カスピの砲煙
没シナリオ大全集 part 4.9
Part 7:カザフ公安局員
○バクー港・薄明
損傷してたどりついた数隻のフリゲートが無惨な姿で係留されている。
奥にマクシモフの巡洋艦の姿。
○巡洋艦艦橋
壁の時計は朝五時前を指している。
マクシモフ「(電話中)…はっ、大統領閣下、まだ見つかっておりません。…えっ、原爆装置…?」
参謀「…!」
マクシモフ「…それでカザフから公安局員が。…ハイッ、了解致しました。…お任せを(電話を切る)」
参謀「マクシモフ司令、どんな情報が?」
マクシモフ「馬鹿は怖いよのう…。サホノのやつ、盗んだ核物質で数十Kt級の原爆装置をつくり、あのフリゲートの艦底に抱えていたというのじゃ!」
参謀「何と…、それで、カザフの公安局員というのは?」
マクシモフ「ウランの盗難を表沙汰にせぬよう、我々に頼みにくるのだろうて。しかしサホノの死体を確認するまでは、相手などしておれん!」
伝令「伝令!港湾管理局からです。CSC[カスピ海運会社]の曳船からSOSがあり、イラン向けに曳航中の浮ドックが浸水し始めたので緊急入港したい、と」
マクシモフ「そんなことをいちいち取り継ぐな!商船埠頭に向かわせれば良いではないか!」
伝令「はいっ!(去る)」
マクシモフ「まったく、ヘリコプター隊は空中で朝寝でもしておるのか!」
声「この際、民間船舶の入港も禁止すべきでは、海軍司令…」
マクシモフ「何っ?」
振り向くと、入れ替わりに、下士官に連れられた背広姿で大きなバッグを提げたヴィンクラーがぬーと入ってくる。
参謀「だ、誰か、貴様は!?」
ヴィ「大統領官房を通じて連絡協議を申し入れた…カザフスタン公安局渉外部員アガザノフだ(と、身分証明書のようなものを示す)」
参謀「それじゃ、サホノが爆弾を民間船に乗せてくるとでも?」
ヴィ「サホノは意志鞏固[←ルビ=きょうこ]な指揮官…そして、同じ手を反復するほど愚かでもない。とすれば、あんたならどうする」
マクシモフ「むむ…だが避難入港を拒否すれば、外国の保険会社や荷主のイランに訴えられる…」
参謀「沈没して怪我人でも出たら弁償だけじゃ済みません。いかが致しましょう?」
ヴィ「商船埠頭沖で臨検を行なうのだ。臨検船くらいは動かせるだろう」
マクシモフ「(ヴィンクラーを指弾し)よかろう、これはカザフスタンの反逆事件だ。君が臨検の先頭に立てば良いわ!」