没シナリオ大全集 part 4


●”■×”(数字)  『13番目の陪審員』


自分で解説:陽の目を見た作品の蔭には、闇に葬られた作品が山とあるもの。これは、某有名劇画用に提案したものの、○学○の担当編集者さんの段階で、すべてハネられてしまったものだ。当時、私は、まだまだ脚本の修業中なんだと自認していたから、ハネられたものはもう顧みずに、全く別な試作品を提出することにエネルギーを注いだ。それが勉強だと思っていたのだ。さあ、みんなも勉強しよう。売れない原作の見本は、コレだ!

Part 1:罠にはまった(アルファベット)


○テネシー州の田舎を走るインターステイト道路

 深南部であるテネシー州の田舎をどこまでも延びる州道。
 その上を、一台の車(仮にマスタング)が爆走している。
 その後方から、テネシーの一カウンティ(一郡部,一地区とも)のシェリフらのパトカーが数台、サイレンを鳴らしながら追跡してくる。
 パトカーからはマスタングに向かい、間欠的な発砲がある。

○マスタング車内
 逃げている車の運転者は○”■△”だ。

○パトカー車内
 追跡を指揮しているのは当地区のカウンティ・シェリフ(地区保安官)、バーナード。

バーナード(45)「逃すなよ、隣りのカウンティ・シェリフの手柄にはさせねえ!」

運転している警官「これが最大速度ですよ、バーナードさん」

 助手席のバーナード、相当の遠距離から散弾銃の狙いをつける。

バーナード「…テロリストめ、これでも食らえ!(ショットガンを発射)」

○マスタング車内
 バラ弾がリアウィンドウやボディのあちこちに孔を開ける。
 振り返る○”■△”

○”■△”『…これは誰の罠だ…?』

 バックミラーを見ると、他のパトカーもやたらに拳銃を撃ち掛けてくる。
 前方に小さい町が見えてくる。
 アクセルを踏み込む○”■△”

○隣りの郡(カウンティ)の保安官事務所
 奥に拘置所の格子がある小さい事務所内。
 机を挟んで、この地区のカウンティ・シェリフ、トレバース(30)と、女性弁護士(26)のサラが、いつもの言い争いをしている。

トレバース保安官「残念だな、サラ、バッドニューズ・バーティならもう保釈したよ」

サラ弁護士「ひどい!このカウンティで開業して半年も仕事なし!?」

トレバース「(にべもなく)こんど交通事故でもあったら真っ先に知らせてやるよ、弁護士さん」

 突然○”■△”の車が保安官事務の入口に鼻を突っ込んで停まる。
 唖然とするトレバースとサラの前に○”■△”、ドアを開けて悠然と出てくる。

○”■△”「(平然と)アイムソーリー、スピードを出しすぎたようだ」

トレバース「か…過失を認めるのか、よ、よし…!」

 事務所の表にバーナードらのパトカーが相次いで急停車する。

バーナード「(武器を構えたまま車を降り)やつが武器を捨てる前に合法的に殺っちまえ!裁判など州税の無駄ってもんだ」 

 警官ら、武器を構えたまま保安官事務所になだれ込む。

バーナード「おいっ、表のマスタングを運転していた東洋人は!?」

トレバース「これは隣り地区[←ルビ=カウンティ]のバーナード保安官…。その男なら交通法違反の現行犯で留置したよ(と、奥の格子部屋を親指を立てて示す)」

 バーナードら、『しまった』という顔で、向けた銃のやり場に迷う。

バーナード「トレバース、あいつは重罪容疑の凶悪犯だ!我々が取り調べたいことがあるから引き渡せ(牢屋に近寄る)」

トレバース「(バーナードの肩に手をかけて)おい、銃を持ったままなんて穏やかじゃないぞ!第一あの男は無武装だった」

バーナード「大学出のおぼっちゃんには関係ねんだよ!(と、トレバースを突き飛ばして牢屋の前に殺到せんとする)」

サラ「(突然しゃしゃり出て身を挺して遮り)だめよ、この地区[←ルビ=カウンティ]で逮捕された犯人を他所のシェリフに引き渡す法的根拠はないわ!」

バーナード「(審判に抗議する監督のように威圧し)お嬢さん、アンタは何者だね?」

サラ「(負けじと虚勢を張って)このジョン・ドー(※米国の裁判で本名不明の男性当事者を呼ぶ便宜上の名)氏の主任弁護人よ!」

 トレバースとバーナード、サラの顔をまじまじと見つめる。

○”■△”「…」

トレバース「と、とにかくこの男は俺が取り調べ、テネシー州法務局に送致するから、別件容疑があるなら地区検事を通してくれ!」

サラ「分かったでしょ!さあ、あなたたち、帰んなさいよ!」

バーナード「チッ…女弁護士さん、後悔するぜ!」

 捨てぜりふを後に、憎体に保安官事務所を出て行くバーナードら。

トレバース「あいつは州内でも“射ってから逮捕”するんで有名なシェリフさ。…お前、一体何をしでかしたんだ?」

○”■△”「…」

サラ『やったわ、とうとう凄そうな刑事事件にありついた!』

Part 2

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