没シナリオ大全集 Part 11
<日本核武装>の風景
原作/兵頭 二十八
○時間経過・首都地下の某地点
ガタン、と電動カートが停止する。別なトビラの前である。
仁科「今日の説明は終りだ。(トビラを親指で示し)この上で昼飯でも喰って、社に戻りたまえ。明日の指示は、また伝える」
佐藤「(カートを降り)せ、専務……。自分にはイマイチその「プロジェクト」の全体像が、よくわかりません」
仁科「わが社が分担しているのは「プロジェクト」の防御面……しかもそのごく一部だ」
佐藤「えっ……てことは、もしかして「攻撃面」もあったりするんスか?(バックにICBMの地下サイロからの発射シーンがダブる)」
仁科「私の口から言えるのは……キミと同じように戦後教育を受けてきた各分野のスペシャリストが「プロジェクト」の主役になる。だから頼んだよ、佐藤主任(と、カートを運転して、トンネルの分岐線の暗闇の中へ消えてしまう)」
佐藤「ど、どうもお疲れさまです、専務!(と、暗闇に向ってお辞儀)」
○トビラの内側(じつは都心の某デパートの地下の廊下)
鉄トビラがギギギ……と開けられ、佐藤が中をそーっと覗き込む。
佐藤、少し安心して、汗をふきながら、脱力した様子で中に入ってくる。
佐藤「(数歩進んだところで、あっと驚き)こ……ここは……!?」
○デパ地下の展望
開店後1時間ほど経って来客も多い、食品売り場とドラッグストアその他もある、某デパートの地下の賑わい。
婆さんもいれば子供もいる。
佐藤の声「デパ地下だ!!」
【挿入解説文】●公共核シェルターと地下トンネル網
現代の核ミサイルは、都市に落とすときは、地表から一千m〜数千mの上空で起爆させ、クレーターをつくらないようにプログラムされます。クレーターが掘られるほど低い高度で爆発させますと、火球が地面を蒸発させるときに大量の熱エネルギーが奪われてしまい、また熱線をさえぎる陰も生じて、広い面積に破壊力を及ぼすことができなくなるからです。上空で起爆させれば、地表からはねかえる衝撃波と、起爆点からの衝撃波との合成力により、水平方向への危害距離はほぼ倍増するのです。
また、どの国も核爆弾を無限にたくさん持っているわけではありませんので、敵国の首都に配分される核弾頭の数は、4発くらいです。(「不発」や「外れ」の確率もゼロではないため、3〜4発を集中することで「保険」にもしています。)
これは何を意味するかというと、爆心の直下ではシェルターも無傷ではすみませんけれども、爆心から3km〜4km離れますと、ただの地下駐車場のような施設が、メガトン級水爆に対しても、シェルターの代用機能をはたしてくれるのです。
日本国政府および東京都知事は、都心のいたるところに、公共の地下駐車場を整備すべきでしょう。特に病院や官公署の駐車場は、地上式では防災の役に立たないのではないかと心配されます。
地下鉄のトンネルや、下水道・共同溝なども、大都市が核攻撃をうけたときに、住民が安全に郊外に避難するための緊急の通路として、たいせつです。