●”■×”(数字)  『K計画』

没シナリオ大全集 Part 5.2


Part 5:水面下の解決


(第1トンネルの水爆プラント。構内無線機を手に慌ただしく走り回る武装警備員たち)

武装警備員A
「内郷社長からの連絡が2時間以上途絶えている。警戒を厳重にしろ!」

武装警備員B
「啓水会幹部の方々にも異変はないか連絡をとれ!」

(チャキッ!警備員の手とトカレフの装填動作のアップ)


(第2トンネルの暗闇の中。床の上に松明が燃えていてそのまわりが明るい。そこは、さきほどの石室からさらに進んだ、宮内庁への左分岐トンネルがある場所なのがわかる。しかしその分岐トンネルは奥から入口までセメント袋が積まれ、人一人が通れる隙間しかないようだ。分岐トンネルの入口の対面、つまり本線トンネルの右側の壁面には半分崩れかかったような石室がリセスになっており、そこに滝口が侍従時代のモーニングコートを着てたたずんでいる。近くには自転車が用意されている)

滝口
(誰かに気付き)
「…!」

(暗闇の奥から、背嚢を背負い、チーフススペシャルを擬した●”■×”が現われる。)

滝口
「やはり決行するなら低気圧が通過する今夜でっしゃろな。デ○ーク○郷はん」

●”■×”
「第2の案内人がいるとは聞いていない」

滝口
「あんたにこの仕事を依頼したアタミ補佐官は、シカゴ大学留学時代わしのポン友でな。小松を彼に紹介したんもわし、元侍従の滝口葵どす。」

●”■×”
「…そしてかつての近衛師団長の孫か。ここで何をしている」

滝口
「業界通のテロリストにはかなわんな。」
(ツーリング用自転車を差し出し)
「これ使いなはれ。江戸城は広いで。」

●”■×”
「…」
(だまって自転車を受け取り、各部を確かめる様子)

滝口
「自転車屋のおやじのいうには、ツール・ド・北海道でも使われとる超軽量モデルとやらで、勉強してもろても40万も取りおったで」

●”■×”
「…いいだろう。使わせてもらおう。礼を言う」
(またがっていこうとする。)

滝口(後ろから声をかけ)
「それからな。あんたが行ったあと、ここで大きな音がする。そしたらあんたはもう後戻りはできへん。この宮内庁に通じてる分岐トンネルももう使えんで。」

●”■×”
(分岐トンネルがセメント袋で全長にわたってほぼ塞がれていること、また石室の天井に何か仕掛けめいた古い大石があるのを視認する)
「…遅れた殉死のつもりか?」

滝口
「違う。わしは良性腫瘍ちゅう時限爆弾を9年ものあいだ脊椎の近くに飼うとるんや。そいつがそろそろはぜる前に、この忌まわしいトンネルを永久に塞いでしまいたいのや!」

●”■×”
「…好きにするんだな、滝口侍従。」
(自転車で立ち去る)

滝口(見送りながら)
『あとはたのんだで。●”■×”(数字)…』

(滝口、石室の奥のガレキをとりのける。すると、明治初期の官軍の服装をした骸骨、および、憲兵マントに旧陸軍正帽を被った骸骨の2体があらわれる。その骸骨の右手が指すあたり、古びた大げさな青銅のカンヌキがある。滝口、そのカンヌキを思いきり引っ張りながら)

滝口
「まもなく、皇城の汚された地下にミソギの水が流れる。そのとき昭和が終るのや」

(石室の天井の大石が音を立ててゆっくり反転する。そこからバラバラと小石が降ったかと思うと、すぐに大量の石垣石まようなものがドカドカ落ちてくる。滝口はそのガレキに埋まって見えなくなる。ほこりが静まると、トンネル分岐点も大きな石でほとんど埋まっている。)

(闇のトンネルを自転車で疾走中の●”■×”の背後から、ズズーンという音が追い付いて、通りすぎる。)

●”■×”
(ペダルをこぎつつ背後の闇を振り返る)
「…」

(闇のなかにつきすすんで消えていく●”■×”の自転車)

(トンネルなりに左カーブをきる●”■×”。まもなく、前方に崩落でいきどまりになった箇所が見えてきて、右側に探査坑の入口がある。●”■×”はその探査坑に入る。なお探査坑の内壁はレンガではなく、木の杭や板で土止めしてあるだけ。)

(ブレーキをかける●”■×”の手)

(停車した自転車。探査坑の切り端に到着したことが、ヘッドランプの明りでわかる。)

●”■×”
「ここが探査坑の切り端か…」

(切り端に複数のヘビ穴発破がしかけられているのがコードの結線でわかる。コードは延長用ケーブルドラムを経て発電起爆ボックスに通じている。●”■×”、自転車を降り、その発電ボックスを手にする。)


(水爆プラント室。武装警備員がトカレフを持ってあちこちに立ち、警戒を厳にしている。白衣の技師たちは重要部品の組み立てにいそがしそう)

警備員B
「土木作業員は北の丸出口に集めろ!」

警備員C
「武装警備員はプラント室のまわりを固めろ!」

(プラント室のすぐ手前のトンネルの壁が突如、大音響とともに内側にふくれるように爆破される。あたり一面ほこりがたちこめ見えなくなる。)

警備員、技師たちの声
「なんだ」「どうした」「落磐か」

(ほこりがおさまると、自転車に乗り、M-16を右脇に抱えた●”■×”が壁にあいた大穴から飛び出してくる。たちまち射殺される武装警備員たち。残りの警備員は、トカレフで応戦する。トンネルの前後から警備員が集まってくる。●”■×”、自転車を走らせながら発煙筒を数発ころがし、後方から撃たれないようにしてプラント室へ突入。そこでも警備員数人を倒し、重水タンクなどを銃撃で破壊する。そして自転車を止めてあたりをゆっくり見回し、前方のトンネルの左側の内壁を目視で計測する。」

●”■×”
『水没している探査坑はちょうどあの裏側のはず…!』

(●”■×”、ふたたび自転車を前進させる。そのとき、後方の煙の中からなお数人の武装警備員が追いすがる。●”■×”、ふりむきざまの射撃で彼らを倒す。そして、成形炸薬を自転車のフレームにくくりつけて内壁のその一点にむけてつきはなし、自らは回転しながら着地。そのまま直進して壁に激突する自転車。爆発。●”■×”はただちに起き上がって数本ある奥の坑口のひとつへ全速で走る。)


(深更の蓮池濠。雨が降っているが、御休息所多門がぼんやり水面に映えている。岸に顔を出していたカメが何かを感じて振り向く。)


(プラント室。爆発で開いた小さな孔から泥水が吹き出してくる。生き残った技師たち、あっけにとられてそれを見ている。水はすぐに勢いを増し、やがて奔流となって破口を押し拡げ、ドーッと流れ込んでくる。たちまち水をかぶって転ぶ技師たち。ひっくりかえるトロッコ。梱包の一つが水の勢いで壊れ、ミサイルに取り付ける再突入体の弾殻が転げ出るが、たちまちプラントもろとも泥で埋まっていく。)


(蓮池濠。ゴゴッ、ゴゴゴゴッ…という地鳴り。数尾の鯉が一斉にバシャッとはねる。白鳥がバタバタとさわぎ立つ。そして水面中央にゆっくりと大きな渦巻が生じる。)


(すっかり泥水に埋まったプラントや梱包類。数人の技師の溺死体が流されていく。それを尻目に●”■×”は上向きのゆるやかな坂になっているひとつの分岐トンネルを駆け上がる。水はプラント室を満たすと、●”■×”のかかとを追うように分岐トンネルにも侵入、嵩を増してくる。坂道を駆け上がりながらハッとする●”■×”。分岐トンネルの前方が行き止まりになっている。そこだけコンクリート壁が未完成で木杭が組まれているだけ、床には土工具がいっぱいあり掘削工事進行中であったことがわかる。後ろをみる。水が濁流となって追いかけてくる。明らかにもう戻れない。また前を見る。鉄梯子のかかった垂直坑がある。しかし上方に通ずる小さい孔は頑丈そうな鉄蓋がボルト締めされ塞がれている。鉄蓋には『発射サイロ試掘縦坑』とペイントされている。●”■×”、冷静にM-16を据銃し、鉄蓋を固定している9本のボルトナットを狙って1コにつき2発づつ命中させ破砕する。その間、濁流は膝、腰、胸までと迫るが、ついに鉄蓋は落下し、天井にポッカリ暗い穴が。その開いた穴から地上めざして鉄梯子を昇る●”■×”。相当昇ったところで下をみる。水は垂直坑の途中まで満ちているが、そこで止まっているようだ。)

●”■×”
『濠の水面レベルを超えたようだな…』

(●”■×”、さらに少し昇って上をみる。木の板がかかっている。それを手で跳ねのける。首を上に出して四周を見回す●”■×”。暗くてよくわからないが、黒ずんだ板張りと白壁が剥き出しの古い建物の中のようだ。建物の白壁にはたくさんの隙間があり、そこからどこか近くの街の明りが差し込んでいる。●”■×”、床の上に立ち、壁に歩み寄って、ひとつの隙間から外部を視察する。)

(●”■×”、腰につけた一つのパウチから発信機のようなものを取りだし、スイッチを入れる。インディケーターランプが点滅し、ピーピーと小さな発信音がする。)

(同時刻、雨の都内上空をロイタリング飛行中の米軍のヘリコプターのコックピット。コー・パイロットが下を指さす。)

(東京駅方向から富士見櫓を中心に見た皇居東御苑の俯瞰。その直上に米軍UH-60ヘリコプターが空中停止して、吊上げワイヤーを垂らし始める。)

(富士見櫓に視点を近付ける。そのひとつの千鳥破風のアップ。葉巻をくゆらせている●”■×”(数字)がその内側にいる。ヘリコプターの音が近付く。)

・・・・・《「K計画」完》


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