AK−93

●”■×”(数字) 連載25周年記念脚本大賞 応募作品


メリツィン
「そうか。わかった。この事故の対策と処理は君に一任しよう。あとで詳しい原因究明調査の報告を聞かせてくれたまえ。」(と、受話器を置く)

メリツィン
『・・・私は秩序の維持のための仕事を、世界有数のテロリストに依頼してしまた。たしかにこの私が、”方法は問わない”と言ったのだ・・・』

(テレビのニュース画面に、続いてデモ隊が映っているがメリツィンはそれに背をむけている。)

メリツィン
『それにしても、あのゴルゴ13がなぜタイミングよく我が共和国内に滞在していたのだろう。ビルゼンスキー君は一足はやく彼と接触していたようだが・・・。あとで彼に問いたださなくては・・・。』

ニュース
「この騒ぎのなかで、アメリカの石油会社社長E・I・マクレーガー氏がホテルの部屋の中に飛び込んできた流れ弾に当たって死亡しました。」(脳天を撃たれたマクレーガーの死体の映像。)『経営者の不慮の死去により、氏の会社は多額の違約金を支払って同地方の石油鉱区から撤退するもようです。これについて政府当局者のコメントです・・・。』

テレビの中でインタビューのマイクに答えるビルゼンスキー
「・・・違約金はロシア政府の国庫に収められます。独立運動がたけなわとはいえ、まだ同鉱区はロシア共和国の領土なのですから・・・。


(壮大な爆発現場跡。黄が煤けた姿のまま歩いている。焼け跡の路傍に腰掛けた2人の老人消防夫らしき男の会話が耳に入る。)

消防夫A
「20年ほど前にも火薬庫の爆発事故があってよ。」

消防夫B
「おう。しっとる。」

消防夫A
「俺は爆発のすぐあとに、中にいたやつが身に付けていた外国製の銀時計が欲しくなって、そいつを探しに入ったのよ。」

消防夫B
「ほう。それでどうだった?」

消防夫A
「それがよ、肉片はおろか、時計のカケラひとつ残ってやしなかった!人間一人が、きれいさっぱり、身ぐるみもろとも、完全に雲になってこの地上から消えちまってたのよ。げに火薬庫の爆発ってのはすさまじいってこったな。中にいた少将さんとやらには気の毒だが、ひとつの遺品も見つかりっこねえぜ・・・」

黄(なおも夢中に話し続けている老消防夫を背にして、歩きだす。ためいきをついたあと)
『いいさ。武器ビジネスの鉱脈はこれひとつだけじゃない。人生いたるところに銀山あり、さ。』
(爆発現場周辺の広漠たる地平。)


「AK-93」終

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