AK−93

●”■×”(数字) 連載25周年記念脚本大賞 応募作品


アルバトフ(アンドレイの肩をかい寄せ、ひそひそ声で)
「アンドレイ、どうも中央が、研究所を遠巻きに監視しはじめた気配なのだ。それにモスクワに住むわしの隠れた部下からの情報によれば、中央の連中はいつ治安維持に名をかりてわが研究所にも軍隊や警察を送り込まぬとも限らんということだ。タイワンスキーから契約の手付け金・9万9千ドルをしかと受け取るまでは、誰にもわしのビジネスの邪魔をされたくないからな」

アンドレイ
「そうですか。われわれが横流しした余剰武器で、町の騒ぎはいよいよ大きくなっていますし、われわれの動きが監視されているとすれば、ここにも邪魔だてが入るかもしれません。私は入口に通じる道路を見張っていようと思います」

アルバトフ
「いい気配りだぞ、アンドレイ。さすが元スペツナズ、わが最良の秘書だ!」

アンドレイ
「恐縮です」

アルバトフ
「そうだ、そのモスクワからの通報によれば、一両日前、この写真の男が、国内空港ではなく、軍用ヘリに便乗してチャリヤビンスクに向ったから注意せよ、とのことだ。よくは知らんが物騒なやつらしい。おまえに渡しておこう。」


(写真を受け取り驚嘆するアンドレイの顔。写真にはゴルゴが写っている。アンドレイの頭の中で、自分を殴り倒したゴルゴの姿が思い出される。復讐の決意に燃えるアンドレイの口元。)


アンドレイ
『こんどこいつに会ったら、このナイフで股間を切りとり、ナターリアの鼻面につきつけてやる!』(とナイフの柄を握り締める。光る目。)



(アンドレイのランドクルーザーが走り出ていく。それを土手の陰に身をひそめつつ見送る4人の警官隊。)

警官A
「よし、ふみこむぞ」

(室内。アルバトフの前で、黄は真剣な目で図面を眺めている。ノックの音。アルバトフが戸を見る。警官隊が入ってくる。)

警官B
「警察です」

警官C
「日曜日のビジネスとは商売熱心なことだ。」

警官A(黄にむかって)
「あなたは外国人ですね。この地方の暴動から外国人を保護するようにとの大統領命令が出ています。ただちに私達と安全な場所に移動してください」(と、黄をひきたてるようにつれだす。)


「な、なんだ急に・・・」(といいつつ、あわてて現金ケースと、図面の半分を押し込んだブリーフケースをつかむ)

アルバトフ
「お、おい、待て、契約はまだ済んじゃいない」(といって追いかけようとするが警官B、Cにさえぎられる)「き、貴様ら・・・!」

(双眼鏡を手に見張りに立っているアンドレイ。腰の携帯無線器が鳴る。)

(さきほどの室内。アルバトフしかいない。)

アルバトフ(無線器に向って)
「アンドレイ、タイワンスキーと政府の犬どもに図面の半分とキャッシュを持ち逃げされた!いまモスコビッチ(小型車)でそちらに向っている。弾薬庫地区内には誰も目撃者などおらん。かまわんから、全員AK-93で確実に仕留めろ。金と図面を取り戻してくれ、アンドレイ!」

アンドレイ(受話器からの声のみ)
「かしこまりました。おまかせください、将軍」

(アンドレイ、ランドクルーザーからドラグノフを取り出す。弾薬庫地帯を縦貫する一本道をモスコビッチがやってくる。)

(モスコビッチの車内。車内には警察用のSKSカービン(銃剣無し)が置かれている。後席に座らせた黄の手から図面の詰め込まれたブリーフケースをひったくる警官A。)

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