●”■×”(数字)  『カーテン・コール』

没シナリオ大全集 part 4.96


Part 1:遺棄されたものは…


○ロサンゼルス郊外の街路・午前
 ローラーブレードを履いた少年達が坂道をサイドワインダーで下ってくる。
 と、カッコよく滑ってきたその一人が、縁石でズッコケてしまう。

他の少年たち「イッツオールグッド!(*)(といって通りすぎる)」
[※特に意味のないかけ声。最近流行り。]

 少年、うつぶせの状態から、ゆっくりと起き上がると…。

少年「(前方に視線が釘付けになる)…!」

 ゴミ箱と資材置場の隙間に、若い白人女性の足が見える。
 顔についた砂埃も払わず、ゆっくりとにじりよって見んとする少年。
 それは惨殺死体である。

○ベバリーヒルズの豪邸
 新聞記者、TVクルーなど数名が閉ざされた門の前に集まっている。
 そこへ一台の覆面パトカーが回転灯を乗せて到着。
 ドライバー、守衛に警察手帳を見せる。
 守衛が門をあける。
 開いた門から中を覗こうとするマスコミを、守衛、押し返す。
 その間に車、門の中にすべり込む。

○豪邸の中庭に面したバルコニー
 スリムな体を上下黒づくめの皮ジャンで決めた超有名人気黒人歌手、モーリス・マクソン(28)が白い丸テーブルにつっぷして頭を抱えている。
 スリーピーススーツの黒人弁護士(34)が新聞の束を手に、その前を歩きすぎる。

モーリス「彼女が殺されたなんて…エマが死んだなんて…」

黒人弁護士「(一つの新聞の表紙を見て)この見出しも凄い。“若い女性バック・コーラス惨殺される−−被害者はモーリス・マクソンの愛人か?”フン、相変わらず嘘ばっかりだ…」

モーリス「ああ。エマは僕の愛人なんかじゃない、フィアンセだ」

 顔を上げたモーリスは泣きはらしている。

黒人弁護士「(新聞の束を投げ捨てて)何だって、モーリス!それは本当か!?」

モーリス「一昨日の夜、プロポーズした…」

黒人弁護士「こ、顧問弁護士として今日ほど驚いたことはないぞ、モーリス…!」

黒人メイド「あの…ロサンゼルス警察の方がおいでです…(といってすぐ消える)」

黒人弁護士「私が目くばせした質問以外には答えんように。いいね!」

 と、すぐに二人の刑事が屋敷の中を通ってやってくる。

刑事1「モーリス・マクソンさん?はじめまして。ミス・エマ・ラーセンの不幸はもうお聞きでしょうな?」

刑事2「昨日の貴方の行動について、少しいいですか?」

モーリス「僕には下手人は分ってる!パナール・レコードの重役、アダム・ウィックマンだ!」

黒人弁護士「モーリス…!刑事さん、彼はバック・コーラスの死で、興奮状態にあるのです」

モーリス「…ウィックマンを逮捕して取り調べろ!奴が僕への嫌がらせにエマを殺したに決まってるんだ!」

黒人弁護士「モーリス、大きな声をだしちゃダメだ!…刑事さん、ご質問には代って私が…」

モーリス「許さないぞ、ウィックマン!僕の全財産を使っても、エマのかたきは必ず取る…!(と、突然、喉を抑えて苦しがる)」

 困惑する弁護士と、唖然の態の二人の刑事。

(完)


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