AK−93

●”■×”(数字) 連載25周年記念脚本大賞 応募作品


アルバトフ(すでに2/3ほど締め終わって)
「この扉は重機関銃でも貫徹できん!ムッ・・・?」
(と、足元を見る。靴が水溜りのようなものに浸っている。その液の元をたどると、入口脇に積み上げられた古ぼけた木箱---7.62mm、1942などという数字が書いている---からしみ出ているのがわかる。)

アルバトフ(驚いて)
『硝酸エステルの液状化!?予算をケチってこんな古い弾薬を再利用しようとするから・・・!』
[※註:小銃実包に使用される発射薬として一般的な硝酸エステル系火薬は、数十年も放置しておくと液状化して漏れ出すことがある。この液は衝撃に敏感に反応して爆発するので危険である。]

(ほとんど閉まりかけた扉の隙間から、ゴルゴがM-16を発射したのが見える。その弾丸は、扉のわずかな隙間から飛び込み、床の水溜りに超弾するアルバトフの恐怖の表情。)


Part 7:カタストロイカ



(夕暮れのモスクワ。メリツィンが大統領執務室でグラスをあおりつつテレビの報道番組を見ている。)

TVアナウンサー
「・・・トランス・ウラル地方を中心として拡がっていた、武器を用いたデモ隊の騒動は鎮静化にむかっています。・・・ただいま届いたニュースです。チェリヤビンスク市のはずれにある軍研究所の火薬庫が大規模な爆発事故を起こしました。現地は強風のため広い弾薬庫地帯で誘爆が続いている模様です。詳しいことはまだわかっていませんが、この弾薬庫地区は空軍と共用であり、被害の拡大が懸念されています。」

メリツィン(ニュースにはうわの空で。)
『・・・ただでさえ混乱している我が新連邦に更にこれ以上の秩序の破壊を促進しかねない”魔弾”などが飛び交う事態を座視できただろうか・・・。』

(メリツィンの回想シーン。ソリア共和国政府庁舎の一室で、ビルゼンスキーと二人でゴルゴに依頼内容を説明している。)

ゴルゴ
「その中国人は要求リストの外か?」

ビルゼンスキー
「いや、図面や資料を国外に持ち出そうとしない限り殺害の必要はない。少将から技術的な話を聞いたところで、それはタイワンスキーごときにつくれるシロモノではないのだ」

ゴルゴ
「・・・わかった、それも(←傍点)ひきうけよう」

メリツィン
「念を押すが、少将の殺害だけでなく、できれば魔弾の製造施設ものこさず抹消してほしい」

ゴルゴ
「”できれば”、というあいまいな依頼は俺はうけつけない。のこさずやってほしいのかほしくないのか?」

メリツィン
「おおっ、ではやってくれるか、ゴルゴ13!」

ゴルゴ
「方法は俺に任せるんだな」

メリツィン
「もちろんだ。すっかりきれいに消してくれるなら、方法は一切問わない(←傍点)。」

(現実に戻るメリツィン)
『やはり死んでmろあうしかなかったのだ。私に牙を剥いた軍人勢力は芽のうちに・・・。』

(机上の直通電話の一つが鳴る。受話器を取り上げるメリツィン)

メリツィン
「大統領だ」

電話の声
「連邦空軍参謀長です。今日の事故で、空対地ミサイルのストックもほとんどやられました。復旧予算がつかなければ基地は閉鎖するかもしれません。そうなれば、対米戦略バランスが決定的にわが新国家に不利になるでありましょう・・・。」

15枚目へ

戻る