AK−93

●”■×”(数字) 連載25周年記念脚本大賞 応募作品


(アンドレイ、古びたドラグノフ狙撃銃をアルバトフに渡す。アルバトフ、銃の弾倉を取り外す。)

黄(意外そうに)
「将軍、それは何の変哲もないただの古びたドラグノフ・ライフルにすぎない・・・ように私には見えますが」

アルバトフ(ニヤニヤして)
「ミスター・黄。やはりわたしの新しい発明品を、新型の自動小銃だと思い込んでいらしたのですね。」


「????」

アルバトフ
(弾倉から1弾を取り出してみせる)
「タネあかしをしましょう。AK−93とは現代の魔弾・・・横風の影響をまったく受けずに1200m以上も直進性を保つ口径7.62mmライフル弾の、開発秘匿名称なのですよ」

(あっと驚いた顔の黄。アンドレイが横目で見て笑みを浮かべている。)

アルバトフ
「それでは、我が助手にしてマークスマンのアンドレイ君に、実際に撃って見せてもらうとしますか。何か、撃ち方にご注文は?」
(弾倉をアンドレイに返す。)

(アンドレイ、ボルトを引いて弾倉を装着、チャンバに初弾を送り込む。そのドラグノフにしげしげ見入る黄。谷風は残雪を巻き上げて強く吹いている。)

(アンドレイが運転席でタバコを吸っているランドクルーザーの脇で、標的を検分する黄。標的とそれを支えていた材木に一直線に5個の穴が開いている。)


「イカサマかもしれないと思いわざとずらして狙ってもらったが、その通りに抜けている・・・(アルバトフを振り返り)弾着の左右偏差がゼロ・・・!なぜこんなことが可能なのですか、信じられない」

アルバトフ
「この現象は、これまでの物理的な弾道学の知識だけでは理解し得ぬものです。」(弾頭のアップ。)「一言でいえば、弾丸の表面を摩擦し、抵抗となる空気の挙動の影響を、表面の空気をイオン化することでゼロに近付けているのです。もちろん製品化にさいしてはもっと複雑なノウハウが盛り込まれているのですが、要するに私は物理的な方法ではなく、科学的な方法によって小火気弾の有効射程を数倍に延ばしたわけですよ。」

黄(感動を目に表し)
「並の銃を持った並の射手でも、距離1000mで10cm内に弾を集められるとしたら・・・これは戦術とテロリズムの革命なるかもしれない。さて、こいつは1ケース一体いくらで売り捌けるだろう・・・」

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