interview with ─── vol.3


管理人:日本で唯一人の軍学者であり兵頭流軍学開祖 兵頭二十八先生が函館へ御引越しされたのは周知の事実だ。兵頭流軍学界のわらしべ長者と呼ばれる不肖・管理人も御見送りさせていただいた一人なのだが、開祖は函館移住を機に遂にインターネットに加入された。
ネットにうずまく誹謗中傷罵倒論考意見提言批判奇声...etcを軍学者はどう見るのか?
また、一般の人があまり知らない(あんまり知る必要もない)ミリタリー業界とはどんな所なのか?
それを知る一助となればこれにまさる幸いはない。
尚、いつもの事ながら、川崎在住の管理人が一体何処でどうやって函館在住の兵頭先生に新春インタビューなど試みたのか───余計な詮索はしないように。
もういい加減皆わかってる筈だ。

interview with ───

(2003年度新春インタビュー)

兵=兵頭先生
管=管理人


管:新年おめでとうございます。

兵:おめでとうございます。管理人さんやファンの皆様には、今年は良いことがたくさんあるように、お祈りを申し上げます。

管:恐縮です。昨年末はバタバタしていまして、根本的な質問を兵頭先生にぶつけられなかったような気がする。正月で落ち着いたところで、少しそういうお話が戴ければと思います。

兵:バタバタしているのは私もいつも同じですよ。何でも聞いてください。

管:函館ご転出後の2002年の12月末にインターネットを開通されて、もうご承知になっているかもしれませんが、いろんなサイトでの「兵頭批判」に、いったいご本人はどうお考えなのかな……と。それをまずお聞きしたいです。

兵:うーん、自分の名前で検索してみて、ヒット数が60件ならば全部読みたいし読む体力はあるけれども、600件を超えているなんて正直なところ、もう読み抜く気は失いますよ。インターネットは便利なようだが、あれでは本当に大事な情報は、つまらないどうでもよい情報の洪水のために、すっかりマスクされてしまうでしょうなあ。そんなことも発見したが、……してる場合じゃないか。だが、いくら自分のことが書かれていると知っててもねえ。小さなノートパソコンの画面は本当に目が疲れるんですよ。遊び人のように見えて忙しいのがフリーライターなんで…。調査と執筆と、東京との打ち合わせの他に、家事も買い物も納税も、ついでにここでは雪かきも、全部己れ一人で片付けてるんですから。ただ幸いに、私のそのサーチ・コストを省いてくださる、間接的に要約した内容を時々教えてくれる有難い方がいたりしますので、これまでで、いったいどのような方面に批判があるのかは、かなり承知しているつもりですよ。そして勿論、あなたのような愉快なサイトもあることもね。

管:これは恐縮です。でも、絶版でもう誰も書店では買えない本なのにもかかわらず、いまだに無名な奴から内容を批判されて頭に来ないスか?
 どうせ学生でしょ、あの連中。

兵:いや、私の大先輩の批評家でいらっしゃる東大駒場の松原隆一郎さんは、自分の名前でネット検索してみると、それこそ全部悪口ばかり書いてあるので辟易すると、そんな話をどこかで漏らしておられましたっけ。たぶん多くの有名評論家の方が、この松原先生と類似のご感想をネットに対してはお持ちなのではないでしょうかな? 
 一市井人の方があるオピニオンを支持する場合は、それは、自分でネットに何かをわざわざ書き込んだりするエネルギーの熱源とは、なりにくいものですな。そこまでする熱源になるのは、欲求不満とか、憤懣とか、嫉妬心を大いに刺激されたときだ。まあ、これに加えて、ヒマつぶしもあるかな?
 ともかく、高等動物であるヒトは、誰しも嫉妬心を抱くことがあるはずですが、大人の男ならば理性でそれをパブリックには隠そうと考えます。つまり、その自分の卑しい本能を第二者に知られたら恥ずかしいと、第三者の目で自分の姿をチェックする、もうひとつの自我の打算が働くもの。
 それでたとえば江戸時代の戯作者のノリの中には、その嫉妬心の昇華もあったはずなんですよ。現在、「オタク」でちゃんとお金を稼いで喰って居られる方々も、パブリックなポーズとして、計算されたオチャラケができる方々です。
 ところが、自分の幼稚な顔がパブリックには見られる危険のない場所、たとえばこのネットのようなところでは、男のジェラシーのような、社会的には最も恥ずかしい表情が、そのままストレートに書き込まれることになるのですね。その人達は自分の知識でパブリックにお金を稼ごうとは思ってないので、自分の人格や文体を商品と考えない。だから頼まれもしないのにみずから幼稚さを全開にして「男を下げ」ても、平然たるわけです。

管:そういわれれば、岡田斗司夫さんは、あれでなかなか敵が多い人なんじゃないかと思ってますけど、絶対に公式の場では、崩れませんね。言語活動のスタイルが。

兵:だから私のとても尊敬できる知的“男”のお一人なのです。岡田先生は。もっと白状すれば、私が映画の観かたというものを学んだのも、岡田さんからタダで送って戴いた本からですよ。

管:それで、まあ人品の下った「荒ラシ」風情のようなのは、これは軽犯罪者と同じで全国どこにも居るとして、事実の間違いをあげつらってウザくつきまとってくる、ミリタリー・オタクの方面については、いかがなものでしょう?

兵:私がかつて1年以上もミリタリー出版の真っ只中に居て、多くのオタク達のやり切れぬ怨念のようなものをこの目で見、この耳で聞き、肌で承知していない訳はないでしょう。知っていて遠慮をできないのが私のスタイルなので、それも崩せないのですよ。

続く

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