兵頭語録(超・暫定版!)

2002.1104


日本人の問題は、アメリカでも共産主義でもない、
日本の都市民が近代を闘争の末に獲得したのではなくて、
訳も分らず急に与えられたことだった。
 そこでは次のような反応が当然に生まれた。
自分たちは近代の危険には関わらずに楽しく暮らしていきたい。
死ぬのは武士だけでいいだろう、と。
それは、旧幕時代の江戸の町民には実現されていたことであった。
だから、明治・大正の文人の多くが、反近代の退避先として、
東京や京都に残る近世的な風俗に耽溺しようとした。
これは、旧幕臣が正確に「保守」の立場として政府の近代政策に対立したのとは大いに異なるもので、
現実の国権競争からの逃亡なのである。

「新しい戦争」を日本はどう生き抜くか 55p

推薦者:適菜氏

ロシア革命が起こると、その英国は真っ先にロシアの油田を押さえにかかっている。
対照的に、日本の陸海軍人は、
後のピーク時に毎年500万トン以上もの原油が汲み出され、
今でも海底油田が開発されている北樺太に眼中になく、
石油の一滴も出ないシベリアの占領にばかり夢中になって、
厖大な軍事費をただ捨てたのである

「新しい戦争」を日本はどう生き抜くか 二百十頁 株式会社筑摩書房

枯山氏:我国の弱点は「最悪事態想定能力」と「非常事態下における
果敢な便乗計画想定能力」について欠けている事です。
ロシア革命という非常事態を果敢に油田確保に結び付けられないのも
平時において先程の二つの能力が低い為に起こる事也。
それは只今においても全く変わらない。

西欧では、みずから下級指揮官になれるくらいの鍛錬を積んだインテリが
長じて思うところあり人類平和を唱えていた。
これに対して日本では、何不自由なく育てられた、
金持ち階級のもやしっ子が、
不潔なことやくたびれることや血を見るのが
単に嫌いという私的理由があるだけなのに、
西洋の書物の中から厭戦の理屈をああだこうだと借りてきては、
自分の怠惰卑怯を正当化する。
近代日本だけに、そんな甘ったれた都市文明が肯定的に育まれたのだ。

「新しい戦争」を日本はどう生き抜くか 五十頁 二〇〇一年 ちくま新書

推薦者:楠正成氏

石油が世界の支配的エネルギーである構図は、まだ四〇年は続こう。
その死活的エネルギーを日本は自給できないのだから、
これは遠い将来の飢饉に備えて
稗倉は幾つ満たされていれば良いのか問うのと同じ段で、
あればあるほど良いに決まっている。

「新しい戦争」を日本はどう生き抜くか 二百十一頁 二〇〇一年 ちくま新書

推薦者:枯山氏

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