AK−93

●”■×”(数字) 連載25周年記念脚本大賞 応募作品


アンドレイ(人気のない路地まで追いすがって)
「ナターリア、俺は明日チェリヤビンスクに戻らなくちゃならないんだ。つまり今夜しか時間がないってわけだ、わかるだろ」

ナターリア(たちどまり)
「ちょっと、邪魔しないでよ!」

アンドレイ(今度は●”■×”にむかい)
「オッサン、悪いな、こいつはオレの女なんだ。1年前から俺がこいつの保護者も同然の間柄よ。今夜はこいつは商売はシネエ。あんたは他の女を当たってくれよ」

●”■×”は無表情で見返すのみ。)

ナターリア
「やめてよ!この人、ぜぇーんぶのポケットにドル札がつまってるのよ!それにアレだってアンタよりずっと凄いんだから」
(アンドレイをつきのけるようにし、●”■×”をエスコートして行こうとする)

アンドレイ
(カッとなって)
「なんだと」
●”■×”の胸ぐらを掴んで)
「おい、俺の言ってる意味がわからねえか」

●”■×”、アンドレイを殴り倒す。しかしアンドレイ、すぐに起き上がって例のスペツナズナイフを抜く。●”■×”、そのナイフの射出ボタンに注目する。)

アンドレイ
(鼻血を出しながら)
「この日本人野郎、切り刻んでやる!」

ナターリア(青ざめて立ちすくみ)
「だめよ!外国人を殺したら今度は精神病院行きよ!伯父さんも助けてくれないよ!」
●”■×”に飛びかかるアンドレイ。格闘するが、形勢不利と知ったアンドレイは●”■×”に向けてナイフの刃を射ち出す。予期していた●”■×”はそれをかわして逆に一撃を加え、アンドレイは路上にのびる。ビルの裏木戸には発射されたナイフの刃が深々とつきささっている。ナターリア、アンドレイをそのままに、そそくさと●”■×”をエスコートして立ち去る。)


Part 4:遠来の客


(見渡す限りの黒い森林を針のように切り裂く、両端に残雪も見える1本の道路の俯瞰。視点を近づけると中古のトヨタ・ランドクルーザーが疾走している。その車内。運転しているのは顔にアザの残るアンドレイである。隣の席に、背の低い背広姿の台湾人武器ディーラー、黄。)

アンドレイ
「もうそろそろわが”ユジノ社”に着きますよ、黄さん」


「そうですか、よかった。さすがにこの風景にも飽きてきたところです、おや?」(と、右側を見る。柵で囲われた広い荒れ地がある。)

アンドレイ
「あれですか?あれは我が社のシューティングレンジの一角です。のちほどご案内します」


「それは今から楽しみです」

(冒頭のユジノ研究所の敷地に入るランドクルーザー。車寄せではアルバトフが待っている。黄をおろすと、アンドレイはそのまま車を運転してシューティングレンジの方に走らせる。車窓ごしの遠景で、黄とアルバトフが挨拶をかわし、連れたって屋内に入って行くのがアンドレイから見える。ふと視線を転ずるアンドレイ。双眼鏡を手にした怪しい人影がチラと見えるが、すぐ姿を稜線の向こうに隠す。アンドレイ、シートの下からドラグノフ狙撃銃をとりだし、表情を変えずにその人影が消えた方を見ながら運転を続ける。)






(古い博物館の建物の中。明かりの点いた広いホールの中には人影はないが新旧大小の各国製武器の陳列で一杯になっている。連れたって歩いているアルバトフと黄。二人、小火器コーナーの前で立ち止まる。)


「素晴らしい資料コレクションだ。たしか去年のファンバロー[※英国で開催される武器見本市]の後、ロンドン軍事美術館で、18世紀の空気銃に見入っておられるところをおみかけしました」

アルバトフ
「ほう、そうですか。しかし男子と生まれ、武器が嫌いな者などおりましょうか。」


7枚目へ

戻る