カスピの砲煙
没シナリオ大全集 part 4.9
Part 8:奇襲
○商船埠頭沖
防波堤の出入口を塞ぐように、無武装の臨検船が漂っている。
○商船埠頭
埠頭上に無線アンテナがゴテゴテと出た、8輪装甲指揮車が止まっている。
その後部天蓋ハッチからマクシモフが半身を乗りだし、沖合いの臨検船を双眼鏡で見ている。
参謀も運転席上のハッチを開けて顔を出す。
参謀「50年代の地上核実験によれば、十Kt程度の核爆発なら装甲車でなんとか即死を免れます」
マクシモフ「…気休めだな。…さて例の曳船、白と出るか黒と出るか…」
○臨検船ブリッジ内
マクシモフ、参謀、操船している士官など数人、そして大きなバッグ(実はSMG入)を提げたヴィンクラーがいる。
ヴィンクラーは、作業服・作業帽に着替えている。
士官a「レーダーに大型船影、二!…曳船と浮ドックと思われます!」
士官b「(無線送話器を取り)曳船ノア1号か?停船し臨検を待て、こちらバクー港税関」
スピーカー「(ノイズ混じりで)…こちらノア1号、大物曳航中のため急な停船は無理。浸水も続いている。至急CSC倉庫埠頭まで水先案内されたし」
士官c「(顔を見合わせ)どうします…?」
士官b「…では最微速にて直進せよ。臨検船が接舷し、係官が移乗する」
ヴィンクラーの見ている双眼鏡に曳船の姿が見えてくる。
ヴィ「俺が行こう」
○ロング
曳船に臨検船がゆっくり近寄る。
臨検船の前甲板にはバッグを持ったヴィンクラー。
次第に曳船が迫る。
○臨検船ブリッジ
士官b「(無線送話器に)マクシモフ司令、曳船の甲板には誰も出てきません。しかもブリッジ内の船員は…軍服を着てます!」
○商船埠頭・装甲車
マクシモフ「(無線送話器に)ならばもう間違いない、臨検を中止し銃撃によって…」
スピーカー「うわーっ…(ノイズにかき消える)」
マクシモフ「おい、どうした?答えろ!?」
○ロング
曳船が回頭し、煙突からもうもうたる煙を吹き上げながら、臨検船の横腹に突っ込む。
激しい体当たりで臨検船は大きく傾く。
ヴィンクラー、その瞬間に飛び移ろうと試みる。
しかし、曳船の舷側の手摺にかろうじて片手でぶら下がったのみ。
○曳船ブリッジ
サホノ「曳船は浮かぶエンジンだ。速度は遅くとも、臨検船などに止められるものではない」
○曳船甲板
バラバラと銃を持った水兵が走り出て、臨検船を銃撃しはじめる。
臨検船はほうほうのていで回頭して逃げ出す。
水兵の一人が手摺にぶら下がっているヴィンクラーに向けて発砲。
ヴィンクラー、手を放して海中に落下し、航跡中にかき消える。
○曳船ブリッジ
サホノ「浮ドックの吃水復元!」
士官a「(電話器に向かい命令を復唱して)浮ドック浮力タンクの排水始め!」
○浮ドック
ドックの“壁”の中程、下士官一名が現われ、パネルを操作する。
モーター音がし、水煙を上げて浮力タンクの排水が始まる。
吃水が上がるとともに、それまで水に覆われていた船台部分が浮き上がる。
顕れた船台、そこには、ワイヤーで動かぬように固定された原爆装置が。
○臨検船ブリッジ
士官b「(船尾方向を見ながら無線送話器に)司令、大変です、浮ドックに、げ、原爆装置らしきものが隠してありました!…カザフの公安局員は落水し行方不明!」