没シナリオ大全集 part 4.6


●”■×”(数字)  『フォール・ライン』


自分で解説:山岳モノ、それも沢登りの大スケールのやつを一度書いてみたかったが、中途で挫折してしまった。途中から、計画プロットのみを添付している。

Part 1:事故


○カラコルム山脈上空を飛ぶ小型ビジネスジェットの機内
 客席に座る商社マン風の日本人、安藤部長(46)が、青写真、図面、航空写真、数値表などの資料を隣りの座席に積み上げ、見比べている。
 客席には安藤の他に他に誰もいない。
 安藤、手にした書類から目をそらし、ふと窓から下の景色を見る。

○同機・全姿
 機の下に広がるのは、山脈重畳する大高原地帯である。
 雲多し。

○同機内
 安藤、足元のケースからラップトップパソコンを出し、膝の上にのせる。
 電源を入れる指のアップ。
 ブーンという音がしてハードディスクが回りだし、液晶画面には、“既作成文書”として、“調査見積り報告”“出張報告”の二つがあることが表示される。
 安藤、そのうちの“出張報告”の方にカーソルを合わせ、ワープロソフトを立ち上げる。

○同機・操縦室
 パキスタン人風の機長と副操縦士である。

副操縦士「んっ、なんだ!?」

機長「どうした?」

副操縦士「操舵系の具合が突然おかしくなりました!」

機長「代れ…(操縦桿を取り)…変だな、いうことをきかん…!」

○客席
 安藤、機体の動揺を感じて、首を伸ばして操縦室扉の方を見る。
 その膝の上では、ハードディスクの回転音が…。

○機体全姿
 あっという間に姿勢を崩し、錐揉みに入って降下していくビジネスジェット。

声「わあーっ!」

 機体、ケシ粒のように小さくなり、大きな谷の間に消えて見えなくなる。
 その後を、雲塊が覆い隠す。

○パキスタン=中国国境の山岳地帯

 霧を通して、ドドド…という連続音が聞こえている。
 霧の切れ間に、残雪の残る岩だらけの山肌が見え、険しい渓谷の中であることがわかる。
 少し視点を移動させると、まだら雪の上に傷だらけの安藤が、小岩に背をもたれかけさせ、虚ろな目を開けている。
 安藤の膝元にはラップトップパソコンがある。
 安藤、パソコンに指を伸ばそうとするが、そのままガックリとこと切れる。
 視点を引くと、安藤は急な谷地の雪渓の岩棚のようなところで進退極まって餓死したものであることがわかる。
 そのすぐ脇に落差の大きな細糸状の滝がある。
 ドドド…という音は高原の雪解け水が滝壷に落下する音であった。
 さらに視点を空中高く上げると、このあたりの人を寄せ付けない地形がよくわかる。
 滝の音はしなくなって、かわりに谷風のヒューという音がするようになる。
 そして、谷のずっと上流の岩山の中腹に、ビジネスジェットが墜落大破しており、その残骸の周りにパイロット二人の死体が転がって、鳥の餌食になっているのが見えてくる。

○東京・俯瞰
○新宿駅ホーム
 中央線の上り列車が入線してくる。
 ドッと降りる乗客の中に、南洋化工建設(株)の役員然とした永峰チーフ(54)。
 永峰のポケベルが鳴る。

永峰「(ギクッとした態で)…」

 永峰、ホーム中程の公衆電話を見付ける。

○南洋化工建設・本社ビル
 ビル全景、社名看板も見える。

○同ビル・重役室
 渋面を作って苛々と電話を待っているのは、永峰の上役の一人である専務。
 机上の電話がなる。

秘書(スピーカー)「専務に永峰プロジェクトチーフから外線です」

専務「(ボタンを押し)…永峰か、何度も呼んだのに何をしておった!」

○新宿駅ホーム

永峰「(電話機に)専務、その後どうでしょうか?」

電話の声「寝ぼけるな!UNIDO(*)からも北京からも、世銀ソフトローンはどうなるんだと、矢のような問い合わせだ!」
[※国連工業開発機構。]

永峰「(弱々しく)しゃ、社長は…?」

○重役室

専務「良く聞けよ、あの見積りが第三者に漏れたらな、この事業が消し飛ぶだけじゃない、資金がショートして倒産だよ!…俺も社長も絶対に責任者を許さんだろう!」

 と、壁の社長の肖像写真を見ると、いかにも執念深そうな面構え。

○新宿駅ホーム

電話の声「…家族も路頭に迷わせてやる!心中にまで追い込んでやるからな、…聞いてるか、永峰!」

永峰「(青ざめ、震え声で)い、一週間休暇を下さい!必ず見積り書を取り戻してきます!」

 永峰、電話を一方的に切る。
(永峰は銀行に連絡を取り、私財から巨費を捻出する。そして次のシーンで学術調査隊を組織する。なぜかその中に○”×▲”がまじっているが、彼はアセアンからの依頼を受けていた。) 

プロット

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