AK−93

●”■×”(数字) 連載25周年記念脚本大賞 応募作品


黄(あわてて車から遠ざかるように走り逃げながら)
「今のは誰が射った?俺の9万9千ドルが燃えちまう!」
(走る王の後方で爆発炎上するモスコビッチ。その場で地面に伏せる黄。)

アンドレイ(火薬庫の方にいきかけたが、モスコビッチの異変に気付き)
「図面が・・・!」
(アンドレイあたりを見回す。そして遠方に、停車させたオートバイに腰掛けたまま銃を持ち、アンドレイの方を見ている豆粒のような人影に気付く。M-16を抱えたゴルゴのアップ。ゴルゴ、オートバイを転回させ樹林の中を火薬庫の方に向かう。アンドレイ、それを見てただちにランドクルーザーに駆け乗り、道路を全速で弾薬庫地区にとばし、去る。燃え盛るモスコビッチのそばで煤けた黄がそれを見送る。風が吹いており、煙は横にたなびく。)

(おなじように土手で区画された弾薬庫が整然とならぶ火薬庫地区。一番端の弾薬庫が煙をあげている。その横の道路を通過するランドクルーザー。)

アンドレイ(横目でくすぶる弾薬庫を見て)
『やつめ、一番端の火薬品庫[※信管や雷管、導火線などをおさめる火薬庫]を時限爆弾でふっとばしたか・・・。だがすべての火薬庫にしかけるほどのプラスチック爆弾はなかったらしいな。もっともたった一人でこの広い弾薬庫地区のすべての火薬庫に爆薬をしかけて回れるわけはないが・・・。』

(運転席のアンドレイの視野。道の前方に乗り捨てられたゴルゴのオートバイが見える。直ちに土手の陰に車を停車させ、ドラグノフに新しいAK-93入の弾倉を装填する。銃を持って下車し、稜線に這い上がって慎重に四周を伺うアンドレイ。)

アンドレイ
『どこに隠れた?・・・ムッ・・・!』

(大きな鞄を胸に抱えたアルバトフが、あわてふためいて駆けていくのが見える。視点を転ずると、その少し後ろからゴルゴがみえかくれしながら続行している。)

アルバトフ(一目散に走りながら)
『あの火薬庫は内側から防火扉を閉めてしまえば大砲でない限り壊せやせん!』

(アルバトフはひとつの火薬庫にまっすぐ向かう。)

アンドレイ
「なんてこった!やつにあそこがAK-93の秘密製造所だと教えてやるようなものだ!」(といいつつドラグノフを据銃する)

(強い風が吹いている。ゴルゴがアンドレイの方を見る。アンドレイ、ドラグノフを発射。ゴルゴ、土手上にある消化砂の詰まった1m立方くらいの箱の陰に伏せる。ゴルゴの体のスレスレのところをまっすぐな弾道で擦過するアンドレイの弾。)

ゴルゴ(M-16を抱き、伏せたままの魔弾の飛び過ぎで行った方向を目で追いながら)
『超低伸弾道か・・・』

(アンドレイの位置から、ゴルゴがうずくまったままであるのがみてとれる。)

アンドレイ
「動けまい。この強風でこの遠距離では、貴様のライフルは絶対に命中せん。」

(アンドレイ、勝ち誇ったように立上がりゴルゴの方に歩いて近付いて行く。)

アンドレイ
「厚さ1m程度など、500mまで近付けばこの”魔弾”で射ち抜けるわ。フハハハ・・・」

(ゴルゴ、砂箱の陰からプローんで一挙据銃、アンドレイにむけてM-16を発射する。)

アンドレイ(歩みを止めずに)
「弾のムダだ!つり目の東洋人め。」

(アンドレイの脇腹に横から弾丸が命中する。信じられないという顔で立ち止まり、やがて倒れ臥すアンドレイ。腰のスペツナズナイフに流血が注ぐ。)

アルバトフ(火薬庫の開いている入口から二人の撃ち合いを見ていて)
「なんてバケモノだ、あの遠距離からこの横風にのせてバナナシュートのように軽量弾をヒットさせるとは!」

(ゴルゴ、立ち上がって今度はアルバトフの方を見る。アルバトフ、あわてて火薬庫の中に入り、内側からぶあつい防火扉を閉めにかかる。ゴルゴ、落ちついてM-16を据銃。)

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