで囲んでいるのにシナはなぜごく一部分なのか?

 中共にとってそのADIZは、中共本土を防空する目的などはないからなのだ。シナ版ADIZとやらもまた、他国の主権を侵食する道具のひとつなのである。だからシナ本土の全周には今後もADIZは設定されまい。

 次。
 Max Boot 記者による2016-6-20記事「Why Brexit alarms Britain’s Baltic allies」。
  英国がEUを抜ければロシアのバルト三国征服は、やりやすくなるだろう。
 バルト三国すべてあわせても人口は620万人。軍隊は5万6000人しかない。

 いま英国人は、「反露」の感情ではドイツ人やフランス人を上回っている。
 フランス極右政党の指導者ルペン氏は、クレムリン系の銀行から数千万ユーロもの「ローン」を得ていたことを、認めている。
 ロシアの工作資金は、ハンガリーでは極右団体へ、スペインでは極左団体へ、ギリシャでは極左団体へ、オーストリーでは極右団体へ注入されている。
 そのいずれも、「親ロシア」で且つ「反EU」を標榜する団体なのだ。
 おそらくトランプ候補にもロシアの金が注入されようとするはずだ。トランプ氏はNATOを時代遅れだと言い、ロシアとの関係を改善すると主張しているから。

 次。
 ストラテジーペイジの2016-6-21記事。
   空港でテロしそうなやつをスクリーニングするイスラエルの技法。「オブザービング&クウェスチョニング」という。
 これが有効であることは、イスラエルの空港では近年1件のテロも起きてないことでわかるだろう。

 テロしようとする人物は見た目と様子がすこしおかしいので、別コースに案内する。次にそいつに、適宜の質問をぶつけると、けっきょく正体を顕す。

 イスラエルは学んだ。人は見かけなのである。

 この技法は人件費がかかるのが難点だ。
 プロの「見分け人」が大量に必要なのだ。大卒者を養成するのだが、9週間もかかる。

 イスラエルでは、テロリストに狙われやすいバー、クラブ、宗教施設が武装民間警備員を配することが認められていて、その人件費は「セキュリティ・サーチャージ」を客/利用者から集めることによって賄われている。

ぜったいに不発弾を発生させない特殊信管回路を発明したメーカーはノーベル平和賞を貰えると思う。それはダイナマイトの次に偉い発明だから。

 Max Bearak記者による2016-6-20記事「A tiny stretch of countryside separates Baltic states from Russian envelopment」。
  読者よ記憶せよ。これから世界が注目することになる戦場。それは「スバウキ・ギャップ」である。ポーランドのスバウキ村(Suwalki)の東にある、長さ70kmほどの国境線。

 この国境線によって、ポーランドとリトアニアが直接に土地を接している。
 この狭い「間隙」の北西端は、ロシアの飛び領のカリーニングラードに達し、南東端はベラルーシに達している。

 ベラルーシは今日でもクレムリンの忠実な衛星国である。
 そしてカリーニングラードは露軍の陸海空の一大基地である。カリーニングラードから露軍が出撃すれば、スバルキ間隙は、すぐに封鎖されてしまうだろう。
 そうなれば、NATO軍は陸続きにバルト三国を救援することはできなくなる。

 2015-3-16の抜き打ち動員演習で、露軍は8万人を動員した。これが露軍がバルト三国侵略に使える兵力だと考えられている。

 6-14にNATO各国防相は、このスバルキ間隙の両側に4000名を事前展開することで合意した。ロシアの侵略が切迫しているためだ。
 同日、ロシアは1週間の抜き打ち演習をスタートさせた。

 ペンタゴンは2017予算で、欧州に配分する軍事費を4倍に増やす。「欧州再保障イニシアティヴ」と称す。

 米、英、独、加、ポーランドは、それぞれ800人規模の戦闘団(バトルグループ)を差し出す。

 英軍のバトルグループはエストニアに駐留するであろう。
 米軍のはポーランドに。
 独軍のはリトアニアに。
 カナダ軍のはラトヴィアに。

 詳しいことは7月のワルシャワのNATOサミットで決まるはずだ。
 ロシアがもし第三次世界大戦を仕掛けたいなら、バトルグループが展開してしまう前の今しかないだろう。

 ※シリアの露軍機は高額な誘導爆弾を使えないものだからクラスター爆弾で代用している。なんと2017国防授権法に米上院は、クラスター爆弾の廃棄中止を盛り込んだ。前の在韓米軍司令官スカパロッティは、半島にはクラスター爆弾が必要だと議会で力説。これはシナ軍が38度線まで下りて来ると米国が想定していることを意味する。サウジはイエメン空爆でしょっぱなからクラスター爆弾を落としまくり。米国製であると考えられる。スバウキ国境周辺も、不発弾だらけとなるだろうね。このままだと。

Hサイト視聴中に地震が来たら皆さんはどうされますかな? やはり、このなごみのひとときを、地震如きに奪われたくはない……と怒りますよね

 ※ちなみに「ウィンドウズ10」はわたし的には不満がないです。それどころか、「7」では「音」が出なくなっていたユーチューブの音がまた出るようになり、嬉しい。通信の立ち上がりもやたら速いし。

  Franz-Stefan Gady記者による2016-6-17記事「US Navy Sends Electronic Attack Warplanes to Philippines Amid South China Sea Tensions」。

  米海軍は比島のクラーク基地にEA-18Gグラウラー×4機と人員120人を送り込んだ。6月15日に。

 このグラウラーは、F/A-18 スーパーホーネットF型ブロック2からバルカン砲を撤去して、対レーダー・センサーとジャマーを載せたもの。
 翼下にはECMポッドを4個吊るす。

 なぜ送り込んだか。中共軍がスプラトリーにどんなSAMを配備したか、レーダー電波を集めて解析するため。シギント/エリントのためである。
 無人機のRQ-4 グローバルホークでは、中共軍が下から妨害電波を浴びせると、シギントができなくなる。そのため2015-4に、グロホはスプラトリーでのエリント/シギント任務に完全に失敗しているのだ。※こんなもの日本が買う意味がますますなくなったってこと。グラウラーを買えば? 三菱商事としては涙目だろうけど。

 セクデフのカーターと、比島国防相ガスミン氏の合意により、クラークには2016-4-16から米軍の航空分遣隊が置かれている。グラウラーもその一部である。

 一時的な航空分遣隊としては、先に、A-10C×5機、HH-60G×3機、人員200人がバリカタン演習に合わせて送り込まれた。しかし4-28にすべてのミッションを終えている。

 ルソン島の海岸線から120海里しか離れていないスカボロ礁を中共軍用の新たな砂盛り島にすることを米軍としては座視できない。

 次。
 ストラテジーペイジの2016-6-16記事。
   今年、北鮮政府は、5月15日から6月15日までの30日間、人民が普段の仕事をやめて「援農」の勤労奉仕をせよと命じていた。水田に苗を植えつけさせるため。

 今年はその動員対象に大学生までもが加えられた。
 しかし大学生は実家がカネモチだから、その三分の一は、賄賂によって勤労奉仕を免れた。

 また三分の一の大学生は、農村に動員されても、そこで農作業には専従せずに、「監視」任務を与えられていることが判明。つまり農村にじっさいに連れて行かれた大学生の2人に1人は「監視役」なのだ。

 北鮮では、人口のだいたい1割は「密告屋」。
 ソ連型国家では、特に軍隊と大学については、相互監視と密告のネットワークが濃密に構築されねばならない。

 農村に行けば、誰が「監視&密告役」なのかはすぐ分かる。他の大学生は1日14時間も労働させられているのに、そいつだけはちょこっと仕事の真似事をするだけでおしまいなのだから。密告屋には、特権が与えられるのである。

 国連が衛星写真を分析したところ、いまの北鮮人は2015年より摂取カロリーが12%少なくなっている。食料は国民の必要量の6割しか得られていない。

 北鮮政府は無能なので所得税や間接税を導入することができない。そこで、ある地域の住民全員に、一律額の強制献納を命ずる。それが税金代りなのだ。用立てられない住民は、労役で支払う。その徴用のあいだは、家業の商売はできなくなる。

 息子が学生ではない場合、親は、だいたい1万2000円くらいに相当するシナ紙幣を共産党の役人に掴ませれば、農村労働を免除してもらえる。しかしそれは労働者の1ヵ月分の収入に相当するのだ。

 京城[ソウル]は韓国GDPの四分の一しか稼ぎ出せていない。人口の半分もが集中しているのに。

 ※北鮮の農業を在韓米軍の合同演習によって完全に破綻させてやる方法については、『白書2016』をお読みください。専門家の力を借りて詳しく解析してあります。

ナイフ蒐集家で有名な都知事はこの2年間、ナイフを知事室のどこに置いていたのだろうか? ガバナーにはガーバーが似合ったりなんかして

 ※まあ、最後に変な気を起こされないように、周辺者は気をつけてもらいたい。

 Jeanette Steele記者による2016-6-15記事「Supervisory errors blamed in Navy SEAL parachute death」。
  2015-3に29歳のシールズ下士官 Jason Kortz が高々度からの降下訓練中にパラシュートの紐がからまり、そのまま墜死した事故。ようやく事故調査の結論が出た。

 機外に飛び出したところで仰向け姿勢になってしまい、主傘の紐が絡まった。そこで予備傘を出したが、それも絡まった。

 彼は海軍の落下傘降下教程は済ませていた。25回、飛んでいた。しかしそれではまだ足りない。
 平易なジャンプから徐々に難しいジャンプに進む必要があるのに、シールズ部隊はそうさせていなかった。
 風洞施設を使い、緊急時にどうすべきかの訓練を、もっと積ませるべきだった。下士官には緊急対処の知識がなかったのだ。

 その前に、彼は無線機を身に着ける方法が正しくなかった。
 この隊員は、小銃、暗視ゴーグル、ボディアーマー、リュックザックに加えて、通信機を持って飛び降りた。その通信機の装着の仕方が不適切だったために、本来の正しいうつぶせ姿勢から、あおむけ姿勢になってしまったらしい。

 また、彼は許されていない装備を身につけていた。サングラスとヘルメットである。
 これらは、死亡事故の責任が本人のみならず、その訓練の監督者たちにもあったことを意味している。

ロシア情報部は米民主党のPCにハッキングして、どんな反トランプ論があるのかを調べ、これから宣伝(トランプ支援射撃)に活かす模様

  Aaron Kidd記者による2016-6-14記事「ROTC back at Harvard after break due to Vietnam protests」。
  ハーバードの全ROTCが復活した。陸海&空軍だ。

 ハーバード・キャンパス内に空軍のROTCを復活させることについてはこの春にすでに、ジェイムズ空軍長官(文官 ♀)とファウスト学長の間で合意文書が取り交わされていた。

 ハーバードの海軍ROTCは2011に復活している。議会が「ドント・アスク・ドント・テル」ポリシー(=同性愛者かどうか訊くな、そして同性愛者であることを公言するな。公言した将兵は軍から追放する)をペンタゴンに放棄させたことがアイヴィーリーグでは好感された。

 陸軍ROTCはその海軍に6ヶ月遅れてハーバードに復活した。

 海兵隊はROTCコースを持っていない。しかし海軍のROTC卒業者はオプションとして海兵隊少尉になるための学校へ進む道が用意されている。
 コーストガードには、ROTCは無い。

 ROTC制度は米国がWWIに参戦するための準備として1916年に導入され、ハーヴァードはそれに最も早く参加した大学のひとつである。
 大戦争では初級士官=少尉=陸軍の小隊長=海軍の分隊長 が極端に不足するものなので、それを急速に大量に供給する必要があった。もちろんみんな志願したのである。そして米国は1917から参戦する。それ以前から義勇兵は飛び込みで欧州軍に参加していたけれども、それ以後は米国の青年は米軍のために徴兵された。

 しかしベトナム戦争の最末期の1971にハーバードは政府への反発からROTCを追放。爾後、同校の学生でROTCを受けたい者は、近所のMITまで通って受講するようになったのである。

 草思社の『アメリカ大統領戦記』の第一巻にも書いたように、ハーバードの寄宿舎は、独立戦争のバンカーヒル戦のときの兵舎に充てられている。※第二巻はそろそろ脱稿します。とうとうヨークタウンまで漕ぎつけた。とんでもねえボリュームになっちまったが、長編小説か大河ドラマに区切りを付ける気分をただいま味わい中だぜ!

 これまで、ハーバードのROTC修了者の「議会名誉勲章」受章者の数は、ウェストポイント卒、そして海軍兵学校卒〔過去ぜんぶひっくるめる場合はアナポリスとはいわない。南北戦争中に移動したので〕者に次いで多い。※かなりの危険を冒さなければメダル・オブ・オナーは貰えないので、死者やアンヴァリドの数もそれに比例していると見ていい。大東亜戦争になるまで将校になる義務を免れていた日本の帝大生たちがいかに異常か、ということ。

 ※『白書2016』でも書いたんだが、ROTCの全体の質は2007年以降、落ちていて、「どうしようもない直属上官」に嫌気がさして、有能な下士官や若い将校がどんどん軍を辞めてしまうのだそうだ。たしかバーグデール軍曹も部隊長(佐官級)が馬鹿で無能すぎるから腹を立てて脱走してやったんだと供述した模様だが、その隊長はウェストポイント卒らしい。

安倍が舐めた態度でプーチンに会うから向こうも意地を見せて尖閣で挑発したということが分からないのか? 第5師団を縮小した報いが来ている。

 Stephen Young 記者による2016-6-13記事「America's failing missile defense system」。
   上院は今週に、FY2017国防授権法の審議を終了する。
  下院はすでに国防予算法を可決している。

 両院ともに、1999に立法されたところの、「米本土に対する限定的なBM攻撃を防禦するひとつの実効的なシステムを配備しろ」という規定を変更する。
 1999の「国家ミサイル防衛法」だ。こいつは北鮮とイランからのICBM攻撃を念頭していた。
 ついでに、ロシアや中共からの偶発的なBM発射も阻止できることとされた。

 「新START」条約では米露は戦略核弾頭を1550発づつに制限した。しかしもし米本土のABMがアンリミテッド化されれば、ロシアはこの条約を破棄することになるんだぞ。

 中共は、今のリミテッドなABM(=GMD)にすら反発して、それまで80発以下に自制していたICBMを徐々に増やそうとしているんだぞ。

 ということは、米側ABM努力がアンリミテド化されれば、いよいよシナも戦略核を大拡張するんだよ。

 1999法は、「リミテド」については守られたが「実効的な」は実現できずにいる。
 すなわちGMD=地上配備式ミッドコース迎撃システム。これがぜんぜんうまくいってない。2002のブッシュ(子)大統領によって決定され、400億ドルも投じられているのに。

 GMDの配備いらい、9回のインターセプト・テストがおこなわれたが、3回しか「迎撃」に成功しなかった。

 ごくシンプルで予期もされている、1発だけのミサイル飛来パターンでも、成功率が三分の一なのである。

 ブッシュ政権は、ふつうの兵器システムのように、完成してから実戦配備するのではなく、実戦配備しながら開発を続けさせるという特例的な命令を下した。これがいけなかった。GMDは完成してないシステムであり、20年以上経つのに完成の見込みのないシステムである。なのに議会の連中すら、それがもう完成したシステムであるように錯覚している。大間違いだ。米国にはABMは無いのである。なのにロシアとシナにICBM軍拡を促すのか?

 オバマ政権は、GMDの実戦配備を中止して開発モードに戻すことができたのにそうせず、この問題をますます「化膿」させた。

 議会共和党は、GMDをあらためて開発完成させてから配備しなおすように促すべきであるのに、逆のことをしつつある。
 すなわちアリゾナ選出のトレント・フランクス下院議員は、「国家ミサイル防衛法」におどろくべき修正を加えた。条文から「実効的な」「限定的な」の形容をなくしてしまい、robust(粗野ながら堅牢でミスに強い)な数層(layered)の防衛を〔ロシアや中共からのフルスケールのBM攻撃に対処できるくらいに〕実現せよ――と規定しなおしたのだ。

 上院ではテキサス州代表の共和党のテッド・クルスが、「限定的な」の形容詞を除去する修正案を通している。

 嘆かわしいことに1999の立法時のような公開論議をほとんどしないで、この重大修正はなされてしまった。

 これについてフランクス下院議員は、「この変更が何を意味するかを議会が理解してしまったら、民主党は修正法案を阻止しただろうからな」と、後でニュース取材に対して自慢した。

 この変更は米国の安全保障を根底から危うくする。まず敵のBMを阻止できない失敗システムに、さらに多額の税金がどんどん注ぎ込まれるだけであろう。

 そしてロシアと中共は、対米攻撃できる核兵器システムを削減どころかますます増やさねばならぬと思いつめるだろう。

 1999法にある、「limited」(限定的な=北鮮かイランのBMだけを相手とする)の形容詞だけは、なくしてはならないのだ。

 そして一刻も早く「実効的な」ABMを開発完成しなければならない。現状ではそれはどこにも存在してないのだ。

 ※日本の大手メディアのロシア解説者は阿呆しかいないのか? プーチンはバルト海から第三次大戦を始める覚悟でゲームを始めているんだぞ。だからNATOはポーランドで冷戦後最大級の演習を実施する。EU予算でサーブ社からカールグスタフの弾薬をおびただしく調達してドイツからポーランドへ搬送する。米軍はSNSに意図的に、東欧と北欧に蓄積した弾薬がいかに厖大かの画像をアップロードし、それを拡散させて、ロシア人に思いとどまらせようとしている。バルト海沿岸各国は徴兵制をあいついで復活させている。リトアニアとポーランドは陸続きだからバルト三国への侵攻はそのままポーランドやドイツとの戦争なのだ。そしてプーチンはNATOが攻め返してこられないようにカリーニングラードに核弾頭付きの短距離BMを配備した。トリップワイヤーだ。ポール・ケネディは今日の事態を露軍のクリミア併合よりも前から予測しているんだよ。日本の総理はプーチンとボケた話をしている場合じゃない筈だ。(『白書2016』の刊行が8月にずれ込みそうなので、間に合うようにこの場で逐次に解説して行こうと思います。本当にWWIIIが近づいているので……。)

「黒字主義者」のリードする外交は「安上がりの核戦争」に帰着する。

 人口が3億を超えてなお増え続け、全世界の軍事費の四分の三近くも出しているアメリカ合衆国は、国内政治によってしか衰退しない。
 徳間の本で書いたように、ローマ帝国は地球の寒冷化とともに縮小した。しかし北米大陸は事実上の島。気候が変わっても辺境から蛮族は浸透してこない。
 またこれも徳間の本で書いたように、大英帝国は、ドイツとの抗争に疲れたところへ、アメリカ合衆国から引導を渡された。しかし米国に引導を渡す帝国は無いのである。
 とはいえ米国内の富裕ではない9割の有権者は、米軍の海外関与など解消してその財源で「国民皆保険」を実現しよう――と叫ぶ、有言実行タイプの大統領が現れれば、その〈ドクトリン〉を支持する。
 世界最強の国に生まれたじぶんたちがなぜ最低賃金の仕事と、気軽に医者にもかかれぬ社会保険制度を押し戴いて暮らさないといけないのか? ……大衆が「米国内の大いなる不正義」に気付くのは、時間の問題だったのだ。
 2017年から誰が大統領になるにせよ、9割の有権者の不平を無視できる政治などありえない。となると、在日米軍がゼロになる日もあるかもしれぬ。
 だがその前に世界は激動をする。トランプ氏の頭ではカバーできないことなのだと思うが、米軍の海外プレゼンスを縮小させると、却って「米露全面核戦争」が近くなってしまうのである。

 「黒字前提軍事ドクトリン」とは、カーティス・ルメイ将軍の正しさを認めることである。
 今から54年前、カーティス・ルメイ空軍参謀総長は、ソ連の核戦力が充実しないうちに米国からソ連を先制核攻撃して禍根を断つべし、と信じた。しかしケネディ大統領は、米国の経済力と核/非核の軍事力はソ連を圧倒しており、これからも逆転される趨勢にはならぬと正確に全局を読んで、そうした意見を封じた。
 合衆国が公的社会保障を充実するために「黒字前提軍事ドクトリン」を採用すると、この〈ルメイ主義〉こそが正しくなる。敵が挑発してきたときに忍耐などせずにさっさと全力で亡ぼしてしまうことが、最強且つカネ惜しみのアメリカにとっては合理的になるのだ。ロシア以外の敵であれば、核を使うまでもない。
 たとえば北朝鮮なら、3月から5月末にかけて陸・海・空のローテーション部隊に韓国内で継続して大演習させれば、北鮮農業独特のコメおよびトウモロコシの作付け作業ができなくなって、体制は亡びる(より専門的な解説は7月下旬刊の『兵頭二十八の防衛白書2016』に譲る)。今の米軍は韓国での合同演習を春に集中せずに夏や秋に分散してしまうから、金王朝の息の根を止められないのだ。
 中共の場合は、シナ大陸沿岸に潜水艦を使って機雷を撒かせるだけで体制はあっけなく亡びる(詳しくは兵頭の複数の既著に譲る)。トランプ氏は中共に工場を移転させた米企業はペナルティを受けるべきだと叫んできたが、それも同時に実現するだろう。もちろん日本もちょっと困ったことになるけれどもトランプ氏は日本人が困ることならば最優先で命令する。(彼の本心は、核武装した韓国に日本を攻撃させて快哉を叫びたいところなのだろう。しかし日本が中共を亡ぼせば同時に韓国も無力化するから、これは心配しなくていい。)
 問題はロシア。プーチン好きのトランプ氏は米軍をもっと強くするとも言っており、米軍部隊が他国軍から舐められることは容認できないはずだ。バルト海や地中海で露軍機が米軍艦艇や哨戒機に危険距離まで肉薄(バズ)する挑発行為には、「後追い射撃」を「自衛」として許可するであろう。じつはこれをやられるとロシア軍側には勝ち目がなく、プーチンに残される対決カードはICBM(大陸間弾道弾)だけとなるのである。そして現状だと米軍はロシアを先制核攻撃すれば勝てる(トライデントD5の精度はICBM並なのだ)。トランプ氏はケネディとは違う判断をするだろう。

 改めてこういうことまで考えると、日本は米国から縄の伸びた「鵜匠の兵器」を買わされている場合じゃないということがわかるだろう。
 イージス艦は、自衛艦隊の旗艦のコンピュータに米海軍が直接コマンドを送れる、怖いシステムだ。それに続くのがF-35で、航空自衛隊の戦闘機が次に何をしようとしているか、米空軍はいつでも衛星経由でミッション・コンピュータを覗き見することができる。もちろんコマンドも送れる。
 米国にもし「反日大統領」が誕生したなら、防衛省はこれらの調達やアップデートを4年ほど中断せねばならぬ(さもないと悪用される)。
 併行して、日本政府は「木造建築制限法」(軽量鉄骨+コンクリートパネル住宅補助法)等を制定して、甚大災害に耐えられる市町村づくりを急ぐことだ。横須賀と厚木(どちらも米軍のASW拠点)でロシアの水爆が炸裂した場合、「3・11」震災とは比較にならぬ破壊殺傷が出来[しゅったい]するのだから。

カラスの雄は近くにメスがいるといい格好をみせようとしてずいぶん危険を冒す。

 William Gallo 記者による2016-6-6記事「Why Hasn't the US Signed the Law of the Sea Treaty?」を超意訳すれば、こういうこと。

  ハーグの国際仲裁法廷が数週間以内に「中共が悪い。当該EEZはフィリピンのものだ」という審決を下す。しかし米国がUNCLOSを批准してないことから、シナ人は対抗宣伝が可能である。批准してない米国は、まったく偉そうなことは言えない立場なのだ。

 UNCLOSはいわば「海の憲法」。それにアメリカだけが加わっていない。
 批准しなかった理由は上院で共和党が反対したから。およそ条約の批准には、上院の三分の二が賛成しなければならないのだ。
 ではなぜ共和党は反対したか。
 UNCLOSの枠組みの中で、批准国の多数決ルールによって厳しい海の「環境基準」が決められてしまう可能性があった。米国には1票しかないから断然不利。ようするに、石油企業が海底油田を自由に掘れなくなる恐れが生ずるのだ。

 私人や、外国が、UNCLOSを盾にとって、米政府や石油企業を相手に訴訟を起こせることになる。採掘や探査事業はストップしてしまう。この事態を、石油企業がバックにある共和党大物議員たちは怖れた。

 だからUNCLOS反対派の代弁者(シンクタンク所属)はこう言う。〈米国が批准していようがいまいが、シナが国際法廷には従わないことに変わりはないだろう〉。

 だが米海軍大学校で国際法を教えている先生いわく。〈現実には米海軍はUNCLOSに厳密に準拠した行動しか取ってないんですよ〉。

 米海軍は、上院がUNCLOSを批准することを希望している。
 オバマも批准を事あるごとに上院に訴えている。

 批准しないと、EEZを超えた大陸棚の開発を、米国は力ずくの一方的行動として進めるしかなくなる(それを国際慣習法の適用だと強弁しながら)。たとえばアラスカ沖の大陸棚の海底油田の開発をめぐって、ロシアがUNCLOSを盾に取り、且つ、武力も使って米国企業を追い立てにかかった場合、米国はとても苦しい立場に追い込まれるのだ。

6日絶食の後、ふと握り飯2個を飲み込み、なほ胃は平然たる、これを仙人となむ称すへし。

 Sean Buckley記者による記事「The US Navy just put a futuristic HUD in a diving helmet」。
     
 ダイビング・ヘルメットにも、オーギュメンテッド・リアリティ、すなわち、ヘッドアップディスプレイがハイレゾで表示されるようになる。現在、米海軍で開発の初期段階にある。

 超小型ソナーで「透視」した海底地形像、事前に撮影されている写真、テキストによるブリーフィング、なんでも表示できる。

 特に期待がかかるのは、泥が渦巻いていてまったく視界の無い水中で、潜水ゴーグルに「擬似視野」を映示することができる機能。ミニチュアのハイレゾ特殊ソナー(AESAと同じ原理)を使うのである。

 次。
 星条旗新聞の2016-6-4記事「Massive rehearsal planned for Northwest mega-quake, tsunami」。
  米国北西部(太平洋岸)にはいつか「メガ・クェイク」が来るのではないかと言われている。
 西海岸沖600マイルには、加州北部からカナダ・ブリティッシュコロムビア州まで伸びる断層があるのだ。
 6月7日から10日にかけ、ここで大津波が来たという想定の訓練が実施される。

 次。
 Seth Robson記者による2016-6-2記事「Global Hawks to stay in Guam this summer」。
  三沢で滑走路の改修をやるため、ことしの夏は「RQ-4 グローバルホーク」は三沢にはやってこない。
 2014夏と2015夏には来ていた。2016夏は来ない。

 次。
 ストラテジーペイジの2016-6-2記事。
  海南島を中心におびただしく確認されている中共の「海上ミリシャ」用の漁船と漁民について。
 いくつかの漁港の漁船の多くが、じっさいには漁をしておらず、紛争専任であることを、米軍はつきとめた。とっくに、集中的に衛星で監視するようになっているのだ。シナの漁船と漁港を。

 海上民兵に所属する漁船は、多くが、鉄製船体のフリーザー・トローラーである。パワーのある遠洋底引漁船。しかも冷凍庫付きだから何ヶ月も港に戻らなくていい。
 いずれも政府からカネを支払われていて、南シナ海の他国EEZに出動する。

 政府もしくは軍は、これらトロール船に月に1万ドルを支払っている。
 シナ軍専属突撃トローラーは30隻確認されている。こやつらもいちおう「漁労」はするが、それは洋上にいる時間の半分弱でしかない。

 ある紛争海域にやってくるトロール船と乗組員は、常に、同じである。

 米軍はこれらパラミリタリー漁船とクルーを継続的に監視するようになっており、次々に正体が暴かれつつある。

 漁船に情報を集めさせるのはどこの国でも昔からやっているが、他国EEZに乗り込ませたり公海上で体当たりで軍艦をブロックさせるのは中共だけだ。

 ※捨吉君のお父さん、捨吉君を叱らないでください。何ですか、小さい石を投げたくらいで。われわれなんてね、自慢じゃないが、空砲だと思って5.56mmNATO弾の実弾で射ち合ってたりとかね、もうしょっちゅうですわ。下手をすればバースト数秒で死体の山ですからね。死と隣合わせ。それにくらべたらね、誰も死なないでしょう。小石ではね。それからね、こんなバカ息子もう山に捨てちゃいたいと思っている親御さん! Fラン大学でとりあえず自衛隊に入る基礎勉強だけさせときなさい。いや高校中退でもエエんです。ブランク弾と実包の区別がつけられる判断力さえありゃあ大歓迎なのですわ。実包は尖った弾頭がついているから、見ただけでふつう分かるんですよ。弾倉に1発1発こめるときにね、それが実弾だと認識できたなら、もう立派な中堅自衛官なんです。太鼓判。さらに、「これを生地演習で発射しちゃうのはマズいんじゃないか?」っていう総合判断ができるようなら、もう、そのまま幹部候補生ですから。将来の司令官。ま、そこまで優秀じゃなくてもね。二等陸士から始めて、曹長まで勤続しますでしょう。最終年俸、700万ですよ。退職金、3000万ですよ。幹部ですらないというのに。その間、家族の医療費は、自衛隊病院を使う限りはタダですから。しかも本人だってひるまの課業時間内に通院できるんだから。どこにありますかこんな優しい民間会社が? いや20年後に存在しているんですか、あなたの考えてるその民間会社? 自衛隊は200年後も間違いなくあり続けるんですからね。

その車は江差・松前方面から鹿部まで来て、大沼周回路経由で帰ろうとしていたとも考えられる。

 Nick Penzenstadler and Susan Page記者による2016-6-2記事「Trump's 3,500 lawsuits unprecedented for a presidential nominee」。
  『USAトゥデイ』紙の調査によれば、過去30年でトランプと彼の法人は3500件以上の訴訟に関与した。連邦および州の裁判所で。

 1年前、大統領に立候補すると宣言してから最近に限っても、70件強の訴訟に彼と彼の法人は新たに突入している。そのうち、トランプ側から訴えたケースと、トランプ側が訴えられていケースは、およそ半々。

 7週間後、共和党大会で指名を受けようというこの時点でも、50件以上の民事訴訟はまだ片付いていない。

 訴訟記録からは、トランプはしばしば不動産ブローカーや弁護士や納品業者に対する支払いを拒否していることが分かる。

 これらから浮かび上がるトランプ氏のキャラクター。彼は「交渉の道具」として「訴訟」を利用するのだ。

 彼の会社は100回以上、納税で揉めている。NY州の財務局は、すくなくも36回以上、納税を滞らせている彼の資産を差し押さえた。

 大手のデベロッパーとしてこれは普通か? 『USAトゥデイ』は、米国の著名な5人の大物不動産開発会社経営者についても調べたが、比較して、やはりトランプ氏は異常であると分かった。

 トランプ氏は法廷で、延べ22時間以上、宣誓証言をしており、その記録は読める。

 もしトランプが大統領になったら、たとえばあちらこちらの州の検事総長とはひきつづき、たとえばトランプ大学のいんちき投資話訴訟について、法廷で戦い続けることになる。

 彼の訴訟記録は彼の性格の証拠でもある。彼は何であれ失敗をするとそれを自分ではなく他人のせいにするために訴訟を起こす。自分の名前と悪評を切り離す手段として訴訟を用いる癖があるのだ。

 もしトランプが大統領になると、一私人や一小企業と米国大統領が、国家的にはマイナーな訴訟で、延々と揉め続けることになる。トランプが被告のケースもあれば、トランプが原告のケースもある。そんなのが多数、あるのだ。

 大統領になる前から始まっている訴訟に関しては、米国大統領は「民事訴訟を起こされない特権」は行使できない決まりである。

 大統領は、4兆ドルの年間予算を総攬し、180万人の連邦文官、そして世界最強の軍隊を動かす立場なんだが、それが市井人たちと1件数万ドルの「払え。約束を守れ」「払わない。会社に責任はない」の訴訟を繰り広げていていいのか?

 ビジネスマンが過去に大統領になったケースとしては、鉱山技師だったハーバート・フーバー、そして、石油企業経営者であるブッシュ父子がある。

 ちなみにヒラリーは過去(ファーストレディ以後)、900件以上の訴訟を起こされている。
 うち三分の一以上は、連邦監獄の囚人や、名前を売りたい市民屋が起こした訴訟だ。

 トランプの関与した3500件以上の訴訟のうち、トランプ側の勝ちが451あり、負けが38件あることは、取材班は確認できた。

 約500件については、判事が原告の訴えを取り下げさせている。
 そして、裁判記録が非公開にされているトランプがらみのケースが数百件ある。
 約1600件は、トランプの関係するカジノで負けた客に、負債を払えと求めた訴訟である。

犯人は、見ず知らずの「祭り」訪問者かも……(私の推理)

 七飯の事件は現場が大沼公園付近で、わたしども函館住民から見たら、地元も同然です。
 どうせすぐに解決するだろうと思っていたら、長引いて大事件になっている。
 そこで、人々の噂から、私が想像したことを述べようと思います。

 事件の日は、鹿部公園ではお祭りのような催しがあったそうです。きっと、域外、つまり函館市よりもずっと北の方から、たくさんの人が自動車で来ていた。その人たちは、周辺の道路についてはあまり詳しくないはずです。

 その人たちが、午後になって、普段は通らない道路を、森町や長万部方面へ帰宅しようと、自動車で走っていた。

 そして思いがけず、見通しの悪いS字カーブの先かどこかで、道路脇を歩いていた7歳の少年を撥ね、殺してしまった。

 そのドライバーはもちろん少年や家族には面識はありません。青くなって死体を車両に格納して、そのまま逃亡したのではないか?

「読書余論」 2016年6月25日配信号 の 内容予告

▼防研史料 川口益大佐『大東亜戦争終戦頃の海軍各航空廠所管別航空機銃・爆弾・火工品・同関連軍需品 現在表』

▼防研史料 『爆弾使用区分参考表』(爆弾威力 対水上艦船)
▼防研史料 『爆弾関係(1)』250kg Bomb Production
 ※終戦直後に米軍に提出した資料。

▼防研史料 『爆弾関係(2)』
 800kg Bomb Production の数値。
 60kg(S.P., G.P., No.2, No.6, No.21, No.23)爆弾の製造数。

▼防研史料 『爆弾関係(3)』
 各種爆弾のトータル製造数。※おそらく海軍のみの。

▼防研史料 『爆弾・機銃関係』
 60kg爆弾の製造数。

◆◆特別号企画◆◆
 近々刊行予定の『兵頭二十八の防衛白書2016』に使うつもりで溜めた記事ネタ・雑ネタのうち、使い切れなかったものが多数ある。もちろん忙しくてブログにも載せてない。その一部をまとめて一挙にご紹介する。

 ※次の7月配信号は、また通常の内容に戻ります。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。

 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。

 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。

 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。

 電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。

 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
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