AK−93

●”■×”(数字) 連載25周年記念脚本大賞 応募作品


閣僚A
「大統領、断固共和国軍隊の投入あるのみです!強権武断による秩序の維持なくして、わがロシア経済の改革の見通しは永久にたちませんっ!」

ビルゼンスキー
「ま、まって下さい、一体どういう状況なのです?」

メリツィン
「そうだ、諸君、ここはおちついて事態を分析してみるのだ」

女性閣僚C
「万一この少数民族が独立するようなことになれば、西シベリアの有望な油田の一部、一個の戦略空軍基地、および東ウラル軍需工業コムプレクスの一角がわがロシア共和国から分離されることになる可能性があります。しかし長期的に見て、この独立運動を根本から払拭し去る可能性は乏しいかと・・・。」

閣僚B
「張本人は判っているのだ。かげでデモ隊にデッドストックの軍用武器を売り渡している男、そしてわがロシア共和国に忠実なKGB職員を2人も抹殺した男。」

閣僚A(憎しみを露にして)
「あいつ、コサックじゃないだろうな?」

閣僚B(Aに共鳴するように)
「ユダヤの親戚かも・・・」

ビルゼンスキー
「そんな不毛な詮索はどうでもいい!それより、騒動の黒幕が特定できているのに、皆さん方にはまるで打つ手がないとおっしゃるのですか?」

閣僚A、B、C沈黙。

メリツィン
「ほう、ビルゼンスキー君、決断の素早さと的確さで出世の道を切り開いてきた君のことだ。これについても何か君らしい解決案が聞けそうだね」

ビルゼンスキー(同僚閣僚たちの顔を見渡しながら)
『くっ・・・、この事態、放置すればオレがスケープゴートにされちまう。どいつもこいつも、オレがこの件でつまづけばいいと思ってるんだ!』

ビルゼンスキー(平然とした態度で)
「・・・いかにも閣下・・・それならば、ひとつ御座います」

(全員、ビルゼンスキーに注目する。)

ビルゼンスキー
「ただし、外貨もしくは金地金で50万ドル分ほどかかるのですが・・・」

(テレビに映ったデモ隊が軍用武器を役所の建物などに向けて発砲している。)

Part 6:ハイ・ヌーン



(研究所とも離れた弾薬庫地区。四角い土手囲いと鉄条網とバラックが規則正しく連続している。その間に隠れるような管理棟風の独立家屋の一室。黄は現金の入ったブリーフケースを机上に置いている。アルバトフは黄に大量の図面を見せている。いよいよ契約を交わす時なのだ。)

アルバトフ
「弾芯の原寸図の次は、いよいよ"AK-93"の製法を詳細に記した図面です。とくと御覧の上、お収めいただきたい。」

黄(図面の束をめくりながら)
「ふむ、なるほど。・・・では量産工学的なフィージビリティを子細に検討したいので、しばらくお時間をいただきます」

アルバトフ
「どうぞどうぞ。この弾薬庫地区なら、周辺は立入り禁止。去年から日曜日は敷地内にも歩哨がいなくなります。町のデモ隊騒ぎや研究所の雑音とは無縁なこの場所で、契約金をお支払いいただくまえに、こころおきなくご検討いただけましょう」
(と席をはずして室外に出る。ドアの外にアンドレイ。)

アンドレイ
「なぜ研究所内で契約を交わさないんです、将軍?わざわざこんな弾薬庫地区に場所を移さなくても・・・」

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