update 2012/8/1


新造成地に最初に生える謎めいた植物・ビロードモウズイカの野生の写真集

(兵頭 二十八 先生 より)

 キミは、ビロードモウズイカ(びろうど毛蕊花)という雑草を、知っているか?
 おっと、昭和天皇いわく「雑草という草は無い」。

 謹んで訂正いたします。ビロードモウズイカという「身近な植物」をご存知ですかな?

 葉に細毛が生えていない、ただの「モウズイカ」というのもあるみたいで。
 内地では「アレチ(荒地)モウズイカ」とも呼ぶらしい。
 野生は、東北以北で多く見られるそうだ。
 原産はヨーロッパ。明治以降、誰かが園芸用に持ち込み、それが野生化したのだ。
 モウズイカの別名が北海道では「江差草」ともいうらしいので、港町から持ち込まれたんだろう。

 いったんサラ地にされた土地に最初に生えてくる、パイオニア・プランツ(先駆植物)のひとつである。てことはその種は、風に乗って、いつもあたり一帯に飛び散り続けているんだろうか?
 まだ観察開始してから日が浅いため、そこがよくわからん。
 辞典には「こぼれ種で増える」とは書いてある。
 すくなくとも2年草だ。それは写真を見てもらえれば分かる。

 多年草タイプのものもあるという。ただしその寿命は長くないという。
 多年草で、そうとうにでかくなってから立ち枯れすれば、枯れ姿は、不気味なはずだ。

 なにを隠そう、オレもこの植物は、北海道に来て初めて知った。

 川向こうの荒蕪地がみるみる宅地に造成されたのだが、それから1年以上して、サラ地に突如発生する。近寄ると、いかにも謎な草姿だ。

 開花期に遠くから眺めれば、黄色い花のつき具合が、野草の待宵草(マツヨイグサ、月見草)に似る。まあ、似ているか似ていないか、口で説明しても埒が開かんので、ズバリ、並んでいる写真でご紹介したかったが、うまく並んで咲いているのがみつからなかった。

 福島第一原発の近くでこの草が街中にも生えているというんで、あらためてネットで「ビロードモウズイカ」を画像検索してみたんだ。そしたら、ロクなものがない(市販の花辞典と同じ写真だったりする)。

 辞典も園芸種の Verbascum の方は写真を載せてあるが、野草の方は、これはというものがないんだよね。
 たとえば北海道新聞社刊の分厚い『北海道の野の花』は、あきらかにビロードではない葉っぱの方を「ビロードモウズイカ」と間違ったキャプションで紹介している。当てにできねぇ。

 そこで、オレが自分で撮影したホンモノの野生の毛蕊花の写真をUpすることにしましたわ。

 ちなみにウチの前の荒地駐車場には、モウズイカとマツヨイグサとタチアオイは生えていない。そういうのがあれば、残してよく観察したいところであるが、たぶん、草刈りをするとき、他の草と区別がつかないんで、うっかりと絶やしてしまうのだろうと思われる。
写真 キャプション
1_待宵草とビロウドモウズイカ
 右がビロウド毛蕊花。左がマツヨイグサ。待宵草も咲くシーズンなのだが、咲いた状態で写真比較できないのは無念。

2_左ビロードモウズイカ右待宵草
 これのどこが似てるのだとつっこまれると弱るのだが、一斉開花状態になると、似てるんですよ。

3_毛蕊花
 この黒い点々が何なのかが疑問なんだ。オレは雑草といえども他人の土地から黙って持ってくるようなことはしない。取るのは写真だけだ。

4_モウズイカのローゼット
 ローゼットというのは、冬越しのため、地面にへばりついた姿で次の春まで生き残っている葉っぱで、身近な例としては、寒冷地のタンポポを見るとよい。真の積雪期間中以外は、あくまで光合成のチャンスを逃がさず、地下の根にエネルギーをたくわえようという戦略だ。このローゼットから、春になると一斉に茎が再生するわけだ。地表の葉っぱのくされ具合から、このビロードモウズイカは1回冬を越していることは間違いねぇ。


5_毛蕊花のたぶん2年目
 ローゼットから高々と茎が伸びて花が咲く。このビロードモウズイカは2年目だろう。ただし個体によって小さいのと巨大なのがある。その差がどうして生じるのかはワカラン。こいつは小さい。周囲に競争相手はいないように見えるのだが……。

6_毛蕊花のたぶん一年目
 「ビロード」という名前は、波の表面に短い髭がびっしり生えているから。ラテン語名も「髭」を意味する。バルバロッサ作戦と同語源だろうね。1年目だと、このように、7月下旬でも花は咲かないようだ。

7_点々と
 こぼれ種で増える、とは、こういう広がりを言うのか。

8_手前はただのモウズイカ
 毛蕊花には、葉の表面がビロード状にはならないものもある。これがその例なのかどうかは断言ができない。というのは、成長にともなってビロード葉が出てくるものもあるようだからだ。さまざまな「ビロード具合」が、同じ造成地に混在している。

9_ビロードモウズイカの上部
 この花が出る部分の長さも、個体によってまちまちで、長いやつもいれば短いやつもいる。その差がどうして生ずるのかはワカラン。

10_基部まで写す
 おなじ個体の基部を見よう。ローゼットの葉っぱは、ビロード状ではないのが分かる。

11_参考の待宵草
 ご参考まで。この待宵草も園芸種が日本にやってきて、野生化したんだよね。やはり先駆植物に分類されるそうだ。

12_参考のタチアオイ
 タチアオイもこのような荒地に勝手に生えてくるのだが、その最初の種はどこから来るのだろう? こういう野生種を逆に園芸用に移植すれば、そこからこぼれ種で勝手に増え、庭がタチアオイだらけになりそうなもんであるが、そういう土地も見たことがない。タチアオイは、だいたい梅雨明けと同時に花は咲かなくなるそうだ。北海道には梅雨は無いが、雨ふりがちにはなる。


(管理人 より)
こんにちは。花の話である。高塔やソーラーパネルに先生がご興味をもたれるのは、なんとなくお仕事の延長かと推察するのだが、花である。兵頭ファン 黒帯の私にも、正直さっぱり理由がわからない。
が、小説の伏線のように、いつか判明する意味が何かあるんだろうと想像し、ニヤニヤしながら画像やキャプションを眺めるのが兵頭ファンのたしなみである。
因みにマーレイン(ビロードモウズイカ)はニワタバコという別名があるが、薬効のあるハーブとしての利用はできる、らしい。ただ、姿がタバコに似てるからこその別名のようです。
(まさか本当にタバコとして吸えるとは思えませんが。できたらすげえと思います)

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