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2008年9月4日 函館7eゴンドラ 試し乗り
 

(兵頭二十八先生 より)
 横津岳の北麓、住所でいうと亀田郡七飯町東大沼に、「函館七飯スノーパーク」(旧名・函館七飯スキー場)がある。わたしは、この地名の「ナナエ」は、沿海州の「ナナイ族」と関係があるんじゃないかと疑っているのだが、まぁ余談だ。
 このスキー場は、従来、せっかくの観光資源を、冬しか利用してこなかった。多くの地元労働者と同様、兵頭はアルペン・スキーやスノボを嗜まないから、用の無い場所であった。
 しかし、もはやゴルフ客やスキー客ばかりを相手にしてイージーにガッポリ稼げる時代は過ぎ去ったのではないか――とすばやく時勢を見通したらしいホテル&観光開発会社が、営業多角化の一貫として唐突に、2008年夏シーズンにロープウェイ(循環式ゴンドラ)を開業したらしいことを、わたしは大沼プリンス・ホテルのロビーに置いてあったチラシで偶然、把握したのである。
 これは、うれしい驚きであった。
 さっそく、好天の日を選び、現地を偵察してみた。なにせ、HPやパンフレットではちっとも実態が想像できやしないのだ。

はっきりしない道標
 まず交通アクセスからリポートしよう。無料送迎バスがあるということに、わたしは現地に至って気付かされたのだが、それがどこを回って走っているのかは不明。地方の一住民のわたしとしては、とうぜんにマイ・カーでアクセスする。例によって、近所の石黒氏の仕事用の車に便乗をさせてもらった。
 函館市街から向かうばあい、国道5号線の、大沼トンネルの北側出口から、右折して、「大沼公園鹿部線」を、鹿部方向へと走る。
 途中に、ご覧の、デカい看板が立っている(この写真は帰路に撮影したため、矢印が左を向いている)。まさに、この看板の交差点で、右折する。(流山温泉にアクセスする左折路がある交差点まで行ってしまったら、それは行き過ぎだ。小学校よりも手前である。)
 なお、この看板の表示だと、ドライバーはここより2キロ先で曲がればいいのか、それとも、ここで曲がってから2キロ走ればロープウェイ駅に着くと理解すれば良いのか、迷うことだろう。この矢印の矢柄は、直角に曲げておくべきなのではないか?
 日本人がマニュアルや開発契約仕様書を満足に書けないという欠点は、日本語の助詞(テニヲハ)の規定力のあいまいさ(しばしば複数通りの意味解釈が可能であり、聞いた者が常にそのうちの一つであろうと判断し続けなければならない)に、遠因するのかもしれない。
 たとえば「街道でイク!」とわたしが叫んだ場合に、それぞれ聞いた人が、合理的と思えるコンテクストにあてはめて、あり得る複数の文意の中から一つを選択して理解するだろう。「で」という助詞ひとつに、じつにいろいろな含意を乗せられるようになっているからだ。
 このような日本語による生活にすっかり適応し切ってしまうと、たとえば看板の表記(カギ状になっていない矢柄を含む)が、どれほど外来者に曖昧な解釈をゆるす表記であるかという自覚や心配も、できなくなってしまうのかもしれない。
夏はやってないレストラン 山麓駅脇の食堂
 駐車場のすぐ脇にロープウェイの山麓駅がある。その山麓駅のすぐ近くに「レストラン」と「フード&ドリンク」という2つの食堂施設があった。「レストラン」の方は、写真の階段を見れば見当がつくように、積雪季用に設計されている。夏場は営業をしてないようだった。「フード&ドリンク」の方は、入り口に階段がないので、たぶん夏〜秋専用ではないかとお見受けした。もちろん、冬も除雪して営業することは可能だろうが……。
ゲレ食メニュー
 これは山麓駅の乗り場に貼ってあったメニュー。「フード&ドリンク」なる食堂で提供されている品々のようだった。今回われわれは、現場からやや遠いプリンス・ホテルの「パン工房」(カール・レイモン直営店)のテラス席で昼食にしたので、体験はできなかった。
山麓駅のりば
 写真を拡大してスペック掲示を読むべし。かつてわたしは『日本のロープウェイと湖沼遊覧船』という、今日では企画としてまず不可能なマニア向けハードカバー書籍を作った覚えがあるので、写真のような説明板を見ると、懐かしく、つらつら眺めずにはいられない。なお、このロープウェイは「交走式」ではなく「循環式」だ。あの本をつくったときには、「循環式」には個性的な味も無く、取材のし甲斐が無いと思っていた。しかし今回の搭乗で価値観が変わった。「循環式」は、任意の時刻に待たずに飛び乗ることができ、搬器(ゴンドラ)の中でファミリーがいくら騒いでもよく、しかも窓を開けて手や頭を出して写真撮影することができる。ゴキゲンだ!
途中からの眺め
 北海道駒ヶ岳の東南麓に、蛇行した川筋のようなものがみえるが、これは将来の噴火に備えた土石流阻止の工事痕だと思う。その周辺は広く無人地帯だ。北海道駒ヶ岳は、地下で恵山や恐山ともつながっているであろう活火山で、地表面は鎮静しているのだけれども、地震計には微振動が捉えられている。そのため、入山そのものがずっと規制されたままで、山麓の大規模観光開発も不可能になった。
遠くに羊蹄山
 視野をやや右に転ずると、内浦湾(太平洋)越しに羊蹄山まで望める。羊蹄山/ニセコ一帯は、いまやオーストラリア人に占領されつつあるらしいが、蝦夷の松島と呼ばれる大沼周辺には、シナ人/台湾人のパック・ツアー以外はまだあまり外国人を見かけない。
山頂駅に着く
 ロープウェイ業界では、そこがじっさいは山頂ではなくとも、高い側の駅を「山頂駅」と呼んでおくのが、ならわしである。搬器を降りると、係員が熊避けのベルを渡してくれる。皆がそれをガラガラ鳴らしながら散策していた。山頂駅およびその周辺には、売店は無い。
標高920m地点の案内図
 この案内図によると、七飯ゴンドラの山頂駅は標高920mに位置するようだ。そこから遊歩道(冬はゲレンデになる)を歩けば、さらに984mまで標高を上げられる。
展望の丘984m
 しかし残念なことに、横津岳の北の稜線の延長上に位置すると思われるこの「展望の丘」からの、大沼方向の展望は、植生にさえぎられて、あまりパッとしない。むしろ、ゴンドラの中からの眺めのほうが、パノラミックである。なお、「展望の丘」は、夏は運行していないチェア・リフト(確認しなかったが3〜4人が横並びに腰掛けられるものだろう)の山頂駅の脇にある。
 このさい、ひとつ提案をさせて貰いたい。ホテル&観光開発会社は、この「展望の丘」から、横津岳の頂上まで、尾根線づたいの登山道(兼・クロスカントリースキーのルート)を整備し、横津岳の向こう側斜面のスキー場とも連絡すべきだ。冬なら羆も出ない。このように、「横のつながりオプション」をつけておくことで、利用客の方が勝手に面白い遊び方(orイベント)を創意工夫する。横断的利用の余地が大きいことによって、観光地の集客力は強化されるのだ。こういうことに、そろそろ地方の観光開発業者は気付いて欲しいぜ。
駒ヶ岳演習場と鹿部飛行場
 写真に撮っている辺り(駒ヶ岳の裾野)に、いまはほとんど使われていないと聞く陸上自衛隊の演習場があるはずだ。鹿部飛行場は、行ってみたことはないが、たしか本田技研と関係あり?
横津岳山頂とのつながり
 横津岳の山頂周辺には、国交省の航空管制用レーダーと、気象庁の雨雲レーダー等がある。(詳しくは、函館に引っ越した直後に自転車で探訪した折りの写真アルバムを参照されたい。)このアングルは、その諸施設を、尾根の北側から見上げていることになろう。
山頂駅外観
 2本の避雷針に注目。近くには、落雷で枯れたと思われる樹木も複数、見られた。かつて、四国の剣山のチェア・リフトを取材したときも、避雷木だらけでゾ〜ッとしたものだ。
山頂駅脇から駒ヶ岳
 このロープウェイはまちがいなく、紅葉シーズンの新名所となるだろう。
空母からの発進
 循環式ロープウェイは、搬機がワイヤーを掴んで動き出すときの加速感が面白い。なお、ドアは全自動で開閉する。冬季は、ドアの外側にスキー板を差し込んで運ぶのだ。
小沼湖の鳥瞰
 小沼は大沼と水路でつながっている。その向こうに見えるのは、太平洋(内浦湾=噴火湾)。撮影時刻は午前11時半。
違う角度から位置確認
 これは同日の12時20分、小沼の対岸の「日暮山(ひぐらしやま)」の展望点(303m)に登って、東南東方向に見える横津岳の北麓一帯を撮影したものだ。スキー場の全貌は、くっきりとは望めていないが、だいたいこの写真の中におさまっているはずだ。

(管理人)
 ゴンドラには私は1度か2度しか乗った事がない。それは、それで良いのである。しかし、近日発刊の兵頭[座談会]本[零戦と戦艦大和]そして───兵頭本[新訳 名将言行録]。これは、1度といわず2度でも3度でも読まねばならないのである。ここを閲覧するような兵頭ファンの皆さんも、勿論そうしますよね?
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