AK−93

●”■×”(数字) 連載25周年記念脚本大賞 応募作品


ビルゼンスキー
「うっ…」

マクレーガー
「極端の話、たった一発の銃弾、たった一人のテロリストが、この新連邦のシステムを根本から大混乱させてしまうかもしれないのではないですか?…たとえば”G”カードの切られ方次第で…」

ビルゼンスキー
「”G”カード?」

マクレーガー
(やれやれという顔で窓の外を見つつ)
「…やはり独立国家共同体の新官僚諸君は、あのオールマイティカードを使いこなしてはおらなんだか…。危ういかな…危ういかな…。」
(と葉巻に火をつける。)

ビルゼンスキー
(居住まいを正して)
「ミスター・マクレーガー、それじゃその”G”って一体何ですか?是非、私に教えて下さい!」

マクレーガー
「学ぶことを恥じないのは良い習慣だよ、ヤングマン。かつてアメリカが世界一になり、いま東洋の国が成功しつつあるのもその習慣のお陰だ。…しかし、単に学ぶだけで、実践にともなうリスクを恐れ、断行しなければ、わしのような成功はできない。」

ビルゼンスキー
「わたしは、この新しい体制の維持・発展の為ならば何でも断行する決意です、ミスター・マクレーガー」

(頼もしい奴、という表情で見るマクレーガー。一転、戸外から見たその部屋の窓。一転、もとの部屋の中。机上の灰皿には葉巻の灰が積っており、すでにマクレーガーは膝詰で説明を始めている。)

マクレーガー
「もう10年以上も前、わしの(コロラド州)デンバーの古い友人でカスピ海に出掛けて油田を探していた奴が、GRU(ゲー・エル・ウ)のデータベースを磁気テープで数十本分、1万ドルのキャッシュでそっくり買い取った。もちろん戦略的地下資源の情報が目当てだったが…」

ビルゼンスキー
「…」

マクレーガー
「そいつは、ジオロジック(地質学)の項目から漫然とながめておった。すると、唐突に”G−13”という記号数字だけのファイルネームが現れた。」

ビルゼンスキー
「G−13…???」

マクレーガー
「いぶかしく思いながらも通読してみると、それは、10年近くも詳細に収集されたひとりのプロの暗殺者だったのだ。その内容にびっくりしたそいつは、テープのコピーをわしに送ってきた。その年のクリスマスプレゼントとしてな…。」

ビルゼンスキー
「プロの暗殺者…。ひょっとしてそれが”G”??」

マクレーガー
「君は、こんな男が10年以上も生きながら得ていることは信じないかもしれん。わしも初めは信じられなかった。…本名不明、通称●”■×”(数字)と呼ばれる国際的テロリスト。性別、男。人種は東洋系らしい。国籍、言語、宗教その他不明。一件数十万ドル〜百万ドルで暗殺を請負い、いったん請負った仕事は必ず着手し遂行するとされ、GRU自ら調査確認をとった約200件の過去の仕事の成功率はトータルで99%、うち過半数は小口径銃による800m以遠からの狙撃…。」

ビルゼンスキー
(ジョークを聞いたときのような笑い顔で)
「ちょっと待ってください、なんですって?決して金を持ち逃げしたりしないカタギな”職業的テロリスト”が10年以上前からこの世に存在する?ハハハ…、しかも、99%暗殺を成功させて、いまだに逮捕訴追はおろか国際手配もされていないですと?!」

マクレーガー
「…」
(ビルゼンスキーの目をじっと見据えたまま葉巻をくゆらす)

ビルゼンスキー
「…失礼ですがマクレーガーさん、そんなお話はわたしには子供じみたジョークです。第一、それならそいつはとっくに小金を貯め込んでいるはずだ。どうして商売替えしてさっさと隠棲しないんですか?」

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