没シナリオ大全集 part 3


自分で解説:この試作品は1991年の夏より前に書いたものだ。持ち込みのための梗概が冒頭に添付されているから、特に内容の説明は不要だろう。著者としては、日本の原作者の誰も手を出さない分野(この場合は「英米法」)を開拓したかったが、売り込みは完全に失敗した。しかし全く懲りずに、数年後には脳外科モノに挑戦することになる。若いエネルギーは素晴らしいネ。

ACQUITAL(無罪放免)

シリーズ設定のご説明と、第一回【CASE・1】のあらすじ


法廷推理シリーズです。
 法曹学生の最後の学期に婚約者を殺して服役し、「異常性格猟奇殺人者」の烙印を押された前科持ちの日系女性弁護士・ヘイゼル・ヨコタ(30)が主人公。
 彼女は獄中で司法試験に合格し、出所後、かつてのムショ仲間を法曹助手に、東部ニュージャージー州トレントン市(州都で警察・司法・各級裁判所も集中)で開業。勝ち目の薄い“異常な”刑事事件を担当しては、大陪審での無罪に導いていく。
 彼女の信念は、「正常な人間は異常な面も当然に持つ」。
 なお、彼女は自分の事件については公判中も完全黙秘を貫いたので、その真相は、今もなお謎に包まれている。刑務所内でもそのことを語らなかったため、同房の受刑者からリンチを受けたが、そこでも完黙し続け、顎にナイフの切傷がある。このときヘイゼルの根性を見込んで助けたのが牢名主のカラミティ(24)で、彼女はヘイゼルの弁護で出所した後は助手となって事件の捜査にあたる。
 また、仕事上のライバルの州地区検事補ダニエル(30)は、ヘイゼルが殺した婚約者の義理の弟であるが、後にはヘイゼルを助けたりするようになる。


☆第一回のプロット。

ある晩、ジャージーシティ郊外の、白人寡婦ジョアンナ・ローク宅前庭で、プエルトリコ移民フアン・ルイスなる中年男性が射殺され、ジョアンナの部屋にいた日本人留学生タナカが、ジョアンナ強姦とルイス殺しの容疑で訴追された。
 タナカは英語がよくわからないこともあって、取り調べにあたったモレノ警部に、いいように調書をつくられてしまう。物証も状況も不利であった。
 拘置所からタナカの依頼を受けた一匹狼の刑事弁護士ヨコタと助手カラミティは、ルイスが実は数年前に南米の飛行機墜落事故で死んだと思われていたサミュエル・ロークの成れの果であること、ジョアンナとモレノはサミュエルの行方不明以後、密通関係にあり、共謀してタナカを陥れたのではないかとの確信を抱く。
 ダニエルもモレノを麻薬犯罪関与の疑いで取り調べ、その結果、五年前にヨコタが服役することになった婚約者惨殺事件でのモレノの重要証言も、あてにならないことを知る。しかしタナカ事件の真相までには思い至らなかった。
 いよいよ公判開始。ヨコタの透徹した証人質問が、事件の謎を容赦無く暴いていく。窮地に追い詰められたジョアンナは遂に…。

○次回以降の構想。

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