●”■×”(数字) 『1マルクの神聖帝国』
没シナリオ大全集 part 6.1
Part 4:「ブルズアイ」
※ブルズアイ=直訳すると「牡牛の片目」だが、「真ん中に命中」という意味で使われる熟語。
(ウォルフ、地上にしかけた超小型CCDカメラを液晶テレビでモニターしながら、遠隔スイッチを握り締める。少し離れたところ、マンホールの直下に加速装置が上を向けて設置してある。その電源は、共同溝の電力ケーブルから盗んできている。)
ウォルフ(車の通らない路上を映すモニターをみつめながら)
「…」
(地上。市内に入ってきたメルツェデス。迂回の支持板が道を塞いでいる。)
運転手
『あれ、こんなところで工事あったかな?』
(後ろをミラーで見るがシュッケルトは目をつぶっている。)
(メルツェデス、迂回の操向を切る。)
(メルツェデスの後ろ遠方。停車中のオートバイ。●”■×”がヘルメットをとって、右折していったメルツェデスを見送る。街路図を取り出して見る●”■×”。再び顔を上げて前を見る。)
●”■×”
「やはり下からだな…。」
(●”■×”、オートバイを降り、中味不明の大きなガン・ケースのようなものを持って近くのマンホールを開け、中に入る。早朝でもあり、路上に人気はない。マンホールの中は、電力、電信、ガス、水道の共同溝になっている。●”■×”、そのうちの太い送電ケーブルに注目。ケーブルは闇の奥へ通じている。)
●”■×”
『…電源はこのケーブルからとるしかなさそうだな』
(●”■×”、自分のすぐそばの電線の集合管をサイレンサー付のリボルバーで銃撃し、ケーブルを寸断する。激しい火花。)
(地上。マンホールの方へ走り来るメルツェデス。その車内。後部座席でシュッケルトが沈思黙考している。)
(地下。)
ウォルフ(モニター画面を見ながら)
「そろそろだな。」
(加速装置から異音がする。)
ウォルフ(加速装置のメーターの針の動きをみて)
「なにっ…急にアンペア計が…!?(モニターを見て)だが、まだ間に合う!」
(地上。メルツェデスがマンホールの上にさしかかる。)
(地下。ウォルフの手がリモコンのスイッチを入れる。)
声
「今だ!」
(加速装置にバチバチと電流が通じる。一瞬、上向きのブラスト。同時にたちこめた煙がすぐに晴れるとケーブルは焼き切れている。)
ウォルフ(何も映っていないモニターを見つつ)
「やったか…?」
(地上。下からの爆発的なエネルギーを受けてマンホールがめくれ上がり、ちょうど上を通りかかったシュッケルトの乗ったメルツェデスの底板を激しく打つ。)
(車内。シュッケルト、ガツンという衝撃を感じる。)
運転手(バックミラーでシュッケルトを見つつ)
「地雷のようなものが爆発したようです。このまま走行し、警察に緊急連絡します。」
シュッケルト
『一体誰が…?かつてヘイグNATO司令官の乗車をテロリストが地雷で爆破しようとして失敗したことがあったが…。まさか…ダールが!?』
(装甲メルツェデス、少し煙を引きながら増速して走り去る。)
(地下。●”■×”、街路地図を床に置き、M−16の弾倉を交換。今度はウォルフのいる方向の共同溝の暗闇に向けて据銃。サイトは暗闇しかとらえていない。)
●”■×”
『次のマンホールまでの距離は350m、勾配1/1000m、ガス管の床面からの高さ約10センチ…』
(1発発射する。)
(ウォルフのそばでガス管に命中弾。裏まで貫通。2つの破孔からガスが吹き出す。)
ウォルフ(壁際にはりつき、闇の奥を窺いながら)
「何者だ、ガス管にきれいに孔を開けやがるとは?(床にころがっている弾頭を見て)…鋳鉄とは最も摩擦抵抗が小さくなる真鍮のジャケット弾を使ったか!」
(たちまち共同溝内に都市ガスが充満する。口と鼻を左袖で抑え、反対方向へ駆け出そうとしたウォルフ、パトカーのサイレンの音にハッと気付いてあきらめ、逆に●”■×”のいる方向へ向かう。充満するガスに追われるようにしばらく進んだウォルフ、ギクッとする。防災マスクをした●”■×”がライフルのようなものを持って闇の中から姿を現わす。ウォルフ、とっさに拳銃を抜く。)
ウォルフ(左手は口に当てたまま右手の拳銃を注視。後方からはシューシュー音が聞こえている。)
『…い、いけない!ここで銃を発射すれば都市ガスの混合気に…!』
(ウォルフ、●”■×”がライフルを構えたのを見る)
ウォルフ(拳銃を持った右手を振り)
「やめろっ、撃つなーっ!銃口炎[←ルビ:マズルフラッシュ]でガスが爆発するぞーっ!」
(●”■×”の持っていたのは空気銃。オープンサイトはウォルフの片目に重なっている。パンという乾いた音が響く。ウォルフ、顔面から出血しながらゆっくり仰向けに倒れる。死体の頭部のアップ。弾は目から入り脳に盲貫となっている様子。)