没シナリオ大全集 Part 8.9


歌舞伎町×番地


自分で解説:これはモノになったのだろうか? 確かにある専門学校の役員の人に文章を渡し、後で現金が振り込まれてきたのである。しかし、上演されたとは聞いてない。なんと、専門学校で自主公演したいという、ミュージカルのシナリオ原案だ。ストーリーの出来はよくなかった。反省。

あらすじ

ここは新宿の市街化区域のど真ん中にあるビル新築現場。
 田中葉子(27)は、建築デザイナーを目指しているのだが、事情により今は警備員をしている。葉子はかつて大学同窓で建築家志望であったが今はどこにいるかも分らない御巫覡[みかなぎ](28)が忘れられない。
 その御巫覡が、葉子の現場に、すっかり変わり果てた姿となって登場する。
 なんと御巫覡は建築士となる夢が挫折し、いまでは「マグニフィック開発」社長の高蔵(65)の有能な部下として、地上げから施工監理まで、このあたりの再開発の陣頭指揮をとっていたのだ。健康に不安のある高蔵社長は、この一連の再開発計画(総合カジノビル群)が成功すれば、御巫覡に経営を任せて引退するつもりであった。
 御巫覡は、隣りのボロアパートに居残る最後の住民である「せつ」という名の一人暮らしの女性(68)を追い出そうとしていた。せつ婆さんは住み慣れた新宿を出たくないといって頑強に立ち退きを拒んでいたが、御巫覡の口から高蔵社長の名前が出ると、なぜか急にそれまでの態度を変え、御巫覡からの謝礼も拒否し、ホームレスになるといって部屋を出て行った。
 そこにマグニフィック開発の社長・高蔵があらわれる。
 高蔵は幼少の頃、信州の田畑を人にだましとられてしまったという過去があった。それで自分も東京に出てきて不動産屋になったのだが、最初に「川中島ビルディング」という小さな不動産屋を設立して独立するとき、東京で水商売までして援助してくれた姉が、今日まで三十年間も行方知れずとなっているのだった。
 御巫覡から報告を受けた高蔵は、住民票をみて、御巫覡がアパートから立ち退かせた最後の住民こそ、自分の長年探していた実の姉であったことを知る。
 せつ婆さんはすでに自殺を決意してアパートを出たのであったが、トラックにとびこもうとしたところを御巫覡に助けられる。御巫覡は身代りに重症を負う。
 葉子の前にかつぎこまれてきた御巫覡は、自分は意志の弱いダメなやつなんだと打ち明ける。
 高蔵も姉のせつに許しを乞うが、老人を住み慣れた街から追い出すような事業をしている弟の世話にはならないといわれる。いまや改心した高蔵は、御巫覡が治ったらこの総合カジノビルを独居老人用のアパートに設計変更させると誓う。そのデザインは、むろん、葉子がやることになった。ハッピーエンディング。

1場

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