一切ヤラセなしっ!

没シナリオ大全集 Part 8.8


【ゲンゴロウを守れ】

ムツゴロウが大事だというなら、ゲンゴロウや蛭や田螺の立場もあるに違いない。某県某地で、諌早湾干拓のようなことがまた行われるというので、市民団体や人権派弁護士が騒ぎ、市民派政治家とマスコミが現場に殺到し、自然保護のかけ声とは裏腹な、メチャクチャなヤラセ演出のオンパレード。その騒ぎの取材で出遅れた某キー局は、鬼鞍に特別に超エグイ映像を発注。派遣された浦山の取材班は、一発逆転の切札として九州で「虫の楽園」を構えている有名な虫博士をひっぱりだすが、こいつがじつはおのれの興味を満たす実験のためなら小動物の命など屁とも思わない奴で……。

【無公害エンジン?】


 企業イメージ戦略の一貫として、日本の某自動車メーカーは、新開発の乗用車用の二酸化炭素を抑制したエンジンを大々的に宣伝することにし、それをCFではなくドキュメンタリーで報道させようというヤラセ企画を大手広告会社経由で局に申し込んできた。民放にとって自動車産業は最大の顧客であるから、絶対に断ることなどできない。とはいえ、モロタイアップのヨイショ番組は倫理上問題があるので、あとあとのことを考え、その仕事を、潰れても構わない「イーゾー映像」にもってきた。
 ところで、二酸化炭素を減らす最も良い方法は、単純にマイカーを減らすこと。なぜなら、自動車から出る二酸化炭素の7割は、マイカーが出しているのだ。この根本の矛盾から視聴者の目をそらせようというのが企業の目論みであったが、宗谷が張り切りすぎたために、意図とは逆なイメージのビデオができあがっていく。納入〆切が迫り、頭を抱えた浦山は、映像のなかにガラスの反射をさりげに写し込み、そのなかでサブリミナルを使うという究極の裏技を編み出して、イメージの大逆転を図ろうとするが……。

【NこそA級戦犯】


 日本がマルチメディアでアメリカに大きく遅れをとった原因は、じつはNHKのハイビジョンにあった。N研の技術バカたちが、映像のわずかな質にこだわり、圧縮技術も未熟なのに、走査線の数で妥協をしなかった。そのため、ハイビジョンはどうしてもアナログ方式にするしかなくなり、アメリカのデジタル端末のようにパソコンのモニターとの共用やデジタル衛星放送とのリンクが不可能になってしまったのだ。アメリカはさすが映画先進国だけあり、どんなにテレビの走査線を増やそうとも、70ミリ光学フィルムをテレビ大の面積に投影したときのまさにモノがそこにあるかのような迫真度にはかなわないことを先刻承知していたから、走査線数にはあまりこだりがなく、すみやかにデジタル対応ができたのだ。しかしNではその非難攻撃を回避するために、日米のパソコン普及度を比較した特集を組み、いかにも日本の官庁の無策が今の遅れをもたらしたように視聴者をだまそうとしている。[以上はすべて事実。]
 さてしかしこのままでは日本はデジタル放送とマルチメディアでアメリカに負けてしまう。民放連はひそかに「イーゾー映像」にそれとなく国民を覚醒させる番組をつくらせようとする。たとえばワープロとファックスの普及度でくらべたら、日本はアメリカには一歩もひけをとっていないのである。Nのやっていることは責任回避の犯罪的な世論誘導なのだ。
 しかしこの番組が放映されるとヤバイとみたNHKはネットの総力をあげて「イーゾー映像」を妨害しようと……。さて、鬼鞍らはどう反撃するか?

【生涯学習は宝の山?】・他

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