●”■×”(数字)  『ジョージの贈物』

没シナリオ大全集 part 9


Part 4:ナポリを見て死ね


(某街道。オフィシャルな感じの車が走って来てとまる。窓が開き、エンリコ・チェザリオ検事が顔を出す。)

エンリコ(あたりを見回しながら)
「いそいで乗れ!…おい、どこだ?」

ガンビーノ
「もう乗ったよ」

(ガンビーノ、いつの間にか後ろのドアを開けて乗り込もうとしている。)

エンリコ(振り向いて驚き)
「相変わらずだな。いくぞ」

(車、急発進する。)

(ローマから街道を南下する車内。)

エンリコ
「俺の部下がナポレオンのとっつぁんを発見したが、直後に何者かに射殺された。じいさん、やばいぞ」

ガンビーノ
「ああ。その連絡を受けて俺のルートでナポリ周辺を探させたが、連中はいま市の郊外さ。

エンリコ
「さすがだな。それで?」

ガンビーノ
「おそらく夜になるのを待って“隠し財産”のありかに向かうんだろう。」

エンリコ
「そうか、よし。ところでおまえは“ナポリの隠し財産”について何を知ってる?」

ガンビーノ
「実は人の噂以上のことは何も知らん。ナポレオンじいさんは俺にも教えてくれないのさ。」

エンリコ
「もっとも知っていたら検事の俺なんかを同行させるわけもない…。」

ガンビーノ
「まあな。ところでナポリには何時につく?」

エンリコ
「とばしているが、夜になるかもしれん。」

ガンビーノ
「だから何時だよ」

エンリコ
「ここはイタリアだ。何時と断言はできんさ」

ガンビーノ(ふと窓の外を見て)
「…んっ?」

(ものすごいスピードで観光ツアー用のマイクロバスが追越しをかけてくる。乗っているのはゴツイ顔の初老の男達ばかり。しかも、エンリコたちの前に出たところで急ブレーキをかける。)

エンリコ
「うわっ、あのマイクロバス、追い抜いてから急ブレーキをかけやがった」
(かろうじて衝突をかわす)

ガンビーノ
「リコ、気をつけろ、面構えからしてただの観光客じゃなさそうだぜ!」

(マイクロバスの窓が開き、並走しながら一斉にベレッタ・オートマチックを撃ちかけてくる)

エンリコ(車の速度を上げ、蛇行して射弾を避けながら)
「ティコ、ぼやぼやするな、撃ち返せ!」

ガンビーノ(飛来する弾雨を姿勢を低くして避けながら)
「いいのか、検事がそんなこといって」

エンリコ
「正当防衛だ。検事が命令する!」

ガンビーノ
「よーし」
(車の壁からサブマシンガンを取りだし、後ろに向けて連射。マイクロバス、大爆発を起こして四散)

エンリコ(マイクロバスの惨状をミラーで確認しながら十字を切り)
「あの爆発は自爆装置か何かに命中したようだぞ。マリア様、お許しを!」

ガンビーノ(空のマガジンを抜き取りながら)
「ナポリを見てから死にゃよかったのにな。…アーメン」

(夜のナポリ市郊外。大型車が物陰に停まっている。車の外にはマルティナが一人見張りをするように立っていて、退屈そうにあくびをしている。)

(車内。後席でアメリカ人の男Aがベレッタ小型拳銃を左隣りのジョリオにつきつけている。ジョリオは事の急変に驚倒し、震え上がっている。右隣りのナ翁は憮然として座っている。)

男B(運転席から後ろをふりむき)
「すっかり暗くなったな。もういいだろう」

ナ翁
「…やはりおまえらはあの時のアメリカ陸軍の面汚し将校たちじゃったか」

男A
「そこまで記憶が確かなら、“ナポリの隠し財産”のありかも今すぐ思い出してもらうぜ」
(ベレッタをナポレオン老人に向け、ハンマーを起こす)

ジョリオ(泣きそうな顔で十字架のペンダントを握り締めながら)
『マルティナ…ひどいよ…。夢も失い君にも捨てられたら…俺はもう死んだ方がマシさ…』

ナ翁(そんなジョリオの様子を横目で一瞥して、男Aに)
「いいじゃろう。隠し財産は車ではいけないところにあってな。ここから歩いた方が早いと思うが…」

男B(車のドアを開けてマルティナに)
「マルティナ、じいさんが案内してくれるとよ!車椅子をトランクから出してくれ」

マルティナ
「この近くだって?やったね!なんたってトラック一杯の財宝だよ」

ジョリオ(深く座ったまま目を閉じて)
「…マルティナ…」

男A(ジョリオを車外に引っぱりながら)
「おまえも降りるんだ。じいさんの車椅子を押してもらうぞ」

(車椅子を先頭に立てて、一同、移動開始。狭い路地にはいっていく。)

(ナ翁、急に車椅子のブレーキをかける。押していたジョリオ、つんのめる。)

ジョリオ
「おおっと!」
(ナ翁の顔のすぐ横に耳がくっつく)

ナ翁(小声で)
「せがれ、次の角の先は長い急な下り坂じゃ。生き延びたくば、車椅子をつきとばし、おまえも飛び乗るんじゃぞ」

ジョリオ
「ええっ…!」

マルティナ(後ろを腕組みして歩きながら)
「どじな小僧だよ。もっとキビキビ行けないのかい、まったく」

ジョリオ
「…じゃ、じゃあ、…ちょっと急ごうかな」

(早足でカーブを曲がる。)

ナ翁
「いまじゃ、それっ、思いきり押せ!」

(ジョリオ、ボブスレーのスタートのように車椅子を押して自分も飛び乗り、ナ翁の肩にしがみつく)

三悪人
「おい待てっ、逃げる気か!」
(あわてて追いかける)

ナ翁、ジョリオ(正面アップ)
「わああーーっ」

ジョリオ
「どこが長い坂道だよーっ」

(角の先は急な下り坂だが、すぐに断崖になっていて、下は小さな遊園地である。二人、縁石を乗り越えて、崖下の遊園地の敷地に落ちていく。)

ナ翁(落ちながら)
「ナポリ人め、いつの間に遊園地なんぞこしらえおったかーっ!」

(二人、ハリボテのトンネルをつきやぶって、たまたま下を通過中の子供の電車の座席の上にうまくおっこちる。)

(三人組、崖縁で下をみているが、どうしたらよいか分からない。たまたまそのすぐ近くの路地で、隙だらけの日本人観光客の後ろから近付く若いイタリア人二人乗りのスクーター。日本人のすぐ横を通過しざま、うしろ座席の男がバッグをひったくる。スクーター、加速し、角を曲がる。と、いきなり物陰から男Bが材木でライダーを殴り落す。スクーター転倒。後席のイタリア男も男Aにノックアウトされる。男B、スクーターを起こして跨る。)

男A(スクーターのうしろに跨り、小型受信機をマルティナに放って)
「マルティナ、あとからこの無線を頼りに追いかけてきな」

マルティナ(小型受信機を受け止めながら)
「あいよ!」

(おどろく日本人観光客を尻目に、スクーターで迂回路から遊園地に降りていくAとB)

Part 5

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