カスピの砲煙

没シナリオ大全集 part 4.9


Part 9:カウントダウン


○商船埠頭・装甲車

参謀「サホノは浮ドックのクレーンを使って、原爆装置をフリゲートから移していたんだ!」

マクシモフ「どんどん近付いてくる、何とかしろ、参謀!」

参謀「そ、そんな…!」

○曳船ブリッジ

スピーカー「サホノ艦長、聞こえるか?私の声を覚えているか、同期だった生徒隊長だ!」
[※参謀=冒頭の生徒隊長。]

サホノ「…!」

スピーカー「し、司令は重傷を負って入院され、大統領に対アルメニア政策の穏健化を説きつつ、未明に息を引き取ったぞ!」

サホノ「…マクシモフが…?」

副官「気をつけて、嘘かも知れない!」

スピーカー「私も前非を悔い、君に謝る。しかしサホノ、君のしようとしていることは匹夫の勇、用兵の邪道だぞ!私怨のため部下を道連れにしても良いのか!」

サホノ「うっ…」

副官「耳を貸してはいけません!」

スピーカー「今からでも遅くない。君一人が責任を取れば、部下全員を助ける!保証する!投降の意志を示すのだ!」

副官「ワナに決まっています、艦長!」

 サホノ、バクー港で原爆が爆発したときの惨状を想像する。

サホノ「(起爆用リモコンスイッチを手に)…ハチャトゥリアン、起爆はこのボックスで私一人でやれる。君達はカッターで離船してくれぬか…」

副官「何をおっしゃいます!…通信室で話合いましょう!(と、背中を押していざなう)」

 いぶかしがる他の士官らをブリッジに残し、サホノと副官、ブリッヂに連接した個室である通信室のドアを開け、中に入ってドアを閉める。

○通信室内

副官「部下を下船させている間に敵に乗ぜられるのは目に見えています。もう港内だ、今すぐ起爆しましょう!」

サホノ「(海軍学校でリンチに加わらなかった生徒たちの姿を想起して)バクー市民の中にも善意の人々がいるだろう…」

副官「他人の善意をあてにしていたために我々は今の苦しみを嘗めさせられているのです!」

サホノ「…私は軍人として、後世、非難を受けるのでは?」

副官「ここで決心変更したら全アルメニア人が末代まであなたを非難しますよ!」

 サホノ、副官の真摯な眼差しをじっとみつめる。

副官「部下たちの思いを無にしないで下さい、艦長…!(涙を見せる)」

サホノ「…分かった、副官(と、リモコンボックスを胸の前に持つ)」

副官「敵の特殊部隊も動いている気配…、今すぐ起爆スイッチを…!」

サホノ「これで…(溜息をつき肩の力を抜いて)、…良いのだな…」

 サホノ、胸の前にしっかり持った起爆スイッチを捻る。
 すると、ボックスの側面から轟音とともに弾丸が飛びだし、サホノの胸を貫通する。
 サホノ、驚愕の右目を副官に向けながら通信室の床に倒れる。
 副官、血糊が飛び散った通信機パネルに歩み寄り、引出しから兼ねて隠してあった拳銃を取り出して机上に置く。
 そして、おもむろに電話器を取り上げる。

副官「…大至急、マクシモフ司令の参謀を。…従兄のハチャトゥリアン大尉といえば分かる…」

Part 10

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