AK−93

●”■×”(数字) 連載25周年記念脚本大賞 応募作品


警官A
「改めさせて貰うぞ。この武器取り引きは共和国の許可を受けてはいまい!」

黄(とりかえそうとして)
「やめろっ、それは企業秘密だぞ!」

(ビシュッという音。何事か、と一瞬動きを止める警官Aと黄。)

警官A(前席で運転している警官Bに向って)
「おいっ、今のは何だ?」

(警官B、ハンドルを握り締めたまま横に倒れ込む。脇腹に、きれいに抜けた穴があり、そこから血が吹き出している。驚愕する黄の顔。車は減速せずに大きくカーブを切り、横転する。ひっくりかえってタイヤが空回りしている車のなかから警官A、C、および黄が這いだしてくる。2人の警官はSKSカービンを手にしていて、散開し、それぞれ遮蔽物に身をよせる。黄は車の陰にうずくまって様子をうかがう。)

警官A
「気をつけろ!狙撃者はどこだ?」

警官C
「畜生、あんなところにいやがったぞ!)(と、遥か遠くのアンドレイに向けてカービンを発砲する)

(数発の外れ弾の音が通過していくが、それにいっこうに気をかけず、ドラグノフのスコープを規正しているアンドレイ。)

警官B
「その距離じゃ、オリンピック選手でも当たりゃしねえよ」(と発砲する)

警官B
「ここからじゃだめだ。もっと近付こう!」
(と、カービンを持って走り出した警官Bの頭部を”魔弾”が貫通し、警官Bは倒れる。それを見て唖然とする警官Aの顔。)

(アンドレイのドラグノフのスコープの中に据えられた警官Aのうろたえる姿。ドラグノフの発射音。アンドレイの肩越しからは豆粒のようにしか見えない警官Aが倒れる。そのすぐ近くにはひっくりかえったモスコビッチがある。)

(モスコビッチの陰の黄。近くに倒れて死んでいる警官Aの顔面を射貫された形相を間近に見、つぎにアンドレイの方角を透かし見て、すっかり怯えて途方にくれた様子。)


「あいつ、やっぱり俺も殺す気だ!今日が俺の命日か?どうすりゃいい!?」

(再びドラグノフのスコープ映像。黄の足先と顔の先が車の陰からチラチラ見える。)

アンドレイ
「残念だな外国人!今夜モスクワに帰り、世界最高の女達を買う楽しみも消えてなくなるとは・・・」(と、引金をゆっくり絞って行く)

(そのとき背後で大きな爆発音。射撃を中止して振り返るアンドレイ。また、腰に付けた携帯無線器が鳴る。


アルバトフ(声のみ)
「アンドレイ、例の写真の男が弾薬庫地区に潜入したらしい!」

アンドレイ(ウォーキートーキーを手にとりながら)
なんですって?それじゃ今の爆発は・・・!?」

アルバトフ(屋内の無線器の前。窓から遠くに上がる煙を見ながら)
「AK-93の製造設備がある火工品庫ではないようだ。やつのねらいはきっとそうだろうが、火薬庫の外見がみな同じで特定できないものだから、端から火をつけているのかもしれん!すぐになんとかしろ、アンドレイ!わしも行く!」
(アルバトフ、机上に残された半分の図面を急いで鞄につめこみ、それを抱えて屋外に走り出る。)

アンドレイ
「くそっ、あいつ・・・」
(と、煙の方角を見ながら、携帯無線器をしまう)


「い、一体何があったんだ?」

(バンッ、という音がしてモスコビッチの燃料タンクが破裂する。黄、おどろいてとびのく。黄の目の前にガソリンが流れだす。たちまち火がつきはじめる。)

13枚目へ

戻る